埋没していなかった老舗グランメゾン、レカン

古くは「シェ・イノ」の井上旭氏から最近ではこの友里とバトルを演じた「レディタン ザ・トトキ」の十時亨氏など有名シェフを輩出していた銀座のフレンチ「レカン」。おっともう一人、「ヴァンサン」の城悦男氏もこのグランメゾンの出身でありました。
井上氏は現場を離れ、あとの二人もパッした評判を聞かなくなりまして、友里もこの本家「レカン」にはかなりのご無沙汰だったのです。
よく探せばお買い得なワインが載っているワインリストは魅力でしたが、肝心の料理の印象が薄かったからです。食べログで高得点なのを知り超久々に訪問したのは今秋でありました。

大改造した内装ですが、狭いレセプションに立つ女性がベテラン過ぎることに驚きながら案内されて席に着きましたがが、週はじめとはいえ客は我々入れてわずか3組。それは寂しいディナーでありました。
メニューにあったアイルランド産の岩牡蠣をまずはシャンパンのお供に頼もうとしたら「用意していない」とのメートルの答えに唖然。わずか3組で品切れなのか。
メインでは仔羊を頼もうとしたのですが2種ある仔羊料理、これまた「昼に出過ぎて1種は品切れ、もう1つはフルポーションで1名分しかない」との回答にオーダーを辞めたのです。残り物が美味しいはずがないからですが、火曜日のランチで仔羊を頼む客が多いものなのか。ランチコースには仔羊は設定されていないから不思議でありました。

仕方なく頼んだ小鳩のヴェッシー包み(膀胱包み)、好きな食材ではなかったのですが、マールを使った調理でこれが意外に美味しかったのであります。勿論前菜で頼んだトマトのベニエ(ハーフ4500円)も中に鮑が入っており美味。
89年ボルドー(モンローズ2万9000円)は高評価ワインなのに値付けが安くお買い得で大満足。料理の選択肢はなかったけど、満足して店を後にしたのであります。

確認の意味で再訪したのが先月下旬。同じく火曜日でありましたがホールはほぼ満席でありました。この日は食材の欠品もなく、先日の訪問ほどではなかったですが、ベカスを除いて牡蠣のソテー(今回はあった)や蝦夷鹿などにまずまず満足したのであります。
羽鳥アナ似のソムリエの自意識過剰がちょっと気になりますが、記念日などでの訪問には充分耐えうるグランメゾンだと考えます。

本場よりディープなピエモンテ料理、トルナヴェント

今週月曜に掲載した「もりかわ」と同じく、友里が何回行っても満足して店を後にするピエモンテ料理店であります。
前菜2500円前後、パスタは2500円以上、メインに至っては 4000円前後と、他のイタリアン、特にピエモンテ料理を自称する店より総額3000円は高いですが、満足度はその価格差を遙かに上回るだけに、少々お高くとも訪問する価値はあると考えます。
この店のもう1つのメリットはそれほど予約が困難ではないと言うこと。いつも最終的には満席なのですが、数週間前から予約しなければならないという変な過熱感はありません。

今年も数度訪問しておりますが、直近は11月のアルバ旅行を前にピエモンテモードを高めようと訪ねた10月でありました。主にピエモンテ料理を注文。
まずは前菜としてバーニャカウダ(2800円)とポルチーニのトリフォラ(ニンニクオリーブオイル炒め3000円)。ポルチーニは大きくはなかったけど日本においてはかなりの質の高さ。不味いはずがありません。白トリュフのココット(半熟玉子3000円)は本場並とは言えませんがこれまた高質な白トリュフでありました。
パスタも白トリュフを掛けちゃえと合わせたのがタヤリン(玉子を練り込んだタリアテッレ6500円)タヤリンそのものも白トリュフにつけていたそうでこれまた満足でありました。

そしてメインはピエモンテの代表的な料理である牛肉のバローロ煮込み(4200円)。今回の部位は頬肉でありましたが、これもなかなかのものでありました。
前菜、パスタ、メインに白トリュフを追加しての料理価格は軽く1万円を突破する1万3000円ほど。ちょっと高めのワインを頼むと一人3万円近くと、下手なグランメゾンと変わらない支払いでありますが、東京、いや日本で唯一のまともなピエモンテ料理店ではないか。
いやここ3年連続でアルバを訪問している友里の経験から、ある意味現地の店よりディープ感がある料理であると考えます。

ピエモンテ料理好きの方だけではなく、「なんちゃってイタリアン」しか存在しない関西の方にもぜひ訪問していただきたい店。これが限りなく本物に近いイタリアンだと気づいていただきたいのであります。

近所に欲しい気軽な洋食屋、麻布食堂

TVのグルメ番組に時たま「街の巨匠」の称号で出演していた料理人の店。西麻布交差点近く、外苑西通りから近かった移転前の店は、昼夜を問わず大盛況でありました。
昼は近辺のサラリーマンやOLでカウンターは一杯。ほとんどの客がこの店の代表作であるオムライスを頼んでいたのです。ランチは夜より100円ほど安い945円で、ほかにもメンチカツ、カニコロッケ、ハンバーグとメニューは少ないながら何回転もする人気振りだったのです。 

夜も前を通る度に満席を確認していたのですが、入っていたアパートの建て替えで一時閉店を余儀なくされたのが大きな転機だったのかもしれません。
立て直すアパートに入店するとの約束があったのかシェフはしばらく悠々自適の毎日を送っていたようですが、完成時期が半年遅れたことに加え家賃交渉が難航。痺れを切らして別の場所にオープンしたのが、私の記憶では08年のことでした。
場所は前店から牛坂を上がって3ブロックほど先のビル地下。ワインバーなどが何回か閉店に追いやられた場所で、決して地の利の好いところではないのです。

果たして昼夜とも以前ほどの活況さはなくなってしまいましたが、価格は据え置きでメニューも豊富になり、かえって入店しやすくなって使い勝手は増したのであります。
移転してから初めて訪問した夜。前菜群は945円均一で、ラタトゥユ、生ハム、タコのカルパッチョ、サーモンマリネなどボリュームもあってお買い得。野菜好きの友里が必ず頼むグリーンサラダ(630円)も高額洋食屋のものより遙かにコストパフォーマンス良い。
そしてオムライス、カニコロッケ、ハンバーグなどの定番洋食料理も1260円均一で「EDOYA」と同じく財布に優しい営業姿勢で有り難かった。
定番洋食に飽きたリピータには、牛リブロース(3000円)、牛タンシチュー(2520円)、鶏もも肉と茸の香草焼(2100円)などちょっとビストロチックな料理も用意されております。 牛リブロースを試しましたが、頼んだご飯がすすんで追加でハンバーグまで頼んでしまいました。
ワインもボトルが2940円から用意されているなど良心的。赤なら冷やすことを条件に、料理と合わせて楽しめること間違いなし。厳しい立地でありますが、近所にぜひ欲しい洋食店であります。