ハッピー バースデーの合唱がうるさすぎる、ロウリーズ

オープン当時は狂牛病の問題で閑古鳥だった赤坂の「ロウリーズ プライムリブ東京」。久々に電話をかけると、混んでいると19時30分の指定を受けました。10分前に到着するとレセプションは既に客でごった返しています。凄い人気だと再認識したのですが、何のことはない、19時30分まで客を通していないだけでした。30分毎に入場させて、この盛況感を演出する戦略には脱帽です。そうは言ってもホールは満席でテーブル間が狭く人の行き来も厳しく圧迫感がありました。
まずはツマミと頼んだシュリンプカクテル(1200円)は臭みがあったが旨みなし。クラムチャウダー(800円)もアサリの滋味がでていない。プライムリブについてくるスピニングサラダ、私と同年代の方はプロレス技を連想するネーミングですが、クラッシュアイスの上でボウルを回してドレッシングを混ぜ合わせるパフォーマンスなだけです。フォークは冷やしていましたが、肝心のロメインレタスが冷えていないのには笑いました。
ドレッシングは濃く甘すぎなのに、更に味付きペッパーをかけることを勧められました。古きアメリカ嗜好(大味好き)が残っている店なんですね。
さて肝心のプライムリブ、カットによって腹具合の調節が出来ます。140gの東京カット(3800円)から520g(8000円)まで5段階。テーブル近くでコックコートを着た男性がカットして皿に盛りつけてくれるのですが、この外人スタッフ、袖口がダブダブで切るたびに肉に袖口が接触していました。衛生的ではありません。肝心の味は、ただの柔らかいだけのローストビーフ。まったく肉の旨みを感じません。不必要な脂分が多いからか、量の割にお腹だけは一杯になるのが救いであります。
食事中、間断なくホールの至る所でスタッフが集まってハッピー バースデーの合唱が鳴り響いています。なぜこんなに誕生日の人が多いんだ?答えは帰りがけにもらったカードでわかりました。誕生日ではありません、誕生月にこのカードを持参すると、全員にグラスシャンパン、当人にケーキがプレゼントされるとか。しかし、誕生月と言っても誕生日以外の日で歌われて嬉しいものなんでしょうか。この肉、この雰囲気、このサービス、私なら誕生月でも再訪しない店であります。

ウリの鯛茶漬けは好みが別れるがCPは悪くない、山路

黒胡麻の鯛茶漬けとスッポンの出汁で評判の「ぎんざ 山路」。昭和通り外側、小さなビルの地下、と立地は良くありません。マスコミ露出も少なく、ネットのレビューも少ないことから、常連主体の店であると考えます。しかし年末から一見客が増えるのではないでしょうか。複数の情報源から漏れ聞いたところ、来年度版ミシュランガイドへの掲載許可の問い合わせがあったとか。正確には料理や店内の「写真提供依頼」か、カメラマン派遣による「写真撮影依頼」を受けたということでしょう。調査期間が短く多くの店を評価できないので、1冊の本として体裁を整える為、写真を沢山掲載してページ稼ぎをしなければならないミシュラン。ほとんどの店にとってミシュランの接触は目出度い事ですから、つい他人に漏らしてしまい、事前に掲載が漏れ伝わる
結果となりました。友里の暴露でも掲載を見合わせない大人の対応をミシュランに期待します。
店内は8席のカウンターにテーブル1卓、そして掘りごたつ式の小上がりの小さな店。訪問するなら少人数でのカウンターをオススメします。小上がりは狭くてスタッフが上がれず、料理はバケツリレーのように客同士の手渡しとなるからです。
久々に訪問した初夏、お任せ1本のコースは以下の通りでありました。
まずは鱧そうめん。やや濃い目の味付けがこの店の特徴ですがまずまず。梅味の茶碗蒸しも悪くありません。タコの煮物は鮨屋の桜煮とは違いますが美味しい物でした。お椀はこの時期の定番の鱧とジュンサイ。出汁はバランスよく○。鯛茶がウリですが、造りの鯛には疑問を持ち、赤貝、鱧の落としは普通でありました。続く鮎の塩焼き、トラハゼ、鱧寿司にも傑出したものを感じませんでしたが、賀茂茄子の炊き合わせと鯛のアラの蒸し物は良かった。〆のご飯は鯛茶と丸雑炊が選択できましたが、個人的には丸雑炊がオススメです。お茶をかける黒胡麻の鯛茶、普通の鯛茶に慣れている私には物足りなく感じます。反面この店のスッポンの出汁は「重よし」よりかなり上。雑炊は誰でも満足されると考えます。出汁を使った料理をメインに楽しめる「ぎんざ 山路」、お酒を飲んで2万円台前半とCPも悪くはありません。小さな店ですから、ミシュランに掲載される前に一度は訪問しても良いでしょう。

あの店は今・・・、みかわ茅場町本店

ミシュラン不掲載で人気が落ちたのか、週末でも予約が簡単に入りました。カウンターから補助椅子をなくしていましたから、詰め込むほど客が来ていないのでしょう。入店時、小上がりは誰もおらずカウンターも2席が空いておりました。「近藤」が昼夜入れ替え制で2回転ですからえらい違いです。
まずは刺身の盛り合わせをオーダー。赤貝、アオリイカ、小柱、メジ鮪、海老とアイテムは豊富でしたが質はそれなり。勿論メジも美味しくなかった。入店して30分、早乙女氏が鍋の油を移し換えたのにはビックリ。ここは超満席で2回転させていた時代でも油の全交換をしていなかったからです。しかし驚きは直ぐに安堵となりました。何のことはない、油を足下で濾過しただけで再び鍋に戻してきたからです。それより驚いたのが次の行動。カウンター内から姿を消した早乙女氏、何とトイレに駆け込んだのです。オープンして1時間余りのこの時刻、狭い店ですからオープン前に準備をしていただきたいものです。一気に食欲が落ちました。
天麩羅に移ってからも驚きは続きました。単に焦げが強いだけの天麩羅と評していたのですが、その「焦げっぽさ」がなくなっております。巷の天麩羅屋と比して特徴がなくなっているのです。
1万2000円の「お任せ」で、海老はわずか2尾。この値付けでは3尾以上だすべきです。アオリイカ、稚鮎が凡庸なのはまだ許せるとして、キス、ぎんぽう、メゴチといった江戸前タネの天麩羅も何ら印象に残りません。旨みを感じないのです。揚げ技術だけではなく質も拘りがないのでしょう。茄子、アスパラ、椎茸といった野菜も特徴がなく、天麩羅コースの後半の華、穴子も薄く小さく勿論旨みもない。小柱天丼もまったく凡庸。そうなんです。良くも悪くも特徴があった早乙女天麩羅がそこらの街場の天麩羅と同じになっているのに驚いたのです。ミシュラン不掲載でモチベーションが下がってしまったのか。水切りの悪い大根オロシで天つゆはすぐ水っぽくなりますし、レモンは用意されず塩だけ。帰った客の網を取り替えず布巾で拭いただけで再利用と、とても客単価が1万円以上の高額天麩羅屋とは思えない「みかわ」。タネ質、揚げ技術、サービスと傑出していないだけに、来年度版も星獲得は無理と考えます。