ボリュームだけがウリ、煮込みや なりた

モツの煮込み屋と間違う店名ですが、実は人気ビストロであります。代々木駅近くの商店街、カウンターと店外にはみ出してビニールで覆われたテーブルスペースの小さな店。とてもビストロとは思えない外観であります。
この店の特徴はボリュームと安さ(ワインも含む)。はっきり言うとこれしかなく、調理やサービスに期待してはいけません。
グラスワインもありますが、シャンパンなど発泡酒はボトル売りだけ。しかし、GHマムというノンヴィンが5250円と下手な小売店より安い。スティルワインも有名どころではないけどフランスものを高くて6000円と安く提供しています。
調理は主人一人、サービスも一人で20人近くの客を担当しますから、皿出しが遅く対応が粗いのは仕方ないか。料理も丁寧な調理が出来るはずがありません。それらのハンデを補って集客をはかる戦略が、このボリューム第一主義なのです。

前菜は500円から1300円くらい。メインも1000円台ですが、ほとんどの皿がはみ出さんばかりの盛りつけで、2?3人前の量があります。
キャベツのクミン風味、クミンをかけているだけの「とりあえずオツマミ」。エスカルゴ(6ヶ)と共に普通盛りの料理はこれだけでした。
人気の砂肝のサラダ、驚くべき量ですが盛りつけが綺麗ではありません。生ハムやパイナップル、苺が入っていましたが、肝心の砂肝の量は多くなかった。パートフィロー包みのヒラメ、これも添え物のラタトゥユの量が半端ではない。
パートフィローにはフォアグラや茄子のムースも混ざっていますが、添え物含めてコクを感じない。人気のラムハンバーグは、ローズマリーを乗せてバーナーで炙るパフォーマンス付きで、これもコクがないのが気になります。ハラミステーキも添え物のフライドポテトに比べるとハラミの量は見劣りしますが、味自体は悪くなかった。

食べ終わってわかったことは、この店はメイン食材ではなく添え物の量を滅茶苦茶多くしてボリューム感を出しているということと、恐らくフレークなど業務用ストックや調味料を多用しているのではないか。だから同じようなトーンの料理になってしまうと考えます。同じような価格でも丁寧な調理の「ラミティエ」とは次元が違いますが、単純にガッツリ食べたい方にだけオススメします。

オデンと言うより高額居酒屋、銀座 力

牛スジやトマトオデンで有名な、銀座では珍しくなった一軒家オデン店であります。友里がレギュラー連載している「月刊 めしとも」で、あの田崎真也元世界一ソムリエが取り上げていたので気になって訪問してみました。
予約をしての訪問でしたが、こんなに繁盛しているとは思わなかった。2階も含めて店内は早い時刻(18時台)で満席になります。フリで飛び込んで断られる客が何組もある、全面喫煙可の人気居酒屋です。

メニューはオデン以外が豊富。烏賊や鮪など居酒屋定番の刺身の他、カワハギやアイナメ、そしてブリなど富山港の魚も揃っています。いずれも2000円前後と居酒屋としては高めですが、価格を考えたらまずまずか。ただしカワハギは変に脂臭かったのが残念でした。馬刺しの盛り合わせ(3000円弱)、富山のブリもこの価格帯の店では文句を言えるものではありません。旨いかどうかは別ですが、サロマ湖の焼きガキは14ヶ以上(小さいけど)あって1700円では一食の価値あり。ただし、ウリの牛スジ(750円)は期待はずれでありました。煮込みを想像しましたが、串刺しで味噌を塗っているタイプ。温くてショッパイだけで私の好みではありません。

この辺でオデンへスイッチしましたが、透明な出汁は塩味が強すぎえ昆布や鰹の深みを感じない。出汁がイマイチだから、肝心のオデンも美味しいとは思えないのです。大根、蒟蒻、半片といった定番ネタはまったく出汁がしみ込んでおらずダメ。豆腐も出汁の上にただ乗っかっているだけのような味わいでありました。
人気のトマトオデンは別皿で提供されます。加熱されたトマトの甘みが塩味と調和しておりこれは面白い。この塩味出汁に唯一合うオデンタネではないでしょうか。煮込みが緩いジャガイモ、つみれ、ロールキャベツなども食しての結論は、オデンだけで集客するには無理がある店。刺身はじめ居酒屋メニューが豊富な訳がわかりました。

出汁には昆布、カツオ、鶏ガラが入っていると店側は言っていましたが、私には塩のインパクトが強すぎて出汁の深みを感じなかった「銀座 力」。「やす幸」系だけではなく、色濃い江戸風オデン「お多幸」よりも出汁はイマイチと思いますが、オデンも出す高額居酒屋として喫煙者にはお勧めです。

箱に問題があるが料理には満足、ルカンケ

昨年秋、西麻布の「ビストロ ド ラ シテ」のランチを久々に食べて気になったことがありました。メニューが少なくなり味も緩くなったのではないか。好きなブーダンノワールやシュークルートを食べての食後感に、PCで検索して初夏にシェフが交替したのを知ったのです。その辞めた古屋元シェフが白金に出したビストロこのが「ルカンケ」であります。
プラチナ通りから路地を入った3階建ての一軒家。1階はオープンキッチンとテーブル2卓、2階は4卓、そして3階は個室なのですが使い勝手が良くない。この時代にバリアフリーに真っ向逆らっていて階段を上がらないと店へ入れないし、床面積が小さいからかトイレが1階にない。2階で食べていて、1階の客が階段を上がってトイレに入る様を見るのは興ざめでありました。

しかし料理は値付け、味とも悪くありません。7500円のお任せコースもありますがアラカルト中心で前菜は1000円台前半、メインは2000円前後が中心です。牛料理や山鳩などジビエは3500円前後でありましたが、所属していた「ドラシテ」より安い値付け。しかもこちらは夜でもタプナードとリエットがタダで提供されます。2回の訪問で出した友里の結論は、「箱に目を瞑ってでもリピートしたいビストロ」でありました。

牡蠣カリフラワームースとコンソメジュレ(1ヶ500円)は良く見るものでまずまず。ブーダンノワール(1400円)はパートブリックを巻いて揚げてあり濃厚で美味しい。ストウブの鍋で出てくるシュークルート(2000円)にはソーセージ、バラ肉などのエキスも濃厚。連れはブフテック(3400円)やテールの赤ワイン煮(3400)も美味しいと完食しておりまして、他の料理が気になって時をおかず再訪したのは言うまでもありません。
エスカルゴ(6ヶで1400円)は価格なりでしたが、初めて飲んだ蝦夷鹿のコンソメ、濃厚で美味しかった。フォアグラやミンチ、腿肉をサンドしてパートフィローを巻いて揚げた山鳩、ボリュームもありビストロとしては高いけど面白かった。

1万円以下のワインが充実しておらず箱と共に問題点はありますが、好きなビストロで再訪したい店が増えたのは友里にとっても嬉しいことであります。