京都ブームは相変わらず続いているようです。秋になると、「京都特集」をうつ雑誌が乱発され、数多くの京料理店が紹介されています。ミーハーな私も「花霞」をそのような雑誌で知りました。昼間から女性観光客で一杯の割に美味しくない自称京料理店が多い中、この店は当時客が入っていなかったのですが、昼に訪れてその良さを確認、日をおかず夜再訪したくらい印象的な店でありました。後に板長は「祇園 丸山」系列で修業したと判明。高いがしっかりした料理を出す店出身と知り納得したものです。
四条の「祇園ホテル」向かいの路地を上がった左側、CP悪い有名店「千ひろ」のチョイ手前にあるカウンター主体の店。料理人と女性の二人だけで切り盛りしております。
昼夜平日訪問しましたが、満席ではありません。しかし、電話問合せや飛び込み客を断っていましたから、前日までの予約が必要なようです。
昼は5千円から1万円までのコース。夜は1万円から2万円くらい。決して安い店ではありませんが、CPは抜群で支払い後満足して店を後にすることができるでしょう。
寒い時期はまず生姜湯で体を温めてから綺麗に盛り付けた先付けが登場。見た目だけでなく中身もうまい。そしてお椀。和食は出汁が命、よってお椀は華というのは誰でも認めることだと思っていたのですが、料理店評価業界の異端児、J.C.オカザワ氏は、和食は刺身だけと勘違いしてもっぱら鮨屋で和食を代用。出汁やお椀の重要性を認めない、いや理解できない可哀想な人なのですが、彼にもぜひ味わっていただきたいのがこの店のお椀です。椀タネに関係なく皆美味しいのは腕が良いから。そして、造りの鯛の質も悪くはない。出汁が良いから当然炊き合せも旨い。そしてその野菜も拘っているからか美味しいのです。夜の訪問では、ちょっと気張って2万円コースをオーダーしてしまいましたが、丹波だと記憶していますイノシシなど凝った食材で、支払いに充分見合うCPの良さを感じました。
水が違うから出汁がより美味しいのか、読者の皆さんには、ぜひ京都観光の折にはこの「花霞」で京料理の奥の深さを味わっていただきたい。最近はかなり混みあっていると聞きますので、早めの予約をおススメします。
若手料理人の中でも秀逸な京料理、祇園 花霞
酢飯は緩いがツマミが充実している、すし 椿
ここ数年、銀座や六本木、西麻布で鮨屋の出店ラッシュが続いていますが、この店も昨年オープンしたばかり。鮨オタクは見かけませんが、接待系や同伴系の客で盛況です。
出資者は別なのに、店名に自分の苗字をつける自称オーナー職人が多い中、この「椿」の若い板長は雇われであります。いくつかの店で修業したといった経歴も、最近の若手職人のお約束。一つの店に縛られることなく、何軒もの修業先から職人仕事を良い所取りで身に着けられるわけです。和食ほど覚える技術が多くないのは当の鮨職人が自覚している事実。鮨屋での修業経歴ゼロをウリにしていた「鮨 なかむら」が順調に運営されているくらいでから。仕入れるタネ質に拘り、手間を惜しまない江戸前仕事に専念すれば、マスコミが煽って作り出した鮨ブームの現在、集客は計算できるのです。
店内は余裕の配置で、板長が仕切る大きな檜のカウンターの他、別室にもカウンターがあるなど豪華。2人の女性スタッフに、和装のオーナーマダムも待機していますから、固定費はかなりのものと推測。よって高めの客単価を目指す為に、ツマミに力を入れた方針をとっております。乾された多数の自家製カラスミがあるつけ場。普通の鮨屋には見られない光景であります。
お任せでツマミから入るとかなりの酒肴が供されます。ヒラメや鮪、〆さばといった鮨タネだけでなく、この店独特のツマミも面白い。山葵につけた明太子、蒸たてのアン肝、スルメイカのワタの味噌漬けなどはお酒が進みます。炙り鯖、鰤のヅケ、玉子焼きも江戸前以外に出汁巻きもあるなど、ツマミの種類は10を軽く超えます。初回の訪問ではそのツマミの充実がすごく印象的な割に、握りの記憶がありませんでした。ツマミにくらべて握りに主張を感じなかったのです。酢飯がかなり緩い。酢や塩を控え砂糖を少し入れた酢飯は、何貫でも食べ疲れしないと味のわからないフードライターが雑誌に書いていましたが、緩い酢飯は食べ疲れる前に食べ飽きてしまうのではないか。オミヤとして太巻き(これが結構美味しい)を用意するなど接待客に絞った運営が功を奏して今のところ順調なようですが、客単価は2万5千円前後。競争厳しい銀座では、握りの充実をはるべきではないかと考えます。
観光地の飲食店のようにクオリティが低い、カステッロ
地元だけではなく、神奈川や東京からの客で盛況だと紹介され、山本益博氏も絶賛している佐倉のイタリアン「リストランテ カステッロ」。所要で近くへ行くことになり、当日何とかランチの2回転目の予約がとれました。家人とナビを頼りにたどり着いた先は、まったく想定外の佇まい。住宅街というより山地の高台にそのカステッロ(城)はありました。まずは、郊外ファミレスも真っ青な大駐車スペースに驚きです。しかも満車。第二駐車場を教えられ高台を降りて道向こうに作られたスペースに駐車し、トボトボとまた高台へ戻るのは辛かった。しかし、停めてある車のナンバーは、千葉、習志野が主体で東京や神奈川が見当たりません。そして店内へ入って再びビックリ。無茶苦茶大箱な店なんです。ホールも3つくらいに分かれていて、総席数は70を超えているのではないか。行く度に席が増えているといったネットのレビューもありました。先に入店した家人の座るテーブルを探し出すのが一苦労。そして客層も凄い。ベビーカーを席に横着けした乳児連れのママさんグループに、ジョギングの途中なのかジャージや短パン姿の夫婦。ドレスコードがありません。グループ客もやたらと多く、ほとんどが店前で記念写真を撮っていました。テーブルチェックができるのですが、大半の客が入り口のキャッシャーでチェックしていたのも印象的。テーブルには紙のクロスと紙ナプキン、とこのリストランテは、駐車場に観光バスはないですが、観光地の店と同じような雰囲気をかもし出しているのです。まったくリストランテの拘りを持たない店。スタッフは各人がオーダーした料理を覚えておらず、料理を運んで来る度に必ず誰が食べるか確認します。こんな大箱でサービスもお座なりな郊外ファミレスと間違う「自称リストランテ」の料理が絶賛に値するはずがありません。シェフお任せ(5800円)を食べましたが、自家菜園をウリにしている割に野菜は添え物を含めて無いに等しい。8皿と数は多いですが、どれも印象に残る食材、質、調理ではない創作イタリアンです。良く言っても万人にわかりやすい味。濱崎、ギオットーネのダウングレード版というところでしょうか。しかし、最寄り駅から徒歩20分はかかるこの立地は車なしでは訪問が難しい。よってワインなど酒類の販売に期待できず、粗利を確保するため大箱とクオリティ低下に奔っているのでしょう。ご近所ならいざ知らず、県外からわざわざ出かけていくのは、費用と時間の浪費であります。