予約困難な店にしては料理が美味しい、オギノ

アロマフレスカ、カンテサンス、カ・セント(神戸)と今をときめく予約困難店。これらの店に共通している友里評価は「人気だけで料理は美味しくない」。
数ヶ月先の予約を頑張ってとって訪問しても、イタリアンもどきの創作料理、ソースを造れないワンパターン長時間ロースト、サプライズだけのスパニッシュと「予約困難な店にうまいもなし」の定説が当てはまる中、このオギノは例外中の例外店。
移転後に初めて訪問しましたが、相変わらずというか以前より更にアップグレードしておりました。

シェフが一世を風靡した「キノシタ」出身なのは有名ですが、独立前に目黒の「キャス・クルート」という廉価店で雇われシェフをやっていたことは知られておりません。

喫茶店みたいな横開きの自動ドアは興醒めですが、移転しても席数をそんなに増やしていないのではないか。ワインを飲まない女性や地元人が客層の中心なので、本来なら料理に期待できない環境。それでもクオリティを維持しているのですから驚きであります。
マダムの髪型がポニーテールからショートになっていたのにはガッカリしましたが、商売が順調だからか接客も明るくなっており食後感は大満足でありました。

4500円と6500円のコースがありますが、この店に来たら迷わずアラカルトを選びたい。
自由にポーションを指定できる「お好きなだけパテ・ド・カンパーニュ」は調子に乗って取りすぎないように。他の料理が食べられなくなります。色々と食べたい人は「一口」(300円)で充分。

今回初めて食した「ラタトゥユのムース」(2400円)と「ひな鳥の膀胱包み蒸し」(4300円)は値が張りましたが、文句なしに美味しかった。
「夏鹿のパイ包み」(3000円)もミンチの鹿肉が濃厚でグッド。いずれもボリュームあってしっかりした調理が友里好みでありました。ワインも高いものは用意しておらず頼みやすい。グラスシャンパンが1200円というのも良心的です。

これほどしっかりした調理なのに、ワインをそうは飲まない客が多いのが不思議。客層に合わせて緩い調理に転換しないことを祈るばかりであります。
ヨイショなしに本当に美味しい店なので、ぜひ2ヶ月先の予約を取って、ワインをガブガブ飲みながらオギノ料理を楽しんで下さい。

鰻とタバコの煙攻撃に耐えられない、かぶと

知る人ぞ知る天然鰻の名店と聞いて知人と訪問したのが8月半ば頃。「食べログ」でも人気ナンバー1鰻屋で期待していたのですが、人気店に美味いものなしの定説を裏付ける結果となりました。

小さなテーブル席もありますが、12席ほどのカウンターが主体。席間の狭さは半端ではなく、隣客と肩が触れるどころか体を斜めにして座らなければならないほど窮屈です。
そして何より苦痛なのが受動喫煙であります。池袋という場所柄もあるのか客の喫煙率が非常に高い。運も悪く鰻の焼き台の真ん前の席だったので、タバコと鰻の両面煙攻撃で正に燻製状態となってしまいました。
これが原因とは思いたくないが、翌週には全快に1ヶ月かかった重症の咽頭炎になってしまいましたから友里には忘れられない店となったのです。

18時前だというのに店内は満席。目の前のボードには、それでも19時、19時半と予約客の名が書かれていましたから、何回転しているのかわからないくらいの繁盛店であります。

まずは名物の鰻の焼き物を注文。蒸さない頭は骨が当たって食べにくい。鰻のヒレ、食道もついた肝、レバーと次々と変わった焼き物を食しましたが、珍しさだけが印象に残っただけ。一口蒲焼きなるものを口にして、この店のメイン、鰻の蒲焼きに疑問を持ったのです。
隣客に勧められた「肝わさ」は肝のデカさにビックリ。山葵が粉だったのはご愛敬でしょうか。

そして天然鰻の白焼きと蒲焼きの登場です。友里がこの店に興味をもった理由は天然鰻だけではありません。蒸さない直焼ということで、東京の「蒸し鰻」でない食感と旨みを期待していたのですが、結果は誠に残念。
白焼き、蒲焼きと目の前で捌いて確かに蒸さずに炭火で焼いているのですが、食感は限りなく江戸風。つまり蒸して焼いたように柔らかすぎるのです。メソに近いのか、鰻自体が太くはなく肉厚が薄いので蒸し焼きのようになってしまうのが原因でしょうか。食感だけではなく天然鰻の風味もまったく感じませんでした。

主人は「俺は鰻が嫌いだ」と公言する面白いオヤジ。珍しい濁り酒などを飲んだとはいっても支払いが2名で何と3万円台半ばに私は驚きました。
主人のパフォーマンスを考慮に入れても、この食後感と環境では友里の再訪はあり得ません。

厄払いか移転をアドヴァイスしたい、野じま

風水が悪いからとしか考えられない不人気の鮨屋。自宅兼店舗の「青木」の地下を間借りしておりますが、大家の「青木」も客がほとんど入っておらず共倒れ状態。
同じ西麻布3丁目で最近オープンしたばかりの「材木町奈可久」の主人からも同情されていたほどですから悲惨であります。
外苑西通りを挟んだ「鮨真」は昼でもほぼ満席な日が多いだけに主人も納得がいかないのではないか。銀座の「からく」出身と言うことで期待しなかったのですが、2年前の初訪問の印象は悪くなかった。昼訪問でしたが、空いている割に鯛の胡麻醤油漬けなど面白い仕事のタネもあり、それなりに満足したのです。

西麻布周辺で昼も営業している江戸前鮨屋は前述の「青木」と「真」くらいか。使い勝手が良いと時たま夜も含めてリピートしていたのです。
難点は「材木町奈可久」も指摘していた支払い額。お任せやお好みでツマミと握りをしっかり食べてしまうと昼夜関係なく2万円を突破してしいます。西麻布の鮨屋としてはちと高すぎではないか。急に鮨が食べたくなった時にいつでも入れる鮨屋という理由で友里はリピートしていたのです。

ところが今年になって急に客を連れていこうと昼前に電話して愕然。あまりの不入りだからか昼の営業を止めてしまっておりました。
仕方なく「真」へフリで入ったのですが、我々と違って予約客もあり店内はほぼ満席。ツマミや握りのレベルが勝るとも劣らないのと感じるだけに、「野じま」の値付け失敗が非常に残念に感じたのです。

昼訪問が出来なくなってしばし足が遠のいたのですが、久々に訪問したのが夏真っ盛りの夜でありました。相変わらず集客が苦しいのか我々以外はわずか常連らしき男性が一人だけ。銀座の鮨屋とは違った如何にも六本木・西麻布の客といった雰囲気。他店には夫婦や家族連れも目立つだけに(1階の青木は客がほとんどいない)、客層の悪さが更に客の足を引っ張っているのかもしれません。

「青木」よりはネタ、握りとも上、もちろん同情していた「奈可久」よりも勝っております。流行っている「真」並みの支払い額なら胸を張ってオススメ出来るだけに、厄払いと値付けを再考して昼営業を再開するか、客層の改善や潔い移転を友里はここにアドヴァイスさせていただきます。