和食の基本習得を感じとれない創作料理、幻燈士なかだ

月刊ゲーテがゲーテ・レストラン大賞を与えて大絶賛した曰く天才料理人の和食店。
業界人にもウケがよく、あの小山薫堂さんも大絶賛しておりました。松濤で期間限定(千夜一夜)営業していた「竹慈庵なかだ」の移転再オープン店であります。

富山出身でフレンチの料理人だったという経歴に釣られて松濤の店を訪問した友里、当時は評価が甘かったのかその奇を衒う料理を珍しく感じ、悪い印象を持たなかったのであります。有栖川公園近くの寂しいビル地下に再オープンと聞いて、今年になって食べ仲間と訪問することが出来ました。

人気のないビル地下でありましたが店内は意外に明るい。カウンターは余裕の8席に個室まであります。2万1000円1本のコース、松濤での印象を吹き飛ばしてくれるそれは創作しすぎ、いじりすぎの料理で我々は唖然となったのであります。

まずは高麗人参のブランマンジェ。黒酢と赤ワインのソースがかかっていますが高麗人参の味がするだけ。甘すぎる玉子焼きに乗っていたキャビアやパルメザンに揚げくるまれた唐墨は、質がよいならそのまま食べた方が美味しいはず。
トリュフ餅なるものは古代米の中にトリュフペーストが入っております。人工的なトリュフ香が強くしかも甘い。
驚いたのは「野菜あれこれ」と題する料理。甘鯛昆布〆や椎茸コロッケは別にして、イチゴソースがかかった赤貝はノーセンスの完全なミスマッチではないか。

小山さんが幻の一皿と絶賛していた「フォアグラのプラチナ漬け」は以前よりかなり濃厚に仕上げており、まさに業界人など味音痴の大味好きにドンピシャリ。食べきることが出来ない連れが2名もでて大変でした。
旨みのないトラフグの後の尾崎牛、なんと海老芋とブルーチーズのソースという信じられない取り合わせに再度腰を抜かしたのであります。

蓮ご飯にカレーうどん、そしてお茶漬けとアイテムだけは多かったけどワインなどを飲んでの支払いが一人3万円代半ば。お腹一杯になればまだ救われますが、その後滅多に食べないラーメンが恋しくなり、「五行」へ仲間と行ってしまったことから、如何に味&量に満足できなかったかがおわかりいただけると思います。

でもこんなに辛口批評してしまってよいのでしょうか。絶賛した幻冬舎の仕事オファーが今後も一切来ないだろうと気の小さな友里は後悔しております。