店名の通り島根の天然鮎が一番のウリですが、鮎の時期以外は天然スッポン、青首鴨、アンコウ、フグ、松葉蟹などの料理を出して通年営業しております。やはり初訪問は初夏から秋にかけての鮎料理が良いでしょう。カウンターと小上がり、そしてグループ対応の2階と、マスコミに露出していませんが賑わっております。特徴は男性客だけグループの多さ。接待で使いやすいのでしょう。
1万5千円のコースを食べましたが、すべての料理が「鮎絡み」であります。先付けの鮎寿司からお椀は鮎と冬瓜のすまし汁。小さい焼鮎は結構イケます。造りは鮎の洗い。そして鮎の塩焼き、うるか、うるか茄子の他、煮浸し、酢の物も鮎で最後は鮎ご飯で〆となります。正に「鮎尽くし」、ここまで鮎攻撃が続きますと有り難味が半減すると言うものです。すべての鮎が天然物ならこの価格設定はかなりお買い得。特にうるか料理とお椀の鮎を一度はお試しあれ。京料理ではメインを張る塩焼きは期待が大きかっただけに、ちょっと不満が残りました。鮎の大きさに比べて焼きが甘い。大きすぎると感じる先入観からか香りにも欠け、丸ごと食べられるとのことでしたが、頭部分が少し口に残りました。次に1時間かけて炙ると言う名物「炙り鮎」を試しました。頭を真下にして遠火の炭火で炙る料理は、大きな子持ち鮎を冷凍して10月末まで供するそうで、ほとんどの客が頼んでいます。子がびっしり詰まってかなり大きな鮎ですが、これも思ったより表面に火が入っているようには見えない。青柳系の鮎自身の脂で揚げられたようにしっかり焼き上げる鮎が好きな私には物足りなく感じました。紙越しに手掴みで頭から食べるこの鮎、身がややパサパサに感じたのは炙り方の問題か、冷凍だという先入観からか。話のタネに試してもいいですが、好き嫌いが別れるでしょう。
養殖物しかないと思っていたスッポン鍋。コースは1万7千円と「天然」の看板では安く感じます。湯引いた肝、心臓、ムネ肉の刺身は旨い。1時間半かけるという鍋は、濃縮感はないが肉自体にも自然な旨みを感じ、雑炊を食べてお腹一杯になりました。その他6300円コースであるアンコウや青首鴨もチャレンジしてみたいアイテム。傑出したものないですが、CPは悪くない店です。
ここまで鮎尽くしに徹する必要があるのか、新ばし 鮎正
京料理ではないただの宴会料理、木乃婦
創業70周年のこの老舗は、三代目若主人の戦略が当たったようでTVをはじめマスコミの露出で有名であります。京都を代表する若手料理人として、日本料理を勉強したいフランスの料理人を教えている番組がありました。しかし、この店を「京料理」の代表と海外に示してしまって良いものか。山本益博氏もべた褒めしている名物料理「フカヒレ鍋」を食しに訪れた友里の結論は、ただの「宴会料理屋」でした。
ビルですが一見料理旅館に見える外観。すべて個室対応で、2名から最大100名まで収容できます。この大宴会対応だけで店のレベルの店かわかると言うもの。大量生産の店にうまいものなし、これ定説。各種弁当、会席料理(自ら『懐石』ではなく宴会料理を意味する『会席』としている)の他、鍋コース、出前寿司、仕出し、出張料理までこなしてしまう懐の深さ。より利益を追求したいのか「披露宴」も手がけています。和食屋がケーキカットに対応するのはまだ許せるとして、「カラオケ無料」のサービスはいかがなものか。カラオケを準備している店が、まともな「京料理」を提供すると考える人は居ないでしょう。個室対応、下足番、凝ったHPと固定費をかけ、サービス料が15%ですから、CP良い料理を出せるはずがないのです。
昼にフカヒレ鍋の入ったコースは1万2千円。2階は宴会なのかドンチャン騒ぎで、個室といってもゆっくり食事を楽しむ雰囲気ではありません。
先付けにはウリの一つである「トロ握り」が2貫。脂だけの味わいない質良くない物。仕入れで不利な京都でなぜ鮪を扱うのか。なまこ、焼き魚、サーモンもそこらの旅館の宴会料理と大差はありませんでした。クラッシュアイスの乗せた鯛、甘エビ、紋甲イカの造り。1万円以上のコースで紋甲に甘エビはCP悪すぎです。スペシャリテのフカヒレ鍋ですが、マスコミに載る写真とはまったく別物。フカヒレがかなり小さく、替わりに胡麻豆腐がでかすぎ。利尻昆布、金華ハム、地鶏でとったと言うスープは不自然に甘すぎです。マスヒロさん、どこが「渾然一体」なのか。〆の鯛飯もまったく凡庸でした。若主人は東京・吉兆で修業したとのことですが、その面影はまったく見られませんでした。「大箱店」に旨いものなし。定説です。
ブラッスリーというより立派なビストロ料理、クワン
いつから人気スポットになったのか世田谷区の三宿。新しい飲食店が次々出来ているようですが、私はこの「ブラッスリー・ドゥ・クワン」訪問で初めてこの地を訪れました。池尻大橋から徒歩10分ほど。近辺にはやたらとラーメン屋が目立ちます。交差点近くの小さなビルの4階、カウンターとテーブル席で総数20席弱、厨房二人、ホール一人の小さな店。ブラッスリーというと、簡単な食事とワインの店のように感じますが、この店は立派なビストロ、値付けの安い料理が40種以上用意されています。サラダ、フォアグラ、リエットなどツマミになる小皿前菜が500円前後で20種近く。まずはビールが進みます。和牛のタルタルやシーザーサラダなどの前菜はハーフポーションも用意されていて千円前後とこれまた気軽な値付けで10種近く。肉は鴨、豚、鶏、和牛と2千円前後で4種の他、前菜も含めて本日のおススメが黒板で別に用意されています。ワインも3千円から1万円までの範囲ですが主体は5千円前後。値ごろ感ある安いワインを揃えています。安くて豊富なメニューを見るとつい多めに頼んでしまいがちな友里。パテ、リエット、ラタトゥユなどビストロ定番はまずまず。オニグラや仔羊のリードヴォーも結構イケました。自家製のブリオッシュは目の前で焼いていて250円。余りパン系に興味がない友里ですが、これは旨かった。グリーンサラダにプラス400円でトッピングできる生ハムは、質は普通ですが量もたっぷりで○。鴨コンフィ、地鶏とフォアグラの重ね焼き赤ワインソースといったスペシャリテもしっかりした味付けで満足しました。オープンキッチンには2人だけしかいませんが、手際よいシェフとスタッフはストレスなく次々料理を供してくれます。かなり食べて飲んで9千円くらい。もう少し安いワインでしたら7千円で終わるでしょうか。同じビストロ料理でも浅草の「モンペリエ」とは種類、CP、完成度が違います。問題点は一つ。カウンター付近は厨房の換気装置の能力が不足しているのかオイルミストが蔓延しています。ぜひ換気装置を改善していただきたいものです。気軽な服装(油をかぶります)、気軽な予算で数多い美味しいビストロ料理を楽しんでください。