接待からお忍びまで幅広い客層、よしはし

ミシュランガイドに掲載されなければ存在に気づかなかったすき焼き店。行き止まりの路地に面した如何にも隠れ家風の一軒家風でありますから、ミシュラン掲載が妥当か疑問でありますが、同伴やお忍びカップルから、家族連れや接待(個室も有り)まで幅広い客層に対応できる店。勿論普通のカップルも大丈夫であります。

地番は元赤坂、12席あるカウンターでも靴を脱がなければなりません。座敷も用意され、担当の仲居さんが張り付いて給仕するシステムは、接待客に最善かもしれません。
ところが値付けはチェーン展開するすき焼き屋やしゃぶしゃぶ屋と大差がないのです。単品ではすき焼き(しゃぶしゃぶ)が1万円、コースでも1万2000円、1万4000円、1万7000円と「今半」や「瀬里奈」のグループ店と変わりがない。勿論肉質は勝るとも劣るものではありません。この日頼んだコースは接待だったので最高値コースでありました。

前菜の赤貝と若布の二倍酢はどこでも遭遇するレベル。アン肝やサワラの白味噌焼きなどの酒肴盛り合わせの後、カツオが強い出汁のお椀が登場します。椀タネの鯛もかなり塩が強くこの時点でこの店は江戸風すき焼き屋だとわかるでしょう。

造りは甘エビ、サヨリ、鯛。すき焼き屋でこの手の料理に期待するのは酷というもので、これまた可もなく不可もなし。追加の一品で頼んだ20食限定の細切り野菜は、本当に細切りしただけのもので、どこが限定品なのか理解できなかった。そしていよいよメインのすき焼きの登場です。

仲居さんが造ってくれるすき焼きは予想通り割り下を使った関東式であります。仲居さんが玉子の卵白だけ時間をかけて泡立ててくれるのがこの店のウリでありますが、目的は接待客用パフォーマンスと考えます。
すき焼き自体は「今半」や「瀬里奈」との差を見いだせない中、肉を追加(3000円ほど)して赤出汁とご飯で〆ましたが、驚いたのがワインの値付けです。
ノンヴィンのシャンパーニュが1万円以下、ボルドーの2級格付けが1万数千円とそこらの廉価フレンチより安いではありませんか。

秋には松茸を使ったコースを1万8000円で提供しております。味濃い料理に丹波産など高級松茸は不要。ぜひこの時期は話のタネに松茸コースを試してみてください。