アルバでわざわざ行く店ではない、ピアッツァ・ドゥオモ

 最初に。この原稿は2013年度版ミシュランガイドで3つ星と発表される前に書いたものです。
しかし、この時代遅れとも言えるエル・ブジ料理風で3つ星とは、ミシュラン調査員、恐ろしであります。

今回のパリ&アルバ訪問で最高に外してしまったと後悔したアルバ市内のミシュラン2つ星店。過去3年、予約が入らなかったのですが、アメックス経由に変更しての初訪問であります。

事前調査を怠ったことが最大のミスでありまて、前日にナニげに店のHPをはじめてチェックした友里、椅子から転げ落ちそうになったのであります。
な~んとこの店のシェフ、修業歴はルドワイヤン、ミッシェル・ブラなどフレンチの他、あの奇抜さだけがウリだったエル・ブジにトドメは大阪のロイヤルホテルまであるではないですか。

アルバ滞在では地元のピエモンテ料理を食べるのが目的なのに、ピエモンテの「ピ」の字も見当たらない。料理写真をみるとチマチマした小皿創作料理のオンパレード。期待は一気に落胆となってしまったのであります。

当夜にアルバ市内ドゥオモ広場の脇道に面した朱色の壁の外観を見て、友里の危惧は確信となりました。こんな趣味悪い店構えに美味しい料理があるはずがない!しかもインターホンでドアロックを解錠という子供だましの仕掛けにも興ざめでありました。

入口

 

アラカルトもありますが、一番無難と推測した白トリュフコース(120ユーロ但し白トリュフは別料金)を選択。
揚げたスパゲッティに緑や黄色のソースを塗ったアミューズを見て友里一行は観念したのであります。

揚げたスパ

 

続くは梅干し味のマシュマロ。海苔まで乗っておりました。その他の一口アミューズもセサミやチョコ味でイマイチ。
そしてミソ風味の茶碗蒸しもどきが出てきた時は、テーブルをひっくり返したくなった。

味噌茶碗蒸し&梅干マシュマロなど

 

小さなラビオリをピンセットで食べさせられ、キャラメル味のフォアグラ、貝割れ&ツナソースが乗ったスポンジと、友里の忍耐も限界か。

ラビオリとピンセット

貝割れスポンジ

 

金箔と海苔でまぶした川魚でようやく奇想奇天烈なアミューズは終わりとなったのです。

その後はまともな皿が出るかと思えば、塩強すぎのホタテ(白トリュフ掛け)、オガ屑のようなポルチーニがかかったタルタル、鰹出汁のポテトクリーム(ウズラの卵のムース)、チーズ味だけのアニョロッティ(ピエモンテの詰め物)と、よくここまで変な味の調理を出せるかと感心することしきり。
〆の山鶉も白トリュフの力を借りてもまったく美味しくなかったのであります。

「こりゃアカン」、友里の嫌いな創作系でしかも和風味の皿の連続。
まさかアルバで時代遅れのエル・ブジ料理を食べるとは夢にも思わなかった。
他に例えるとしたら、フランス人が京都でフレンチテイストの創作和食を食べるようなもの。今回の旅行で最悪の一夜でありました。

 

 

高くてヌルいけど味は悪くなかった、ハプスブルグ

赤坂にオーストリア料理店があると友里が聞いたのは数年前のこと。でもその「カー・ウント・カー」(赤坂)へ行った食べ仲間の「巷の高評価が理解できない」との感想を聞いて訪問を控えていたのです。
その赤坂店を閉めて銀座に「銀座ハプスブルグ・ファイルヒェン」という難しい店名で再出発。週刊文春で好意的に取り上げていたので、思い切って訪問したのは9月の終わりでありました。

銀座中央通りに面した新しめのビル7階。でもこのビル、他の階のテナントが居酒屋が主体でとても客単価2万円前後の高額店が入るような雰囲気ではないのであります。

この環境がいけなかったのか、この日の客は我々以外に1組と寂しい限り。人のこと言えませんが地方から来た曰くありげなカップルでありました。

まずはグラススパークリング(1500円とまずまずの価格ながらシャンパンではなくしかも気が抜けていた)で乾杯。
我々は最高値の1万5000円コースにワインペアリング(6850円)を選択しました。

メインは変更出来るとのことでウイーンカツレツを頼もうとしたのですがなんと売り切れとのこと。文春で取り上げられたからとの弁解でしたが、その日に仕入れはしなかったのかと驚いたのであります。

まずは岩魚のムースやカボチャのスープなどアミューズが数皿。可もなく不可もないと感じましたが、ネットで評判なので追加した梅山豚の生ハム(1470円)は塩強くなく美味しかった。
続くウズラと鴨フォアグラのソテー、皿が冷え気味なのが難点でしたが、貴腐ワインの風味付きで悪くはなかった。ウイーンスープなるものは彩菜鶏のパイ包み入りでしたが残念ながら牛ベースの旨みを感じ取れませんでした。

スモークサーモンを包んだラビオリにアサリのソース、これまた皿が温かったが味は良かった。ラビオリの皮は固かったんですけど。
そして〆はマンガリッツア豚のグーラッシュ(煮込み)であります。量は多くなく煮込みのツメはやや緩めながら、パプリカ風味(オーストリアはパプリカをよく使うとか)でこれまた悪くない食後感であったのです。

ワインのペアリングは皿ごとにでてきましたが、この手のワインに疎い友里、なんだかさっぱりわかりませんでしたが7000円弱を考えれば、これだけ飲んだら元をとったと感じたのです。

12%のサービス料も効いて支払いは一人当たり3万円超。オーストリア料理にしては高過ぎだと思いますが、皿を熱くして出せとのリクエスト付きならば、話のタネに1回の訪問は可と考えます。

 

2つ星の時の方が良かったかも、ギィ・サヴォア

今回のパリ滞在中のディナーのハイライトがこの3つ星「ギィ・サヴォア」。
90年代からすぐにでも3つ星になると言われながら長く2つ星に甘んじて21世紀にやっと3つ星になった遅咲き店であります。

「性格の悪い料理人の店に上手いものなし」の定説を掲げる友里、唯一の例外として今は湘南の地で釣り人として静かに暮らすと漏れ聞く今は亡き恵比寿の「ル・レストラン・ドゥ・レトワール」のオーナーシェフ・三鴨氏の修業店としてこの店は有名でありまして、15年前の2つ星時代に友里も訪問しておりました。

今回の訪問では、その三鴨シェフのスペシャリテとして「性格は嫌いだがこの料理は本当に美味しい」と常連たちに言わしめた野兎のロワイヤル仕立てを食することが目的でありました。

ギイ サヴォア

 

こんなに大箱で豪華だったかと驚く内装。メートルやソムリエも高給取り然としておりまして、さすが3つ星と感心したのであります。コースもありましたが、我々はアラカルトを選択しました。

まずは牡蠣の冷&温の前菜2種(60ユーロ)。

冷製牡蠣

カリフラワークリームと塩水味のジュレの冷菜とオニオンブイヨンベースの温菜とも普通味か。特に冷菜は今時どこにでもあるレベルでありました。

スペシャリテのカラーズキャビア(130ユーロ)は養殖キャビアにサバイヨンをベースにしたキャビアの出汁をかけたもの。でもサバイヨンが酸っぱすぎてこれまたイマイチでありました。

カラーズ キャビア

 

大人気のアーティチョークのスープ(92ユーロ)は万人ウケしないけどまずまずか。添えられたブリオッシュがこの日一番美味しいと感じました。

アーティショーのスープ

 

そしていよいよメイン、野兎のロワイヤル(95ユーロ)の登場です。
ところがこの皿の盛りつけを見て友里、椅子から転げ落ちそうになったのです。一般に、野兎肉はバロティーヌ仕立て(中にフォアグラなど詰め物をする)にするのですが、ここの野兎肉はなんとコンビーフ状態。見た目ほぐし肉なんですね。

ほぐし肉タイプのリエーブル ロワイヤル

ソースはトリュフやフォアグラがベースと言っておりましたが、色濃い割にツメは緩くまったくの凡庸味。
弟子の三鴨氏の方が遙かに美味しいというか、ここ数年食べ続けた「ブリストル」のロワイヤルにも軍配を上げざるを得なかったと完全な期待はずれとなったのであります。

ワインも古いものはボルドー、ブルゴーニュとも少なく残念。15年前に61年ボルドーで感激した友里の夢よもう一度はありませんでした。
リストからやっとみつけた古酒が、’47 ポマール リュジアン M.ゴーヌーでありました。

’47 ゴーヌー

 

東京だけではなく本場のパリでも3つ星よりビストロの方が魅力的になってしまったのか。友里、次回の訪問から、ビストロ系だけに絞ることを決意したのであります。