西麻布4丁目、日赤通り近くのバブリーなビルの地下スペース、テナントはほとんど1年持たず撤退を繰り返しておりました。デリ、フレンチ、そして創作和洋折衷料理など。ウシオ電機系が運営していた六本木「まっくろう」の料理人を招聘し、広尾の業界人御用達イタリアン「アッピア」が関わった「新まっくろう」がオープンしたのは1昨年夏過ぎ。それが一年持たず閉店してしまったのも方角や風水が悪いからなのか。その「アッピア」が再度勝負してきたのが「アルタ・アッピア 西麻布」です。方角、風水関係ないのか今現在集客は順調です。
メニューの料理名が分からない人でも安心なのがこの店の特徴です。着席すると、造り置き主体の冷前菜、温前菜が盛られたカートが2つやってきます。その皿数、冷・温それぞれ10種以上あるでしょうか。客は目で見て好きな料理を選ぶことができます。冷前菜はそのまま盛り付け、温前菜は温め直すか焼くだけと、カートでなかったらイタリアのセルフサービスに近い廉価な店と同じシステムです。パスタは乾麺と手打ち麺のわずか2種。調理法も数種類しか説明がありません。そしてメイン。これまたカートで運ばれてきた魚や肉を選ぶのですが、肉は和牛、豚、仔羊、猪などのグリル、魚もアクアパッツァやポワレくらいしか選択肢がありません。厨房は多種の造り置き前菜を大量に造ることに注力し、パスタやメインはシンプル調理で流すという、シェフの顔が全く見えないレストランであります。
タコマリネ、インゲンとニンニク、鴨とゴルゴンゾーラ、鰯焼き、牛テールなど冷・温前菜はわかりやすい味付けなだけ。鮟鱇とアン肝のラグーの手打ち麺も業界人が喜ぶまったり濃い味。丹波の猪グリルやヤガラのポワレもイタリアのテイストをまったく感じなかった。良く言えば万人受けする創作料理、はっきり言えば経験の少ない厨房スタッフでも出来るマニュアル料理と読みました。業界人、同伴カップル、そして国会議員も見かける高い洋風料理屋です。
ワインリストは1万円から2万円が主体で値付けも高い。CP良いといわれるシリアやサルディーニャ産もほとんどなく、
8000円の安いワインに抑えても2名で4万円弱の支払は、本格イタリアンを期待する人にはまったく向いておりません。
カートのパフォーマンスだけがウリ、アルタ・アッピア
ニューオータニのイタリア3つ星フェア、アル・ソリーゾ
ここ数年1月と2月に友里が訪問するホテル ニューオータニ内のイタリアン「ベルビュー」。イタリアの星付き店のシェフを呼んで5日間限定で開催されるフェア訪問が目的です。本日は南イタリアの2つ星「ドン・アルフォンソ」の初日のはずです。この店、昨年のフェアへ行って期待したものを感じなかったので今年は行きませんが、ご興味のある方は問い合わせしてみてください。ミシュランガイドはフランス版以外信用できないと言った意見を聞きますが、この「ベルビュー」、初めて3つ星をとった「マルケージ」も招聘するなど力を入れているので、ミシュラン星付き店がどんなものなのか、話のタネの訪問はいいかもしれません。
さて1月に来日したのが3つ星女性シェフの「アル・ソリーゾ」です。このフェアへ毎回通っていながら一回もコラムに取り上げなかったのに、なぜ今回友里は取り上げたのか。それは初めてまずまず満足した料理と感じたからであります。
このフェアは必ず「アデッソ」と「クラシコ」の2コースを昼夜用意してきます。シェフの料理スタイルはアデッソかクラシコのどちらかであるはずで、無理して2コース用意させるのは無意味と思うのですが、今回はスペシャリテがある「クラシコ」を注文しました。
「ルイザの想い」というスペシャリテ、温玉の周りにジャガイモを配し、白トリュフをかけた一品。気が抜けているのか香りは弱かったですがまずまず。詰め物パスタの自家製カペラッチ(ラビオリみたい)の洋ナシの赤ワイン煮、仔羊の香草ソテーと2万7000円コースとしてはCP悪過ぎでしたが、今までのフェアと比べると美味しかった。はっきり言えば、他のフェアの店が良くなかったということです。
最後に一言。このフェアへ参加する際は、ワインの値付けの高さに注意が必要です。ノンヴィンのスプマンテ、フェラーリが1万500円。ネットでは3000円前後の代物です。有名造り手の赤ワインと言っても7000円チョイのバルベラが19800円、バローロに至っては3万円以上しかないなど、この店では金持ち以外はワインを頼むなといった超強気の営業。ワインの市場価格を気にしない方、もしくは経費族しかこの店ではワインを頼む気にならないでしょう。
タレント関連の店がCP悪いのは定説、わだ家
昨年4月、西麻布にオープンした「お菜屋 わだ家」。和田アキ子の店としてマスコミにも大きく取り上げられた豚シャブがメインの居酒屋です。彼女の知名度や業界での影響力を気にする放送作家やタレント仲間のバックアップで、上々の滑り出しのようです。5月には大阪お初天神店も出し、HPで予約受付をするほどの繁盛さ。しかし運営母体は和田アキ子の個人プロダクション(株)エー・アンド・ケイと言われていますが、実際の運営は店舗プロデュースや居酒屋などをやっている(株)未知インターナショナルだという事実を知っている訪問客がどれほどいるか。事実、スタッフ募集はこの会社が行っており、オープン10ヶ月になるのに今さら募集職種に「料理長」があるのも理解できません。現在まで不在だというのか。
この店は居酒屋の位置づけなのに、生物(刺身など)を置いていません。体に良いと一夜干しの充実を謳っていますが、要は保存が楽なものに限定しているだけではないか。
オヤジギャグの「冷アッコ」(680円)、底が丸い器に盛ったすくい豆腐に出汁醤油と削りたての鰹節をかけるもの。揺れて食べにくいただの豆腐です。アッコの掌サイズという「わらじコロッケ」(980円)は思ったより小さくキャベツは切り置き。「わらじ」もイメージはありません。おススメの一夜干し「大トロサバの炙り焼き」(1480円)はまったく鯖の味わいがない。「のどぐろ」は1860円と安い訳です。よくこんな幼魚のようなもの見つけたと思うサイズなので、美味しくないのは当たり前です。一夜干しは頼まない方が無難。30分以上かかるはずなのに「豚シャブ」より先に来てしまった「銀シャリ」はまったく凡庸。そして「豚シャブ」(2400円)は2人前からしか頼めません。脂カスを浮かべた甘過ぎる出汁で野菜と一緒に食べるこの豚、七味や山椒、黒胡椒を多用しないと酒がすすみません。そして日本酒は1合1200円以上と高めの設定であります。
4人で豚シャブ3人前にその他の料理は1人前、そしてビールにボトル焼酎(7400円)と満腹を犠牲にしての〆は一人当たり7500円。お腹一杯になりませんでしたが、1万円支払ってまで満腹になりたくないレベルのこの料理。タレント店に傑出なしは定説です。