ビストロと自称するには無理がある、マルカッサン

近くの鮨屋で常連が褒めていた「ビストロ マルカッサン」。雑誌でも掲載されていたことを確認し、ビストロとしては最適人数だと思う4名で訪問したのが間違いでした。後にHPで確認すると、この店へ5名以上で訪問する時はシェフの「お任せ」しか選択肢がなくなるとのこと。また7名以上は受け付けないシステムでありました。そして小学校以下の子供の入店も不可だとか。おいおい、この店関係者はフランスのビストロへ行ったことがないのか。こんな敷居の高い「ビストロ」なんて聞いたことがありません。
シェアが前提のシステムは、シェフとマダムの2名だけなので、料理を一皿毎しか造れないからの苦肉の策。同じテーブルで違った前菜やメインを頼んでも、1皿毎しか出せないからシェアさせるしかないわけです。客が多ければますます料理の出は遅くなります。よって4人で行った為、前菜は6種、メインは3種とバラバラになり計9皿をチビチビとシェアする羽目となった次第です。メインはいくらかポーションが大きいとはいえ、前菜は普通盛りですから、4人で分けたら満足できない。ビストロでガツンと食べてお腹一杯になるといった満足感なく、だらだら食べて結果満腹になると言った感じでありました。
豚のリエット(630円)はまったく普通。もう少しスパイシーでも良かったか。国産の無添加生ハムはよく言えば癖がなく、はっきり言えば個性がない。鱒のマリネ(1780円)は質が良かったですが、オレンジオイルの変な甘さに疑問。現在はバジルとトマトのソースになっていますから評判が悪かったのかもしれません。パテ、フォアグラコンフィなども印象が薄かったのですが、メインは悪くはなかった。おススメの豚骨付きロースのグリエ(4000円弱)、量もあり旨みも充分。仔羊スネ肉のスパイス煮込み(3150円)も香辛料が利いていて面白い。蝦夷鹿(3780円)もまずまず。しかし単品価格は店構えやサービスと乖離した高価格ですから当たり前か。
5?7000円のワインを3本飲んでの支払は一人1万円を突破。メインに美味しい料理がありましたが、ビストロとはサービス、料理、価格と自分のイメージに合わないマルカッサン。ご近所限定の高めの自称ビストロとして紹介します。

江戸料理「なべ家」をストーキング、フグ編

ミシュランの発売ですっかり影が薄くなってしまいましたヨイショライターたちの寄り合い所帯評価本「東京最高のレストラン」。ここで長年「江戸料理店」として高く評価されていたのが大塚駅にある「なべ家」です。
鮨の江戸前はイメージできるのですが、江戸料理とは果たして何なのか。その答えを探すため友里は約一年かけて季節ごとにこの店へ通いつめました。題して「なべ家ストーキング」。まずはこの時期旬の「フグ編」です。九州や関西が本場であると思っていた「フグ料理」を江戸料理店で扱っているというのがサプライズ。昔は江戸湾でもフグが獲れたのでしょうか。
この店は何時行っても盛況感が伝わってきません。個室のテーブル上には灰皿が常備されています。繊細なフグ料理でも紫煙を気にしない客が多いということでしょう。
まずはお通し3品でコースがスタートします。ウルメイワシ、銀杏、蛤の煮付けが江戸料理?実はこの「ウルメイワシ」、季節に関係なく毎回出てきますから完全に飽きます。次はフグ汁なるもの。味噌仕立てでフグが2片で思ったより薄味でした。
メインの一つであるフグ刺しも天然をウリにしている他の高額店と比べるまでもない質。辛めのポン酢でわかりにくいですが、引かれた刺身はやけに柔らかく滋味を感じません。
なぜフグコースに蕎麦がでてくるのか。カツオと味醂が強すぎてバランス悪い出汁をかけたオロシ蕎麦、わざわざ出す意味ないと思うのですが、季節に関係なく出てくる「
江戸料理」の定番であります。
鍋も普通で、質の良くないフグだからか雑炊も旨みがなく、塩をかけて食べることを勧められました。白子入りなのに味わいが足りない。この白子、小さすぎて塩焼きでの提供は無理かもしれません。
デザートはこれまた定番の「凍り豆腐」なのですが、添えられてある打ち抜きのスプーンはチープ感そのもの。温めの提供なので火をつけさせなかったヒレ酒にも疑問を持ち、このフグ質と古い建屋の環境で支払が一人2万円台後半はCP悪すぎと言うものです。ウルメイワシと甘い出汁の蕎麦、そして凍り豆腐を加えるだけで凡庸なフグ料理がヨイショライターに評判高い「江戸料理」に変身しますが、純粋にフグを食べたいなら他の店へ行くことをおススメします。

あの店は今・・・、オステリア ナカムラ

CP良い料理とシェフとマダムの小さな店だったからか、なかなか予約が取れなかった六本木のイタリアン。ビル立て直しで一時閉店していましたが、昨年末に六本木7丁目のビル2階で再開したと聞き久々の訪問です。スペースが広くなった割にはそれほど席数を増やしていないので圧迫感はなくなりました。カウンター6席にテーブルが6卓とキャパは20名弱です。
洗い場の女性スタッフが増えて3人になったので、満席でも以前ほどタイトにならないでしょう。黒板上で料理や種類、そして価格の変更がほとんどないことを確認して一安心しました。
前菜は1600円前後で定番が6種に本日のおススメが4種。パスタ&リゾットも1700円前後で5種以外に、本日のスパゲッティとして4種を用意。2500円前後のメインも肉が3種に魚も用意され、この価格帯の店では充分な料理数です。
定番の牡蠣のオイル漬け(1800円)はまずまず美味しい。蟹とポロ葱や猪のラグーのパスタもやや甘めの味付けが特徴ですが悪くはありません。店の格からして濃い目の味付けの方がマッチしております。
メインのグリル料理には今回ちょっと不満。ガス焼きの限界なのか、岩中豚は焦げ部分があり、仔羊は味がかなり濃すぎでありました。価格を考えるとそれほどの質を求めるのは酷とはいうものの、質、調理ともう少しレベルを上げてもらうと更に良い店になるでしょう。
ワインは3600円前後の安いワインから1万2000円までと価格帯に変更はありません。主要価格帯が5?6000円くらいとちょっと上がった印象になったのは移店で仕方ないことか。
以前はディープなイタリアンとしてオタクっぽい一人客がカウンターでブチブチ言いながら食べている光景を見かけたこともありましたが、新店は明るいイメージで女性客の割合が増えたかも。マニアックな客はちょっと行きにくくなったかもしれません。
各皿はボリュームもあり、前菜、パスタ、メインと3皿食べたらこの友里でもお腹は一杯。手頃なワインを頼んで一人1万円前後は充分元取れる食後感であると考えます。それほど季節感ある料理ではありませんが、近所にあればちょくちょく行ってみたいCP良いイタリアンであると考えます。