客単価が世界一のステーキハウスか、かわむら

紹介制でも会員制でもないのに予約がまったく入らない牛ヒレ専門店。
前月の1日から電話で予約を受け付けるシステムですが、入店客が直接次の予約を入れてしまうので(リピーターになれば次回の予約ができる)、翌月の空席なんて残っていないのです。
というか数ヶ月先まで予約で満席。悠長に電話の予約に頼っていたら、一見客は永遠に訪問できません。まずはリピーターに連れていってもらうしか手段はないのです。かくしてわずか8つのカウンター席を狙って、リピート客が後を絶たず、世界で一番予約困難なステーキ屋となってしまいました。

初めての訪問では肉尽くしのコースをオススメします。基本コースだと3万円台後半で終わるかもしれませんが、いくつかの追加(魚系の前菜など)を頼むと簡単に5万円を突破(ワインは持ち込み)となりますのでそれ相応の覚悟をもって訪問して下さい。

この時期出しているかわかりませんが、牛刺しは上品。タルタル(追加)はケイパー、エシャロット、トマトを使った角切りタイプで高質なヒレを使用しているからか女性でも簡単に胃に収まります。
コンソメは逆に濃厚で誰でも納得する味。そして15種の野菜を使ったサラダの次に150グラム前後のヒレステーキが登場します。

このステーキの特徴は塩胡椒など下味をつけないこと。よってこのヒレステーキもすっきり上品で胃にもたれないのです。逆に〆のビスク味のカレー(追加)はインパクトある味わいであります。
胃にもたれない上品な味わいになる調理の各種牛ヒレ料理でありまして、ペロッと食べ切れて胃の負担がないので女性には特に評判が良いはず。豪華さはなくハレの日には向いておりませんが、ここぞの時(女性絡み)には使える店ですので、伝を探してでも一度は訪問してみて下さい。お土産のカツサンドやハンバーグサンド(ヒレ肉使用)は8000円前後と驚くべき価格でありますので、見栄を張りたい場合や話のタネの時だけ限定で注文して下さい。

客層は多彩、小売りで10万円はするレアシャンパンや今や超希少なベルーガ(キャビアの最高級品)を瓶ごと空ける客も見かけます。最低でも一人5万円前後、頼んだワインや食材によっては何十万円(一人分ですよ)にもなる支払額。世界一の客単価を誇るステーキ屋であります。

接待からお忍びまで幅広い客層、よしはし

ミシュランガイドに掲載されなければ存在に気づかなかったすき焼き店。行き止まりの路地に面した如何にも隠れ家風の一軒家風でありますから、ミシュラン掲載が妥当か疑問でありますが、同伴やお忍びカップルから、家族連れや接待(個室も有り)まで幅広い客層に対応できる店。勿論普通のカップルも大丈夫であります。

地番は元赤坂、12席あるカウンターでも靴を脱がなければなりません。座敷も用意され、担当の仲居さんが張り付いて給仕するシステムは、接待客に最善かもしれません。
ところが値付けはチェーン展開するすき焼き屋やしゃぶしゃぶ屋と大差がないのです。単品ではすき焼き(しゃぶしゃぶ)が1万円、コースでも1万2000円、1万4000円、1万7000円と「今半」や「瀬里奈」のグループ店と変わりがない。勿論肉質は勝るとも劣るものではありません。この日頼んだコースは接待だったので最高値コースでありました。

前菜の赤貝と若布の二倍酢はどこでも遭遇するレベル。アン肝やサワラの白味噌焼きなどの酒肴盛り合わせの後、カツオが強い出汁のお椀が登場します。椀タネの鯛もかなり塩が強くこの時点でこの店は江戸風すき焼き屋だとわかるでしょう。

造りは甘エビ、サヨリ、鯛。すき焼き屋でこの手の料理に期待するのは酷というもので、これまた可もなく不可もなし。追加の一品で頼んだ20食限定の細切り野菜は、本当に細切りしただけのもので、どこが限定品なのか理解できなかった。そしていよいよメインのすき焼きの登場です。

仲居さんが造ってくれるすき焼きは予想通り割り下を使った関東式であります。仲居さんが玉子の卵白だけ時間をかけて泡立ててくれるのがこの店のウリでありますが、目的は接待客用パフォーマンスと考えます。
すき焼き自体は「今半」や「瀬里奈」との差を見いだせない中、肉を追加(3000円ほど)して赤出汁とご飯で〆ましたが、驚いたのがワインの値付けです。
ノンヴィンのシャンパーニュが1万円以下、ボルドーの2級格付けが1万数千円とそこらの廉価フレンチより安いではありませんか。

秋には松茸を使ったコースを1万8000円で提供しております。味濃い料理に丹波産など高級松茸は不要。ぜひこの時期は話のタネに松茸コースを試してみてください。

紹介制だけどツテ探してでも訪問すべし、もりかわ

5年以上前に初訪問した時は他腹だったからか、それとも同席したホリエモンのキャラが強すぎたからか、料理はまったく印象に残っていなかった。食べログの東京全レストラン中ランキングトップが気になり、二度目の訪問を決意したのは今年初夏でありました。

結論から言わせていただきますと、初回とこれほど食後感が異なったのは初めて。支払額は高いですが、東京和食ではトップに位置する店と評価しなおしたのであります。
初夏の訪問でまず驚いたのが先付けに位置する小皿料理の連発。タコ&タコ子、毛蟹(ミソ付き)、蓴菜、赤貝&トリガイ、バチコ、穴子湯葉巻きなどがかなりの数の小皿がでるのですが、どれもボリュームがありこれだけでお腹が一杯になりそうでした。勿論ほとんどが質高く美味しいと感じる皿。

お椀も京都のクラシックな店よりやや濃いめでありますが東京では図抜けた美味しい出汁で、造りの「あこう」も美味しかった。
塩焼きと開きで供された鮎はまずまずで、鮑の揚げ物(肝ソース添え)やあこうの兜煮、鰻に土鍋白飯と大阪割烹に近い料理でありましたが満足して店を後にしたのです。
食材の質高く、ボリュームもあり、味わいも満足。シャンパンを頼んでしまったのではっきりしませんが料理単価4万円弱の支払いは十分元とれると考えます。

その後数回訪問しましたが現段階で期待を裏切ることはなかった。10皿近くでる小皿料理や大きな椀タネもこの店の特徴。鱧やノドグロ、鱈白子などいずれのお椀も満足の一言であります。

秋の訪問で驚いたのが国産モクズガニ。甲殻類を好まない友里が「なんだ上海蟹の親戚か」と思いながら食べた瞬間の衝撃(大袈裟)はかなりのものでありました。勿論美味しかったのは言うまでもありません。
松茸も焼き、フライ、ご飯とかなり使用されていて支払額は4万円台半ばほど。松茸使用で大幅に値上げする店が多いだけに良心的と言えましょう。
客によって牛肉を出す場合もあり、純粋な京料理とは一線を画す「もりかわ料理」でありますが、これだけの支払いをしても一食の価値あり。他腹ならどんなことをしても訪問すべきと考えます。
一見無愛想に見える主人でありますが、話してみると味あるトーク術の持ち主です。原則紹介制でありますが、ツテを探してぜひカウンターの予約で訪問してみてください。