昔の面影はないくらいさびしい、はやし

高額天麩羅のハシリの店でした。既にその役割を終えたというか、完全な賞味期限切れになった文藝春秋社の「東京いい店うまい店」では発刊当初から現在まで最高評価の5つ星にランクされています。一昨年、執筆人はじめ店選定を一新してテコ入れをしてきましたが、参考にしている人が少ないのか最高評価しても影響力がないようで、集客に苦労しているのではないか。私の訪問時は我々以外、外人を含め一人客が2人居ただけでした。
引き戸を開けるとカウンターは8席ほど。「みかわ」が3回転、「近藤」も2回転するほど盛況なのに比べて、キャパの小さなこの店で、カウンターが半分も埋まっていないのには驚きました。なんとも寂しい限り。
お任せコースが始まる前の主人のパフォーマンスはいらないのではないか。
客に生きた海老を3尾わざわざ見せるのですが、こんな安っぽいサービス、食べ慣れた客にはまったく不必要。ミーハー向けのこのサービスは食通や食べ慣れた客には逆効果というものです。
その海老3尾は、最初は半生、次が強めの揚げ、最後は客のお好みの揚げ方で供されます。客の好みに合わせる融通の利く店と感じるか、海老はこの揚げ方が一番といった職人の拘りがないと感じるか。私はなぜこんなつまらないサービスをするのか、店の格を落とすだけで何のメリットもないと考えます。肝心の海老ですが、タネ質は上レベルで旨みを感じましたが、私はより旨みを引き出す揚げ方で3尾続けて食べたかった。タネが大振りだとの評判ですが、その割に種類は少ない。大きな椎茸はよかったですが、スミイカではなく肉厚もあるモンゴイカはイマイチ。しし唐、ふきのとう、銀杏、キスなどの後、生っぽい穴子には驚きました。低温で揚げることを一つのウリにしているようですが、穴子は高温でカリッと揚げたほうが美味しいはず。埋没気味で、低温揚げを全面に出したいのでしょうが、タネに合わせた柔軟な揚げ方が必要と考えます。
刺身もなく、〆に掻き揚げもでません。豆腐ベースのフリカケでご飯を2膳食べてようやくお腹一杯になりました。お酒を飲んで一人1万8千円前後は、タネ数少なく、刺身なく、掻き揚げもない「3ない状態」で、余りにCP悪過ぎです。客が少ないのは当然です。