気軽な寿司店の位置づけの写楽、桂、勝どき、から高額寿司店を目指す古径、乾山などを全国に多店舗展開している「寿司田グループ」のフラッグシップ店、乾山銀座七丁目店。グループ店舗数はかなり多いですが、当初は「寿司田」からスタートしたと聞きました。「多店舗展開にCPの良い店なし」の定説が寿司業界にも当てはまるか。以前J.C.オカザワ氏から聞いていたこの店を打合せ帰りに偶然発見し、昼に迷わず飛び込みました。昨年10月末に現在のビル2階に移転しましたが、最初の訪問時は狭い路地に面した古い造りの店舗。客はほとんどおらず、つけっぱなしの小型TVの存在に驚いたのです。
ツマミからお任せで、シマアジ、アジ、トリガイとタネ質は中の上程度か。赤身は色も薄く中トロ含めて鮪はイマイチ。握りでは、酢飯に特徴なく、煮切りは要求しないと引いてこないなど、街場寿司屋の上級店といった位置づけと判断。炙る穴子、煮ハマはガス臭いと感じたのは先入観からか。〆ものが少なかったことからも、江戸前とは違う海鮮タネ系の寿司屋と言えるでしょう。ぬる燗飲んで1万5000円強の支払いに、この内容ではCP良いとは言えません。
移転後の新店も昼は客が少ないようです。大箱で内装は豪華になり、TVも薄型になりましたが健在。しかしなぜTVがあるのか。巨人戦を見ながら寿司をつまむ客層が多いということでしょうか。高級店を目指すならまず最初にリストラすべきがこのTVであると確信します。
山葵は太くて立派そうでしたが、その他は以前と同じレベルのタネ質。鯖は〆すぎで質もイマイチ。玉子は出汁巻きではなかったですが、業務用に大量生産した出来合いものと区別がつきません。2番手は握りの最終成形をまな板に置いて両手でやっていました。見ていて見苦しい。握りの技術を修練されることを望みます。
海鮮系のはずですがタネ数は多くなく、支払いは固定費増えても変わらず1万5000円前後。酢飯にまったく特徴なく、仕事に拘りもない。正にJC好みの寿司屋といえますが、夜の再訪は私にはあり得ません。多店舗展開の会社が経営する高額店にCP良い店なし、も定説であります。
高額寿司店にTVは必要なのか、乾山
銀座の鮨屋では穴場的存在、鮨 奈可久
J.C.オカザワのおススメ店にうまいものなし。
これ、彼と付き合い出して1年経った私の結論です。彼の推奨店を訪問して何度落胆したことか。特に昨秋出版した拙著「グルメバトル」の取材では、彼の提案した店ではずれまくって危うく体調と自分の味覚を崩すところでありました。そんなJCが昨年末コラムで褒めていたのがこの銀座の「奈可久」です。体調や味覚も戻り、また駄目さ加減を確認してやろうと訪問したのですが、意外やまともな鮨屋で驚いたのです。JCも下手な鉄砲数打てば当たるということでしょうか。
泰明小学校近く、主人と女性の2人の小さな店。「奈可田」系の店のシンボルであるつけ場の氷柱はやや貧弱ですが健在。手が足りなくて昼営業をやめ夜に絞っていますが、客入りは良いように見えません。
まずはツマミ。定番だけあって蛸の桜煮は旨い。
焼き物の他は鮨タネが主体となりますが、春子、〆鯖などタネ質、仕事と悪くありません。では握りはどうか。酢飯は流行の赤酢を使っておらず特徴あるものではないですが、タネとのバランスは良い。コハダ、煮ハマ、鯖、キスとかなりの鮨通でも許容範囲の出来ではないでしょうか。オボロをつけた蝦も面白い。かなり漬け込んだヅケ(奈可田とはスタイルが違う)は客によって好みが別れるでしょう。煮穴子、鯵と時節的なものか質に疑問のタネもありましたが、太巻きのオミヤを入れて一人2万円前後の支払いは、銀座では文句をつけられません。
そしてこの太巻き、美味しかったのか家人たちにすべて食べつくされてしまって味わうことができませんでした。どうしても味わいたくて再訪して持ち帰り、確かに美味しさを確認した次第です。
主人は謙虚で、一人客にも寛容な営業、しかも飛び込みで簡単に座れるほど空いている銀座の穴場といえる江戸前鮨屋。繁盛してきても「しみづ」のように制限時間での入れ替え制など客の居心地を考えない儲け第一主義に奔らない事を願うばかりです。
味センスが良いとはいえないJ.C.オカザワさん。でもこれだけスシを食べて紹介しまくれば、たまには当たりの店を紹介できるということが今回わかりました。なぜ客が少ないのか友里には不思議。銀座の穴場鮨屋としておススメです。
周辺の有名ビストロよりおススメ、シブレット
今日も月曜に続いて友里にしては珍しいおススメ店の登場です。慣れない褒め言葉をひねり出して体調を崩さないか心配です。
読者から「台東区の奇跡」との強力な推薦を受けた「ビストロ ラ シブレット」。浅草橋駅から徒歩5分ほど、カウンター6席、二人横並びのラブ席1つにテーブル1卓のシェフとマダムの小さな店です。ランチが特にCPがいいのか、ネットでもかなりの高評価。ビストロ料理に目がない私は直ちに訪問したのです。
黒板メニューには前菜が10種ほどで840円から1470円の範囲とまずまず安い。メインはシャラン産鴨、ロイヤルポーク、オーストラリア仔羊、鶉、と食材も揃い、ほほ肉赤ワイン煮とビストロ定番料理もあるのですが1890円から3300円までと店構え、立地からするとやや高めの値付けです。ワインはどうかというと、ノンヴィンのシャンパーニュが7900円。高くもないが安くもない。白・赤ワインは3600円からありますが上は2万円弱までと高額なものが多いのも意外でした。
アミューズの桃と生ハムはオイルが効いていてグッド。岩牡蠣のスープはバジル以外に塩を強く感じましたが、定番のウニのコンソメジュレもなかなかのもの。世界一美味しいと銘打ったオリーブもそのキャッチに疑問ですがまずまずでした。温玉付のラタトゥユ、白レバーサラダと量だけの皿もありましたが、前菜は当たりが多かった。
メインがこれまた大盛りです。シャラン産鴨は3300円と一番高価ですが、特にボリュームたっぷりで美味しい。仔羊(2400円)も悪くありません。ボリュームがあるので、3名でもメインは2皿でお腹一杯。色々な料理をシェアしながら試すのではなく、しっかり1皿を食べこむ位置づけの店であります。塩をしっかり効かせた味付けにボリューム満点の料理は、正にビストロというものです。ワインが高めなので、飲むグループでは一人当たり1万円を簡単に超えてしまうのが難点。総合評価では高田馬場の「ラミティエ」には及びませんが、料理の種類、味、量、そしてCPと近辺の「モンペリエ」のはるか上を行っています。「奇跡」は起こりませんでしたが、まずは訪ねても不満のない店。下町のビストロとしておススメです。