箱だけで中身(ふぐ)は期待外れ、ふく源

2月14日付本コラムに取り上げた六本木のフグ屋「味満ん」。キャッチで「質、支払額とも東京最高の店ではなくなった」としたのですが、読者から「味満んより高いフグ屋が存在するぞ」との指摘に、友里は今シーズン最後のフグ屋にこの店を選んだのであります。
場所は九段下で掘りごたつ式の個室で料亭形式、との情報に相当額の支払いを覚悟しての訪問でありました。

部屋に案内されて着席した直後、素早く先付けが運ばれてきたのには驚きました。そして続けざまにこの店のウリである孔雀盛りのフグ刺しも登場してしまったのであります。
18時半の予約だったのですが、間違って18時に到着してしまった友里一行。なんと刺身は予約時刻30分以上前に引き終えスタンバイしていた「造り置き」であったのです。

先付けの煮凝りは味濃すぎで固くて×。唐墨大根、豆腐よう、フグ炙り、菜の花とアイテム多かったけどいずれも凡庸。
そしてこの店の大将しか出来ないと聞いた30分以上前に造り置いた孔雀盛りフグ刺し。二人前にしては量が多すぎて嫌な予感がしたのですが、予想通り何の旨みも滋味も感じない代物であったのです。
これならまだ「味満ん」フグ刺しの方がマシではないか。滋味がないどころか乾きも気になりまして、過大評価フグ店「めうが」以来、友里が高額フグ店でフグ刺しを食べ残した人生2軒目の店となったのであります。

続いてフグ屋には必然性がない茶碗蒸し。鶏肉入りでしたが出汁が家庭レベル。白子焼きもこの時期にしては小さく皮薄くイマイチ。反してデカ過ぎる自称唐揚げは、天ぷら粉を使用していて色薄くまるで天麩羅。勿論これまた食べきれなかった。

部屋の片隅で仲居さんが造るちり、フグ質がイマイチだから当然味が出ていない。そして1杯目を食べ終わる頃、仲居さんが信じられない行動にでてきたのです。
なんと白味噌を鍋に溶かしだすではありませんか。出汁が出ないフグを助けるための味噌添加でありまして、当然〆の雑炊も味噌仕立て。勿論フグの味はせずポン酢をかけて完食したのであります。

最後のイチゴとメロンも甘みなくイマイチ。ひれ酒も色は出ているけど味薄くしかもぬる過ぎ。すべてにダメ出しの高額フグ店でありましたが、支払いが一人5万数千円と予想外に安く終わったのが唯一の救いでありました。友里の再訪はあり得ない高額フグ屋であります。

 

大阪のカレー好きに食べさせたいスパイスカレー、京橋屋カレー

3月29日付け本コラムで取り上げた大阪のカレー店「宝石」。現在閉店中ですが、スパイス系カレーとの評判とは違ってまったくスパイスの特徴を感じ取れず大阪のスパイスレベルに落胆していた友里が、東京ウォーカー別冊に釣られて訪問したのがこの東京は京橋にあるその名もずばり「京橋屋カレー」であります。

カウンター3席にテーブルは10席くらいでしょうか。男女2名で切り盛りしており、一皿一皿スパイスなどを添加して調理しているので、注文してから出てくるまで15分はかかってしまいますから、チョイ食べの人には向いていないカレーであります。
辛口伊達鶏、ときえ、じゃが、キーマとカレーは4種。キーマ(1300円)を除いてあとは1150円、人気のツイン(2種選べる)は1400円と、カレー店の中では高い値付けであります。

まずはオススメということでキーマと伊達鶏を選択した友里、大阪カレーと違ってスパイスの主張を充分に感じ取ったのであります。
伊達鶏カレーは結構辛い。カイエンペッパーをかなり投入しているようです。キーマは逆にトマトジュースを入れているとのことで辛くはないのですが、カルダモンなど特徴的なスパイスを大いに感じたのであります。いずれもあまり食べたことがない印象的な味のカレーでありまして、翌日昼にまた再訪してしまいました。

今回は「ときえ」と「じゃが」のツインを選択。ときえカレーは、近江鶏、キャベツ、海老を使ったハーブカレー。辛くはないとのことでしたが妙に刺激的な味わいで癖になりそう。じゃがカレーはジャガイモが半個に青唐辛子も入っています。調理の最後にマスタードオイルを掛けるので、4種の中では一番辛いものでありました。

4種とも創作カレーと言ってしまえばそれまでですが、特徴があって癖になるお味。アルコールはビールしかなく、昼しか営業していないのでゆっくりワインを飲みながら食べることは出来ませんが、私は行列造ってまでスパイスを感じないカレー屋に並ぶ大阪人に訴えたい。
江戸前鮨、まともなフレンチやイタリアン、そして天麩羅に加えてスパイス系カレーも東京が遙か上。関西のこれらジャンルの「なんちゃって」には目もくれず、上京の折にぜひ試していただきたいと考えます。

ブログで取り上げた直後に休業とはビックリ、宝石

出張で大阪に滞在していた時、昼時に「どこか面白いところはないか」と関西の食べ仲間に尋ねたところ、最近ブレイクした行列の出来るカレー屋はどうかとの提案。ホテルから徒歩圏内とのことでしたのでこの「宝石」訪問を即決したのであります。

さて行列はどのくらいかと暗いビル内廊下を見たら、10人以上も並んでいるではないですか。人のこと言えませんが、平日の昼になんと暇な人が多いのか。中にはスーツケースを持った女性もいましたから驚きでありました。

 小キャパと聞いていたので2回転目に回されるかと心配だったのですが、15人定員中14番目で何とか入店できたのであります。寸胴から小鍋にカレーベースを移してスパイスなどを添加するのですが、これを一度に3人前しかつくらないマダム。かくして14番目の友里がカレーにありつけたのは入店して50分後でありました。

食べログのレビューでは「スパイスカレー」とありましたが、店内でのスパイスの香りは乏しい。隣客に出されたカレーの色を見ても、家庭カレーに似たような茶色系。おいおい、これが大阪のスパイスカレーなのかと期待はしぼんでしまったのです。

ようやく食べられたカレー、やや辛ではありますがスパイスを特別感じるものではない。敢えて感じるとしたら塩味でありました。
テーブルに置いてあった注釈には「砂糖、蜂蜜、小麦粉、果物、旨み調味料などは入れていません。大量の材料からとったラーメンのような濃厚な出汁で、味付けは塩だけ。(要約)」とありましが、ただのポーションある家庭料理の延長線上のカレーであるとしか思えなかった。

カレーは日替わりで1種のみ。この日はポークカレー(850円)でしたが、他にはチキン(850円)、ラムキーマ(900円)があるようです。
ご飯を小盛りにしても東京の大盛りくらいか。ポーク1種しか食べておりませんが、単なる「過大評価カレー店」と直後のブログで簡単に取り上げたところ、10日も経たずに「しばし休業」とのマダムのツイートを知り、なにやら複雑な気持ちとなったのであります。

江戸前鮨、まともなフレンチ、郷土色あるイタリアン、そしてスパイスカレーを関西に求めるのは酷とあらためて知った関西出張でありました。