実売数の減少を食い止めるため神戸の店も評価対象に入れてしまったミシュランガイド。東京版と同じく、年を重ねる毎に実売数が激減する運命は変わらないと思う京都・大阪・神戸版でありますが、必ず星がつくからと事前に誘われてこの店を訪問したのが今年5月半ば。摂津本山の住宅街にある寿司屋であります。
関西では江戸前鮨ブームだとか。自称を含めて江戸前と名乗る寿司屋が増殖し続けていますが、果たして関西に江戸前の鮨屋が存在するのか。
今回目出度く関西版では最高峰の2つ星寿司屋となった「生粋」を訪問して、私は関西寿司屋のレベルの低さを確認したのです。
当時は白木ではない貧弱なカウンター6席と小上がりの店内。握りが6800円、ツマミを入れたお任せが9450円と東京の高額鮨屋の半値に近い明朗値会計。
関西ではこの価格帯でないと客が入らないとのことですが、2万円前後が相場の東京鮨とのあまりの価格差に私は驚いたのです。
食後感も価格通り。この時期疑問のヒラメは旨みがなく、カツオは薫香つけすぎ。
甘エビの登場に疑問を抱き鰻の白焼きには驚きました。鮨屋では普通穴子だろ!
握りでは、赤酢を使っているのにショッパイだけの酢飯にがっかり。昆布〆が強すぎるヒラメ、なぜか生姜風味のカスゴ、そして明礬が目立つウニと支払い額(1万3000円)なりの食後感しかありませんでした。
海鮮でもなければ江戸前でもない。タネ質も普通で東京では街場寿司レベルと判断したのです。関西の有利さは白身だと思っていたのですが、良い白身は料理屋へ持って行かれるとの主人の言葉に、関西寿司の限界を感じてしまった。
ミシュランウケを狙って豪華な白木カウンターなど何百万円も投資して大改装したと聞いて再訪したのが10月。以前と違って内装だけは銀座鮨屋も驚くほど豪華になっておりましたが、肝心の食後感は変わりませんでした。
推測するに主人は東京の江戸前鮨屋での修業経験がないのではないか。ビールグラスも魚臭いなど原点からやり直す必要があるかもしれません。
小さな街場の普通の寿司屋を名店のように囃し立てる関西寿司好きにも問題があるでしょうが、東京では1つ星も無理と思われる店に2つも大判振る舞いしてしまったミシュラン。その罪は重いと言うしかありません。