あの熱狂的な騒動はどこへ行ってしまったのか。ミシュランガイドが日本上陸を果たした時、TVや新聞の取り上げ方は尋常ではありませんでした。
ところが時が経つにつれて批判者が続出して権威は地に落ちて販売数は激減の一途となりました。
そこで凋落著しいミシュランがとった対策は掲載店の乱発。腐っても鯛ではないですが、掲載すればその店の関係者や親戚縁者、少ないとはいえ常連客も買うだろうとの安直な発想。対象地域を広げていって最新版でついにレストラン不毛の地、奈良に進出してしまいました。
和食や寿司に限らず、高額店での経験少ない調査員が無理に探し出した(造りあげた)3つ星店がこの「和やまむら」、関西の食べ仲間と昨年末の訪問です。
まずは関西の方から聞いた奈良県の飲食店の立ち位置を説明しましょう。奈良在住の方の食事開始時刻はとても早いのだとか。足の便が悪いこともあるでしょうが、スナックと違い食事をするところは20時過ぎには客が引いていくとのこと。
当日は連れの都合で19時半の予約で店内は満席ながら帰り支度の客もちらほらしておりました。21時前にはカウンター客はゼロと、それは寂しい店内となってしまったのであります。
コースは8000円からありますが、月に何回も出ないという最高値の1万2000円コースのはじまりです。
鮑と玉子豆腐は味濃いジュレでまるで居酒屋料理。お椀は渡り蟹の真丈でしたが、大阪割烹より味濃い吸い地でした。
造りのヒラメとオコゼの質も凡庸で、甘エビ、アオリイカ、中トロも東京では高額居酒屋以下のレベルではないか。7種ほどあった八寸もどうってことなく、甘鯛の幽庵焼きや海老芋の揚げ出しもただ濃い味だけでありました。
蕪蒸し(銀杏、車エビ、百合根入り)も京都の観光スポットレベルの一品。最後は湯葉ご飯で〆となったのですが、使用食材、質、そして調理と3つ星どころか京都では1つ星にも値しないレベルとわかったのであります。
この店があっさり3つ星なら、何年も2つ星に甘んじて今回やっと3つ星に昇格した「龍吟」の主人の努力は何だったのでしょうか。
主人や女将の人柄が良さそうに見えただけに、この程度の実力の店に無理矢理スポットを当ててしまったミシュランの罪は非常に重いと友里は考えるのであります。