店内は閑古鳥だけ、ポンドール・イノ

「再開発ビルの店に美味いものなし」は友里征耶デビュー時からの定説でありますが、これを転じて「再開発ビルの店に繁盛店なし」も今や常識といっても良いでしょう。

古くはアークヒルズから六本木ヒルズ、交詢ビルや東京ミッドタウンまで、高額店で繁盛している店は皆無と言っても過言ではありません。
外食になぜゴチャゴチャした再開発ビルへ行かなければならないのかという必然性の問題。そして地代の高さや営業時間の制約からコストが押し上げられ、その結果客のCP感が劣化して客が寄りつかないのは今までの歴史が証明しております。

ところが天下のシェ・イノも自信過剰で何を血迷ってしまったのでしょうか。日本橋の再開発ビル(YUITO)に支店を今秋出してしまったのです。しかも止せばいいのに、フレンチを提供するホールの他、鉄板焼きコーナーまで併設してしまった。
「月刊めしとも」編集部から、フレンチでは面白みに欠けるのでその鉄板焼きへ突入せよとの指令を受け訪問したのはオープン一ヶ月後でありました。

週半ばとは言えビル全体が寂しすぎる。飲食店フロアに人影がないのは交詢ビルと同じ。なんと3階の「XEX」にはシミュレーションゴルフまで設置していますから、このビルのコンセプトは目茶苦茶であります。

入り口がビル裏手になるこのポンドール・イノも他店と同じく店内は閑古鳥一色。
フレンチのホールはわずか数組、お目当ての鉄板コーナーも貸し切り状態でありました。そして2万1000円コース一本の内容はプアの一言。

わずかな鮭児(キャビア乗せ)とタンの味噌漬けの後の鉄板料理は、淡路のタマネギや万願寺唐辛子など野菜がわずか4種しか出ず、すぐメインの肉(ロースかヒレ)になってしまったのです。あとはガーリックライスか欧風カレーでコースは〆。
きょうびホテルの鉄板焼きでも2万円出せば、和牛の他にフォアグラと、鮑か伊勢エビが出てくるはず。今回はおまけで尾崎牛のロースがちょっと出ましたが、あまりのCPの悪さに声も出なかった。客が来ないのは当たり前であります。

デート、接待、家族連れ、自腹といずれにもまったく向いていない、高いだけの鉄板焼店。わずか1時間で終わってしまう内容ですから同伴カップルだけには向いていると考えます。