これを京料理と思っては人生を誤る、石楠花

TV番組では、愛車ポルシェ・カイエンを繰り出して草を摘んでいるところを披露していたミシュラン2つ星「美山荘」の4代目主人・中東久人氏。
彼が銀座三越の新館に出してきた和食店がこの「石楠花」であります。京都の地元では低評価の店の東京支店、検証精神強い友里はまず昼に飛び込んだのです。

11時オープンの15分前でも4人の先客が並んで居るではないですか。11時になると慇懃無礼な女性スタッフが、一組ずつゆっくりと席へ案内をはじめます。
なるべく長く店前の行列を保ちたいのか、3組目の私が入店できたのは11時10分を過ぎておりました。私の後の4組目は11時18分に案内されていましたから驚きです。
オープン20分を過ぎても店前は行列なのに、店内は空席が目立つ不思議。並んでいる客を犠牲にして、行列維持による「人気偽装」をしているとしか私には思えなかった。

まずは予約なしで頼める一番高い5000円コースをオーダー。先付や八寸は造り置き。特に八寸は貧相で京都の観光客相手の店よりも劣るのではないか。
店の実力がわかるお椀はなんと焼きトチ餅の白味噌仕立てでありました。

胡麻豆腐の後の鮭の朴葉焼、味噌の味が濃すぎて食べられた物ではありません。甘いトロミをつけた炊き合わせの後、白飯に縮緬山椒などがでて、栗のアイスクリームで〆となりましたが、この料理のどこに京料理の面影があるのか。
夜にしか京料理を出さないのかと思い時を置かず一番高い夜の1万5000円コースを予約したのはいうまでもありません。

夜は予想通り満席ではない。甘い柚子味噌乗せの蕪に始まり、次は前回の5000円コースにもでた白味噌椀。
造りは鮭児と言われましたが、私にはメタボな鮭にしか感じなかった。前回と大差ない八寸の後、レンコン餅と甘鯛の煮物椀も甘いだけ。
子持ち鮎の付け焼きも味濃すぎて食べきれません。味濃い朴葉焼きも前回と被り、穴子の味が濃い炊き合わせの後白飯と栗アイスで〆とするのも同じでありました。
1万5000円と5000円のコースで5皿も同じ料理が被るのですから、呆れるしかありません。

京ブランドに弱い東京を舐め切っている石楠花。この店の料理を「京料理」と思い込んだら、その後の外食人生を踏み間違えますからご注意ください。

フランスの調査員もいい加減、アラン・デュカス

日本でまったく成果(集客実績)を上げられない世界のフレンチシェフ、アラン・デュカス。空飛ぶ料理人、鍋を振らない3つ星シェフ、レシピだけの伝道者、と揶揄される彼でありますが、相変わらず海外の店は評価が高いと言う不思議。
彼の営業方針やスタンスが嫌いな友里ですが、モナコの「ルイ・キャーンズ」と双璧をなすデュカスの旗艦店「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」を試すべく訪問したのは今秋でありました。

ナイフとフォークの不思議なオブジェがある店前のレセプションで予約名を告げたのは20時。店内は日本人グループが2組ほどしかいませんでしたが、最終的には20卓弱のホールは満席となりました。

アラカルトもありますがデュカスの料理を知るにはコースが一番と頼んだのは360ユーロの「メニュー コレクション」。シェフのオススメ料理尽くしとの触れ込みです。

まずは紙に包まれたアミューズ。目の前で開かれるとそこには細長いカナッペのようなものが2つ。魚と生ハムでしたが、私にはショッパイだけしか感じません。
そして小さなフライパンに盛られた無数の小エビが出てきたのには驚きました。添えられた細長いフォークで食べるのですが、剥き身はいいけど殻付きの頭は食べにくい。数も多すぎで飽きてしまいます。

続くラングスティーヌのキャビア乗せも盛り合わせは可愛いけど味がダメ。添えられた生姜風味のコンソメも美味しくない。
野菜のエチュベは林檎の甘酸っぱさ、栗の甘さ、セロリの苦さ、玉葱の旨みが個々に主張していてまとまりに欠けます。出汁は甘酸っぱくワインも進まなかった。

オマールはコライユソースで一安心でしたが、ちょっと濃厚すぎるか。
最後の鶏はコニャックを使用したホワイトソース。仕上げに白トリュフをかけるのでそれなりに満足しましたが、肝心の鶏自体(これがすごいボリューム)の味がしなかったので食べきるのが大変でした。添えられたチキンコンソメが変に濃厚なのも感心しません。

すべての皿で野菜を多用してヘルシーさを出しておりますが、味付けが変に濃厚で胃がもたれるし、塩も不自然に強い皿がある。

これが世界の3つ星と評するなら、日本と同様、フランスのミシュラン調査員も知れているとしか私には思えませんでした。

なぜかワインが充実している天麩羅店、清壽

飲食店紹介雑誌を読んで楽亭で修業した人の独立店と知りました。でも、20年近く楽亭へ通っている友里、「弟子なんていたかな」と疑問を持ったのです。
この10年ほど、若い衆を1名置くようになりましたが、せいぜい下ごしらえが担当でして、客前で天麩羅を揚げてはいなかった。しかも数年単位で交替していましたから、修業したといえるのか。検証のため早速訪問したのは今春であります。

この店のもう一つのウリキャッチはソムリエールのいる天麩羅屋。本家の楽亭より余裕のL字型カウンターに揚げ手の主人とソムリエールが常駐しているのです。
驚いたのはワインリスト。日本酒の種類は少ないのですが、ワインのラインナップは充実していて下手なフレンチより立派です。ノンヴィンシャンパンが7875円からと良心的値付けでありました。ワインの所有では世界一の天麩羅屋と言っても良いのではないでしょうか。

天麩羅は1万2600円のお任せ1本のみ。鰹のタタキのあとスタートした天麩羅は、海老が2尾しかでませんが、途中に白ウニ(箸休め)と渡り蟹のもずくを挟んで〆の天丼(天茶も可)まで16品。
傑出さを感じない天麩羅でしたが、グラスワインを頼んでの支払いが一人当たり2万円チョイとまずまず満足したのであります。

本家の楽亭のクオリティ低下(主人のお歳によると判断)を確認し、東京で天麩羅屋を探す羽目になった友里。よこ田、深町など有名店を回ってからこの店を再訪したのは初秋でありました。

病み上がりだったので日本酒が飲めずワインを選択しようと今回はマジマジとリストを見て私はあらためて驚いたのです。NVシャンパンは8900円になっていましたがクリュッグのグランキュヴェが2万3000円とお安い。思わず頼んでしまいました。カリスマ造り手のワインも含めて値付けはやっぱり安かった。

この日も最初は鰹の土佐造り。主人は鰹好きのようです。
天麩羅以外の小鉢2つも健在。ホウレン草と松茸のお浸しと前回もでた渡り蟹ともずくです。天麩羅も前回より良い食後感で小鉢もまずまず。高いシャンパンを頼んで支払いは2名で5万円を突破しましたが、CPは悪くはありません。

鰹と渡り蟹が苦手でない方、今東京で天麩羅店を訪問するとしたら、この店をオススメします。