移転で主人が丸くなった、よこ田

昔から麻布十番では有名だった天麩羅店。主人は「天一」の出身と推測するのは、塩や天つゆ、レモンだけではなく、カレー粉も用意しているからであります。
かなり前に訪問した時、主人が箸を突っ込んできて「このカレー粉で食べろ」と高飛車に指示してきたのに辟易。天麩羅自体も傑出さを感じなかったこともあり、以後は寄りつくことを控えておりました。

今年になって好きだった「楽亭」のクオリティ劣化を仕方なく受け止めた友里、替わりとなる天麩羅屋を開拓するため都内の有名店を再度訪問することになりまして、昨秋久々に再訪したのです。

知人からの情報では、息子さんも揚げ手として働いているとのことでしたが、我々の訪問時は1回転目で客が少なかったからか、主人のアシストに専念しておりました。
しかし天麩羅をどうこう評価する前に、この2回転営業を改めてもらいたいと思うのは友里だけでしょうか。

開始時刻は17時半と20時限定と使い勝手が悪い。お任せコースしかなく1時間半で終わるとのことで、1回転目は18時入店でも良いそうですが、それでも会社帰りには厳しい時刻指定であります。1回転目の客が少なので時刻制限などやめてしまえばと思うのですが、営業的にはうま味があるのでしょうか。

1万円1本のコースは海老が2尾だけ、メゴチやキス、ハゼ、ホタテも小振りや薄身でネタ質は最上に感じません。掻き揚げ(天丼や天茶)までのタネ数は14種ほどで半分は野菜系でしたから、総量的には少なく感じました。
病み上がりだったのでビールや冷酒の飲料が少なかったこともあり、支払いは一人1万数千円と他の高額天麩羅屋に比べて安くあがりましたが、普通の食欲の男性なら追加を頼まなければ物足りない量だったかもしれません。
同じ時間制でも「近藤」と違って予約を入れやすいのが取り柄でありますが、食べログで最高評価の天麩羅であるとは思えませんでした。

ただし店の雰囲気はかなり改善されています。主人も丸くなり、「レモンに塩を2サジ入れろ」との提案はありましたが、以前のような緊張感は消滅しており、どちらかというと好々爺のイメージ。食べログの高評価は天麩羅でなく主人の接客の変化が大きなアシストになったのかもしれません。

店内は閑古鳥だけ、ポンドール・イノ

「再開発ビルの店に美味いものなし」は友里征耶デビュー時からの定説でありますが、これを転じて「再開発ビルの店に繁盛店なし」も今や常識といっても良いでしょう。

古くはアークヒルズから六本木ヒルズ、交詢ビルや東京ミッドタウンまで、高額店で繁盛している店は皆無と言っても過言ではありません。
外食になぜゴチャゴチャした再開発ビルへ行かなければならないのかという必然性の問題。そして地代の高さや営業時間の制約からコストが押し上げられ、その結果客のCP感が劣化して客が寄りつかないのは今までの歴史が証明しております。

ところが天下のシェ・イノも自信過剰で何を血迷ってしまったのでしょうか。日本橋の再開発ビル(YUITO)に支店を今秋出してしまったのです。しかも止せばいいのに、フレンチを提供するホールの他、鉄板焼きコーナーまで併設してしまった。
「月刊めしとも」編集部から、フレンチでは面白みに欠けるのでその鉄板焼きへ突入せよとの指令を受け訪問したのはオープン一ヶ月後でありました。

週半ばとは言えビル全体が寂しすぎる。飲食店フロアに人影がないのは交詢ビルと同じ。なんと3階の「XEX」にはシミュレーションゴルフまで設置していますから、このビルのコンセプトは目茶苦茶であります。

入り口がビル裏手になるこのポンドール・イノも他店と同じく店内は閑古鳥一色。
フレンチのホールはわずか数組、お目当ての鉄板コーナーも貸し切り状態でありました。そして2万1000円コース一本の内容はプアの一言。

わずかな鮭児(キャビア乗せ)とタンの味噌漬けの後の鉄板料理は、淡路のタマネギや万願寺唐辛子など野菜がわずか4種しか出ず、すぐメインの肉(ロースかヒレ)になってしまったのです。あとはガーリックライスか欧風カレーでコースは〆。
きょうびホテルの鉄板焼きでも2万円出せば、和牛の他にフォアグラと、鮑か伊勢エビが出てくるはず。今回はおまけで尾崎牛のロースがちょっと出ましたが、あまりのCPの悪さに声も出なかった。客が来ないのは当たり前であります。

デート、接待、家族連れ、自腹といずれにもまったく向いていない、高いだけの鉄板焼店。わずか1時間で終わってしまう内容ですから同伴カップルだけには向いていると考えます。

追加の値付けが不明瞭だ、てんぷら 真

銀座に来る度に気になっていた天麩羅店。オープンして1年は経っているのではないでしょうか。
昼時の急な来客を食事へ連れていこうと考えたとき、まず空いているだろうと電話で空席を確認してから訪問したのが昨年の秋のこと。見栄を張るために頼んだのは一番高い8000円のコースで、食べたタネを詳細に記憶しておりませんが、追加に松茸を頼んだからといって、適度なお酒で一人1万5000円を超える請求に私は腰を抜かしたのです。有名店の夜に匹敵する請求額ではないですか。
追加の天麩羅の加算が不明瞭な店だと、友里の検証精神に火が付いたのはいうまでもありません。日を置かずして夜に再訪したのは11月のことでした。

どのコースにしようか迷ったのですが、セイコ蟹がでるという一番高い1万7000円コースをオーダーしました。驚いたのが天麩羅鍋の熱源。なんとIHではありませんか。
高額天麩羅店でガス以外の熱源を見たのは記憶にありません。何でも出身店(オークラの山里)がIHなので、これしか対応できないとのこと。食べる前に一気に萎えた瞬間です。

突き出しの後、海老(2尾)からセイコ蟹含め〆の掻き揚げ(私は天丼をチョイス)までの天麩羅は13種ほど。部位は小さめで、太白油と大豆油のブレンドで揚げているという天麩羅は、まったく傑出したものを感じません。
ハゼは旨みなく、床節&キャビアの取り合わせにも疑問。セイコ蟹も小さい甲羅毎揚げてきましたが、私にはこの食材にあう調理法だとは思えなかった。衣の薄かった蓮根と、蕪&唐墨がまずまず満足した程度でありました。

さてここからが検証です。連れはここでストップさせ、食べ足りない私は、キス、烏賊、丸十、万願寺唐辛子、海老真丈入り椎茸を追加でオーダー。どれも可もなく不可もなかったのですが、またまた請求額を見てブッたまげたのであります。
600円のビールに1300円ほどの冷酒を数本、そして1/4瓶のシャンパン(3500円)を頼んだとは言え、天麩羅の追加は私だけなのに2名で5万円台半ばになっていたからであります。なんで飲み物と追加(私だけ)で2万円アップになってしまうのか。だいたいコースに烏賊とキスを入れない高額店があるのか。友里の三度目の訪問はあり得ません。