昼のコースが特にオススメ、祇園 末友

このコラムで友里としては珍しく褒めていた京料理店に「祇園花霞」がありました。
その雇われ料理長が1年のブランクを経て建仁寺南門前に独立したのが一昨年はじめ。早速関西の食べ仲間と夜に訪問したのは言うまでもありません。
ところがタクシーを降りて我々は顔を見合わせてしまった。立地はよいけど隣の店には恵まれなかった。土産物屋の電飾があまりに派手で、パッと見まるで「烏賊釣り船」ではありませんか。一気に期待がしぼんだ瞬間でした。

大勢だったので個室利用となり、当時のコースは2万5000円。主人本人も認めているとのことですが、1年のブランクが利いたのか食後感はとても支払い額に相当するものではなかったのです。
当時は「祇園さヽ木」の悪いところを見習ったのか昼夜とも一斉スタートを強制していたこともありしばらく訪問を控えていたのです。

久々の訪問は昨秋の昼。すでに一斉スタート制は崩壊し使い勝手は良くなっておりました。あまり期待しなかった5500円昼コースでありましたが、食べ始めてそのCPの良さに驚くことになったのです。
昔から良く出ていた白胡麻和えの柿釜に続いて、白舞茸と鱧の土瓶蒸しに納得。関西独自の言い回しの「つばす」(鰤の子供)の造りの後、イクラや蟹の手巻き寿司が登場しました。そしてえぼ鯛の焼き物がでて、この日一番感心した大原蕪の鍋物で〆の白飯となりました。これで5500円ですか驚きのCPであると言えるでしょう。

気をよくして今年になって訪問。調子に乗って昼に夜のコース(2万円)を頼んだのですが、後半の変化球料理でちょっと拍子抜けしてしまった。

雲子の粕汁は美味しい。ヒラメや赤貝の造りも質、大きさと立派。お椀はカワハギのみぞれ仕立てでこれまた満足の一品。「御料理はやし」と共に、この店の出汁の美味さは傑出しております。
ところが次に出た自家製唐墨の寿司、美登利寿司のようにタネが垂れ下がっていて美しくない。甘鯛の焼き物もあまりにレアで低温調理と見紛うもの。そして昆布出汁の鮟鱇鍋でトドメを打たれました。

京都の若手料理人、いや有名料理店の中でも腕がよいと友里が評価するだけに、オーソドックスな京料理をベースに変化球は1品程度に絞っていただきたいと考えます。

アンガス牛が泣いている、トレーダーヴィックス

友里が若い頃はデートスポットとしてちょっと流行ったニューオータニのトレーダーヴィックス。やけに店内が暗く、料理も変なアジアンテイスト。数回の訪問で嫌になり以来近づいておりませんでした。
最近はハワイ料理も出しているようですが、私が追い求める(大袈裟)アンガス牛のステーキを出していると知ったのは昨年末。300グラム以上のブロック肉を特製の窯で焼き上げるというフレコミに、赤身肉好きで軟らかい肉が嫌いな私は(アンガス牛は赤身が多く噛み応えがあると言われています)思わず脊髄反射してしまったのです。

年末だというのに店内の客入りはポツポツ。
メインはもちろんアンガス牛ステーキでありますが、まずは前菜からスタート。
シュリンプカクテル(2600円)はデカイだけで旨みなし。海老グラタン(2750円)も高いだけ。オリエンタル風春巻き(1800円)はこの価格で太いのがわずか一本のみ。シーザーサラダ(1700円)は目の前で造ってくれますが量も少なく資生堂パーラーの足下にも及びません。
アボガド&トマト(1600円)もあまりに高く、トムヤムクン(1600円これも高いぜ)が唯一まともと感じたものでした。この高いだけの前菜群を食べ進む中、私は嫌な予感がしだしたのであります。

この日の主役アンガス牛は300グラムが6000円、500グラムが1万円とアメリカの高級ステーキ屋を上回る立派な値付け。窯焼きを考え火入れを深くとミディアム以上でお願いした期待のアンガスでしたが、予想を大きく裏切る食後感に私は打ちのめされたのです。

グリル感を期待していませんでしたが、大きな窯の輻射熱だけの火入れだからか、食感はローストというか「蒸し焼き」そのもの。アメリカンステーキのように外側が焦げ気味にカリッとしておらず塩も緩過ぎ。旨みのない蒸し肉ではありました。
アンガス牛の特徴である噛むほどに肉の味が口中に広がるといったものも皆無で、これならチャコの北米ブロック牛の方がはるかに美味い。完全な期待はずれでありました。

ワインはアメリカ産が主体で、ニューオータニの専売特許である高い値付けも健在。前菜イマイチ、肝心のアンガスも良さを引き出しておらず、酒類もあまりに高過ぎ。再訪はあり得ません。

そこらの銀座鮨に勝るとも劣らない、鮨福元

以前から悪くない江戸前鮨屋だと思っていたのですが、食べログの評価を見て唖然。3点代半ばとそこらの凡庸店並みの評価に甘んじているではありませんか。
今春出版予定の友里オススメ本に掲載しようとプレリストに載せていただけに私は慌ててしまった。そんなにクオリティが劣化したのかと確認に訪問したのはいうまでもありません。

この店の問題点はネットでも批判されております主人が喫煙者であると言う点。私も以前、店先で紫煙を噴かしている姿を目撃したことがあります。運が良かったのか、遭遇した記憶はありませんが、店内も喫煙可ということで、この店は今時珍しい喫煙者に寛容な高額鮨屋なのであります。
この喫煙容認(主人も吸っているから仕方ないのか)が店評価に大きな影響を与え居ているのは想像するに難くありません。再確認で久々に訪問したのは昨秋でありました。幸いこの日も客に喫煙者はおらず、いつものようにツマミからスタートです。

まずは鯛とシマアジの刺身。実は前日にわざわざ神戸へ行って味のわからない一部の人が持ち上げているカリスマ漁師・村公一氏が自ら振る舞った鱸を食べてきたのですが、魚の旨みは圧倒的にこちらに軍配。タネ種が違うとはいえ、比べものなりません。続くカツオも悪くはなかった。

好きなタコの桜煮ですが、この店はホント美味しい。お酒がすすんでしまいます。ここでは初めて食べた天然鰻の白焼きも野田岩と比べようもないほどの質と出来で美味しかった。トロ、イクラ、そしてウニと続いて握りへと移ったのです。

墨烏賊にはじまり、鯛、鮪、コハダから最後は穴子に鉄火巻きとその数10ヶくらいでしょうか。いずれの握りも数ある銀座鮨と比べて平均以上。この日は特に赤貝が傑出していたと記憶しています。ビールに日本酒を飲んでの支払いが2万円前後は、下北沢という立地を考えても充分満足する食後感であったことを再確認した次第です。

店のHPにはその日のタネの産地が前もって公開されております。カウンターにも表記された紙が置いてありますから、増殖続ける鮨オタクへの対策も万全。タバコを触っている手で握られるという現実(実際タバコの影響は感じません)に抵抗がない方にはオススメな、銀座に勝るとも劣らないCP良い店と考えます。