アイアンシェフに負けても満席だった、ケ・パッキア

雑誌「dancyu」のパスタ特集に大きく取り上げられていた麻布十番のトラットリア。芸人のキム兄に風貌が似たシェフの写真を見て興味を持った友里、最近はフレンチやイタリアンでは高額店よりビストロやトラットリアにシフト気味であることもあり、身内を連れて飛び込みこんだのは9月の下旬でありました。

週末ではないのにほぼ満席。かろうじて残席に座れた我々は、黒板メニューからオススメ料理を頼んだのであります。

ウイキョウを主体にしたサラダは好き嫌いが分かれそうですがまずまず。
鯖のロシア風はツナマヨ味で薫香もつけており一般ウケする料理でボリュームたっぷり。レモンが強すぎたツブ貝ガーリックも量だけはありました。

ここで肝心のパスタに選んだのが、スペシャリテらしい蝦夷鹿ミートボールのスパゲッティ。要はハーブ味の肉団子で甘辛なのですが悪くはなかった。
続いたシラスのアラビアータは茹ですぎで、ウリの鶉の唐揚げも香辛料が強すぎと、ちょっとはずれた感もあって、8千円のワイン入れた会計が2万超えと結構な支払額に驚いたのであります。

安くはないけど典型的なトラットリア味と判断したのですが、なんとあのベットラの落合さん推薦で、アイアンシェフのノミニー(挑戦者)として出演すると漏れ聞いて、放映日の翌日に今度は予約を入れて再訪したのであります。

残念ながらアイアンシェフ(フレンチの須賀シェフ)との戦いは審議員全員がノミニーの敗北というキム兄の惨敗。
料理数が3皿と少なく盛りつけもパッとせずと、審議員の採点を待たず誰もが敗退を確信したほどその料理の出来映えの差は大きかった。
あまりの実力差に放映翌日は客離れ現象が起こっていると予想した友里、週末土曜も後押ししたのか店内は超満席を見てその人気にあらためて驚いたのであります。

聞けば「ピアット スズキ」(麻布十番)出身の岡村シェフ、実態は雇われの身で真のオーナーは鈴木氏だとか。
ヴィノ・ヒラタの流れを汲むだけに濃い味ながらもここでは郷土色を求めてはいけない。あの落合さんが自信を持ってイタリアン業界から刺客第一号として送り込んだ理由がわかったのであります。落合さん自身も郷土色を出さない(出せない?)からであります。

今回も8千円前後のワインを頼んだとはいえ前菜3皿、パスタ2皿にメイン1皿での支払いが2万円台半ば。
トラットリアの雰囲気(大箱で簡素)ながら結構な支払額になる、郷土色ないボリュームだけはあるイタリアン。ご近所の方は話のタネにかろうじて訪問可であると考えます。

 

 

この調理じゃ松輪港の名が泣くぞ、京ばし 松輪

あれはホテル西洋銀座内の鮨屋「真魚」へ行く途中でしたか。11時半過ぎだというのに20人近い行列を発見したのです。すぐさま何の行列かと確認したところ、「松輪」という看板の店の前に並んで居るではないですか。
早速リサーチしてどうやら鯖で有名な松輪港直送の和食屋で、TVなどで紹介されたアジフライ定食(平均70食限定)狙いの行列であることがわかたのであります。

昼になかなか行列できない友里、夜も人気と聞きまして、松輪の鯖が入る最高値コース(1万円)を事前予約して早速訪問したのは11月はじめでありました。

すべてが松輪港か三浦半島からの直行だという「京ばし 松輪」の魚料理、結論から先に言わせていただくと、調理は単なる味濃い居酒屋レベルで肝心の魚自体も質良くない。
限りなく養殖に近い食後感であったのです。

まずは生しらすの沖漬けやアンキモなどのどうってことない味濃いだけの先付けでスタート。期待が落胆へと一気に転換した瞬間です。

造りは量だけは立派。焼き霜造りの真鯛や石鯛、マハタ、ヨコワ、シマアジ、サワラ、鰹、赤カマス、ミル貝、タコとアイテム豊富ながら、どれ一つとして感心するものなし。
産地直送だかなんだか知りませんが、これなら築地経由の鮨屋の刺身の方がはるかに美味いではないか。

しかも添えられた山葵、添加物がてんこ盛りの「混ぜ山葵」なんですね。あまりのMSGの多さに閉口。
山葵なしでは質悪すぎて食べられず、さりとてこの山葵では気持ち悪くて食べにくい。ホント、食べきるのに一苦労したのであります。
ウリの松輪鯖もまったく美味しくなかったことを付け加えさせていただきます。

次に出た鯖の塩焼きも肝心のうまみに乏しかったけど、次の一品伊勢エビの登場には友里、驚いて掘りごたつから転げ落ちそうに(なるはずない)なったのであります。
最高値コースを頼んだから、品数稼ぎで一見豪華に見えるこの食材をだしたのでしょうが、当然ながら美味しくなかった。黒ムツの煮付けも居酒屋レベルでもう1つのウリ、アジフライも混ぜ山葵乗せでダメ出し。
〆の鯖鮨も美味しくなかった。
酒類の値付けが安いのが唯一の救いで、シャンパン(6900円)飲んでの支払いが2名で3万円前後で終わったのです。

そこで翌週、昼のアジフライ定食(1200円)にチャレンジ。案の定昼も混ぜ山葵は健在でありまして、揚げすぎと質がイマイチなのかアジの味が薄すぎ。
づけ(プラス300円)は逆にづけ汁が多すぎで濃い味で閉口と、この料理のどこに人気があるのかさっぱりわからず店を後にしたのであります。

行列に釣られてはいけないという典型例の店であると考えます。

 

ビストロというより鉄板創作料理店、オー ギャマン ド トキオ

食べ仲間から、上司がワケあり相手と足繁く通う、白金の人気お忍びフレンチと聞いた友里。「お忍び」と「訳あり」という単語に反応して、すぐさま飛び込んだのは今春のことでありました。

場所はあの過大人気の焼き肉店「金竜山」のすぐ近く。こじゃれた外観が逆に周囲の雰囲気からかなり浮き上がっておりました。地下はこれまた意味深カップル御用達の「ハナレ」とかいう系列ワインバー。
業界人や遊び人はこの手の雰囲気の店がお好きなようです。

さてこの店はビストロだと思っていた友里、カウンター席に座ってオープンキッチンを見て驚いたのであります。
なんと厨房は鉄板が主体。炭火台もありましたが、メニューを見る限り鉄板創作料理というか、鉄板居酒屋であることが見て取れたのです。
しかも価格がこの手の店にしては結構高い。冷菜や温菜は各12種ほどもあり1800円から2800円くらいか。メインは7種ほどで2600円から4000円ほどの値付けとなっておりました。

まずはトウモロコシのムース ウニ添え(800円)。最近はどこにでもある一口タイプのアミューズみたいなもので、肝心のウニがイマイチでしたがムースはまずまず。
根セロリと唐墨(1800円)はニンニクオイルでの提供でしたが、ただのセロリと唐墨の寄せ集めで普通味。

穴子と牛蒡(2400円)は鉄板調理でありまして、添えられた玉葱のコンフィが味濃すぎ、甘過ぎでありました。
ポルチーニ カリカリコラーゲン(価格失念)はこの時期フレッシュ物があるはずもなく(CAS冷凍とのこと)、豚耳と共に鉄板でかりかりに焼いて出てきます。脂たっぷりで勿論味も濃すぎ。
そして〆には子羊を選択。量はそこそこありましたが、これまた脂部位が多く味濃い一品であったのです。

ただし利点もありまして、ワインの値付けは安かった。グラシャンが1500円、ノンヴィンシャンパンが8500円からと良心的。白ワイン、赤ワインも6000円超でそこそこのものが飲めるラインナップでありました。

結論的には、ワインの使い勝手が良いだけの味濃い鉄板高額洋風創作料理店。
今回の訪問で友里、お忍び系や意味深系のカップル(男性はもちろんよいお歳)は、濃い味や鉄板調理がお好きだと言うことがはじめてわかりました。
意味深カップルの仲間入りをするには友里、濃い味鉄板料理に耐えらるよう舌を鍛えなければなりません。