ゆったり出来て主人も威圧感ないのだがちょっと高め、すし処 宮葉

昔からある知る人ぞ知る浜松町の江戸前鮨屋。私は週刊誌でこの店独特の相汁(ともつゆ)という煮ハマグリの漬け込みを知って訪問しました。
つけ場には主人と年配の2番手二人。ショーケースがありますから、最近の店ではないことがすぐわかります。しかしこのショーケース、高めに位置し出し入れの扉がスリガラスですので、ブラインドとなり職人の手元がまったく見えません。タネのどの部位をどう捌いているか、まったく確認できないのが残念です。
お決まりや吹き寄せチラシもありますが、この店ではお好みやお任せを頼むべきでしょう。
酢飯はショッパすぎず甘すぎず、しっかり主張していて万人向きです。握りは適度な大きさで主人の手数は少なく、すばやく成型します。江戸前鮨は如何に手数少なくしっかり握るかが勝負の分かれ目。掌や指の接触時間が少ないとタネが温まらないからですが、最近の職人は技術がないからかやたらと弄繰り回し、最後の成型をまな板に置いて両手でしているのをみることがあります。ぜひ、この主人の握りの手際よさを確認してください。
ツマミの種類は多くないが産地直送で時期的に珍しいものが揃っているのも魅力的。春先でしたが、なぜか眼高鮑、天然の稚鮎などレアタネもありました。江戸前鮨としての仕事振りも悪くありません。タネ質は鮪を含めて上の部類か。ヒラメ、サヨリ、カスゴなどの〆ものもしっかりしています。そして一番のお目当てだった煮ハマ。この店ではハマグリの漬け込みと呼ぶそうですが、相汁に握りごとつけて食べます。当然酢飯はほどけるので、最後は汁ごと飲み干します。この相汁、ゆずの香りが強く結構甘い。私は普通にツメをつけた握りの方が好みですが、話のタネに試してみてもいいでしょう。貝類や穴子など煮物もまずまずと、傑出したものはないまでもタネの平均レベルは高い。ビールにぬる燗を飲み、ツマミ少々に握りで2万円弱。再訪時は、調子に乗って稚鮎や鮑をかなりつまんでしまい2万5千円を突破してしまいました。立地条件を考えると安い店ではないですが、ゆっくりお酒も楽しめ、主人の手際よい握りも楽しめます。知られていない店ですが、友里おススメの鮨屋の一つです。

あの店は今・・・、ラ・ソース・古賀

久々にランチ時に訪れたのは今年の5月下旬。客が少ないのは相変わらずでしたが、店内の雰囲気が変わっておりました。そしてカレーのトッピングも仔羊がなくなり3種だけに。メニュー削減は、不振による閉店間際の足掻きかと思ったのですが、実はオープンして1年経たずに大きな賭けにでたようです。まずスタッフとして古賀シェフの妹さんを投入、店内が明るくなりました。彼女によると、5月半ばにカウンターを短くしテーブル席を2列に増卓。銀座の夜にカレーだけでは無理なことにようやく気づいたのか、ビストロ料理中心の店にリニューアルしました。飲食店がコンセプトを変えるのは大変勇気がいることです。当初の失敗を認めることになるからですが、ビストロ料理が書かれた黒板を見て友里は夜に初めて訪問したのです。
いくらか客は増えたようで、かなり席が埋まっております。カレーの厨房設備からの転換には限界があるのか、サラダの盛り付け、ポトフの最終仕上げ、生ハムのカットと盛り付けはカウンターのサービス責任者が自らやっておりました。よってツマミも含めて皿出しはかなり遅い。ビストロで簡単な料理がすぐ出てこないのはストレスが溜まります。また、「イベリコ ベジョータ」が千円からとその安さに驚きましたが、よく見ると置いてある生ハムはどう見ても「前足」。「ハモン イベリコ」は「後ろ足」限定ですからこれは「ハモン」ではありません。安いはずです。シーザーサラダ(600円)は値段なりに小ポーションで小売用のパルミジャーノを目の前で振りかけていました。興ざめ。小鯵のエスカベッシュ(揚げ浸し750円)、ブイヨンで煮込んだトロトロほほ肉(1800円)はまずまずながら、ラッキョウ付の酵素豚リエットはツメが甘く鴨コンフィ(1600円)もボロボロ過ぎてポーション小さいと、代表的なビストロ料理が弱く量が少ないのにはがっかり。仔羊のグリエ香草ソース(1700円)も変なソースよりジュで仕上げるべき。クスクス、ブーダン、シュークルート、パテ、牛ロースなどの代表的なビストロ料理もなく、メインも仔羊、ほほ肉、鴨だけでは寂しい。カレーやブイヤベースを残すより、メニューを増やすべきでしょう。これでは、2回目のコンセプト変更も近いかもしれません。

昔の面影はないくらいさびしい、はやし

高額天麩羅のハシリの店でした。既にその役割を終えたというか、完全な賞味期限切れになった文藝春秋社の「東京いい店うまい店」では発刊当初から現在まで最高評価の5つ星にランクされています。一昨年、執筆人はじめ店選定を一新してテコ入れをしてきましたが、参考にしている人が少ないのか最高評価しても影響力がないようで、集客に苦労しているのではないか。私の訪問時は我々以外、外人を含め一人客が2人居ただけでした。
引き戸を開けるとカウンターは8席ほど。「みかわ」が3回転、「近藤」も2回転するほど盛況なのに比べて、キャパの小さなこの店で、カウンターが半分も埋まっていないのには驚きました。なんとも寂しい限り。
お任せコースが始まる前の主人のパフォーマンスはいらないのではないか。
客に生きた海老を3尾わざわざ見せるのですが、こんな安っぽいサービス、食べ慣れた客にはまったく不必要。ミーハー向けのこのサービスは食通や食べ慣れた客には逆効果というものです。
その海老3尾は、最初は半生、次が強めの揚げ、最後は客のお好みの揚げ方で供されます。客の好みに合わせる融通の利く店と感じるか、海老はこの揚げ方が一番といった職人の拘りがないと感じるか。私はなぜこんなつまらないサービスをするのか、店の格を落とすだけで何のメリットもないと考えます。肝心の海老ですが、タネ質は上レベルで旨みを感じましたが、私はより旨みを引き出す揚げ方で3尾続けて食べたかった。タネが大振りだとの評判ですが、その割に種類は少ない。大きな椎茸はよかったですが、スミイカではなく肉厚もあるモンゴイカはイマイチ。しし唐、ふきのとう、銀杏、キスなどの後、生っぽい穴子には驚きました。低温で揚げることを一つのウリにしているようですが、穴子は高温でカリッと揚げたほうが美味しいはず。埋没気味で、低温揚げを全面に出したいのでしょうが、タネに合わせた柔軟な揚げ方が必要と考えます。
刺身もなく、〆に掻き揚げもでません。豆腐ベースのフリカケでご飯を2膳食べてようやくお腹一杯になりました。お酒を飲んで一人1万8千円前後は、タネ数少なく、刺身なく、掻き揚げもない「3ない状態」で、余りにCP悪過ぎです。客が少ないのは当然です。