銀座の鮨屋では穴場的存在、鮨 奈可久

J.C.オカザワのおススメ店にうまいものなし。
これ、彼と付き合い出して1年経った私の結論です。彼の推奨店を訪問して何度落胆したことか。特に昨秋出版した拙著「グルメバトル」の取材では、彼の提案した店ではずれまくって危うく体調と自分の味覚を崩すところでありました。そんなJCが昨年末コラムで褒めていたのがこの銀座の「奈可久」です。体調や味覚も戻り、また駄目さ加減を確認してやろうと訪問したのですが、意外やまともな鮨屋で驚いたのです。JCも下手な鉄砲数打てば当たるということでしょうか。
泰明小学校近く、主人と女性の2人の小さな店。「奈可田」系の店のシンボルであるつけ場の氷柱はやや貧弱ですが健在。手が足りなくて昼営業をやめ夜に絞っていますが、客入りは良いように見えません。
まずはツマミ。定番だけあって蛸の桜煮は旨い。
焼き物の他は鮨タネが主体となりますが、春子、〆鯖などタネ質、仕事と悪くありません。では握りはどうか。酢飯は流行の赤酢を使っておらず特徴あるものではないですが、タネとのバランスは良い。コハダ、煮ハマ、鯖、キスとかなりの鮨通でも許容範囲の出来ではないでしょうか。オボロをつけた蝦も面白い。かなり漬け込んだヅケ(奈可田とはスタイルが違う)は客によって好みが別れるでしょう。煮穴子、鯵と時節的なものか質に疑問のタネもありましたが、太巻きのオミヤを入れて一人2万円前後の支払いは、銀座では文句をつけられません。
そしてこの太巻き、美味しかったのか家人たちにすべて食べつくされてしまって味わうことができませんでした。どうしても味わいたくて再訪して持ち帰り、確かに美味しさを確認した次第です。
主人は謙虚で、一人客にも寛容な営業、しかも飛び込みで簡単に座れるほど空いている銀座の穴場といえる江戸前鮨屋。繁盛してきても「しみづ」のように制限時間での入れ替え制など客の居心地を考えない儲け第一主義に奔らない事を願うばかりです。
味センスが良いとはいえないJ.C.オカザワさん。でもこれだけスシを食べて紹介しまくれば、たまには当たりの店を紹介できるということが今回わかりました。なぜ客が少ないのか友里には不思議。銀座の穴場鮨屋としておススメです。