デュカスの総本山でも友里定説が当てはまった、LE LOUIS XV

レーニエ大公がモナコにぜひ3つ星レストランをと「オテル ド パリ」の総料理長として招聘したアラン・デュカス(当時31歳)。
大公の期待通りわずか3年足らず、デュカスが史上最年少で3つ星を獲得してしまった逸話は有名であります。

現在ではこのモナコだけではなく、パリなど各地に増殖したデュカス傘下のレストラン群が3つ星を取得しておりますが、この「ルイ・キャーンズ」はいわば3つ星中の3つ星的存在。
パリや日本のデュカス関連店をいくつも訪問して「デュカスの店に美味いものなし」の定説を導き出した友里征耶でありましたが、この総本山を訪れずそのような暴論を吐いてしまって良いものなのか。

以前から一度は訪問しなければならないと思っていたのですが、セレブの中でも選ばれたセレブが集うと聞くモナコ、セレブと対極に位置する友里には縁遠い存在であったのです。
たまたま身内とパリへいく機会がありまして、頑張って足を伸ばしての初訪問でありました。

噂に違わず街中は高級外車のオンパレード。特にカジノの駐車場には、フェラーリ、ベントレー、ランボルギーニが自慢げに駐車されております。
しかしF1レースを開催するといっても狭い道が多いんですね。宝の持ち腐れだと貧乏性の友里は思うのですが世界のセレブは気にしないようです。

さてこのルイ・キャーンズ、想像通り内装はゴージャス。しかも悪評高い中国人は見当たらず、評判悪いアジア人はせいぜい着飾った日本人くらいか。(友里達も)

ルイ・キャーンズ

 

これが最初で最後かもしれないので思い残すことがないように我々は310ユーロの最高値コースを選択したのであります。

ズッキーニ入りのグリッシーニに続いて出てきたアミューズは各種野菜を乗せたブルスケッタのようなもの。でも完璧な普通味で可もなく不可もなし。
ジュレに囲まれた海老に乗せられたキャビア、多分養殖だと思うのですが悪くはなかった。

次に出てきたのが野菜のココット。

野菜のココット

 

ズッキーニ、人参、アスパラ、アーティチョーク、スペルト小麦、モリーユ茸と野菜は盛りだくさんながらこの鍋料理、世界のセレブが集う最高級レストランでだすメニューなのか。
味付けはズッキーニソースと牛のフォンがベースでありましたが、東京のストウブ鍋を使った店と大差ない食後感であったのです。

魚料理は欧米で高級魚と言われるシーバス。

シーバス

でもオレンジを使った味付けは甘過ぎでイマイチ。

肉料理は仔羊でありましたが、これまた印象に残らない皿であったのです。

仔羊

 

白のグラスワインはシャブリ(20ユーロ)しかないなど最高額店としては疑問の品揃え。
でも見栄をはるため61年ものボルドー(これがヒネていてまたイマイチ)を頼んでの支払いが一人当たり1000ユーロを軽く超えてしまいました。

’61 ランシュ・バージュ

 

世界の3つ星、3つ星中の3つ星と言われているようですが、どの皿も味のトーンが同じで悪くはないけど傑出さをまったく感じません。

「デュカスの店に美味いものなし」の定説はモナコでも健在でありました。

PS
一番のサプライズだったのはハーブティーのこのパフォーマンスでありました。

ハーブのワゴンサービス

 

 

単なる宴会料理屋だった、高台寺 閑人

友里が年末の恒例行事としてブログで発信している「今年のワースト&ベスト」。
その和食部門でここ数年ベストに挙げているのが京都の「御料理はやし」です。
ミーハーレビューのネット評価は低いですが、「薄味の中にも真のうま味のある調理」と友里が最高評価している京料理店であります。

ところがその評価が気に障ったのか、地元京都在住のブロガー(生粋の京都人と自称する柏井壽氏とも連携している)から「御料理はやし」は薄味ではないとの指摘を受け、頼み込んで教えてもらった真の薄味という店がこの「高台寺 閑人」でありました。
友里が万難を排してすぐさま訪問したのは言うまでもありません。

この店、夜の最高値コースが1万5000円と比較的リーズナブルな値付けなのに、箱(建屋)が立派すぎるんですね。
外観はまさに料亭。しかもかなりの大箱ですべて個室対応(掘りごたつ式)。
ですからちょっと場数を踏んだ外食好きなら、こんな箱ものを維持して1万5000円でまともな料理が提供出来るはずがないとわかってしまうのであります。

その推測が確信に変わったのは料理スタート直後。
(お)先付けのうすい豆のスープ(和食だとすり流しというのですが)の入った器にウニを乗せてかかっていたのがなんとパート・ブリック(小麦粉でできたクレープ状の薄い皮)。こんな食材、真の京料理で使うはずがありません。
単なる京風創作料理店であるとわかった瞬間でありました。

八寸も期待通りそこらの観光客相手の店と同じレベル。
黄身酢和え、茗荷寿司、唐墨など見た目どおりイマイチの出来でありました。コースの華であるお椀のタネは鱧真丈。
この時期(5月下旬)でよい鱧がないなら真丈にしてまで無理して出すなと言いたかった。吸い地も塩含め単に味濃い万人ウケのもの。

造りの1皿目はキスと鯛の昆布〆。

昆布〆 鯛

この店自慢の昆布〆でありますが、友里には質が悪いから昆布〆でごまかしているとしか思えなかった。

造りの2番手は脂まみれのトロ。上にかかっている泡醤油も不気味でありました。

脂まみれの鮪に泡醤油

 

そしてトドメはもう1つのウリであるという石焼き。

田舎の旅館料理によく見られる石焼き

鰹の酒盗に漬け込んだアワビ、車エビ、イカを客が自分で焼いて食べるものですが、これって田舎の旅館でよく出てくる料理ではないか。
こんなものが真の京料理のはずがありません。

焼き上がったところ

 

甘鯛入りの蓮根饅頭も塩と味が濃すぎてNG。そして最後のダメ出しが鱸の焼き物でありました。

ゴムのような食感だった鱸

ゴムのような食感で噛み切れたものではない。よくまあこんな質と焼き技術で客商売をするかと感心してしまいました。
〆は焼きおにぎりの茶かけで、これが本日一番まともに感じたのであります。

はっきり言ってこれほどひどい京料理(しかも薄味と紹介されて)は久々。
暴走を続ける京都吉兆グループの1店、「HANA吉兆」のワイン会席に匹敵するほど無茶苦茶な食後感であったのです。

隣の部屋ではタバコを吸って大騒ぎしていましたから料理だけではなく雰囲気も田舎の旅館レベル。外食好きは絶対に近づいてはいけない店であります。

中身は街場のステーキ屋ながら価格はグランメゾン、ニューヨーク・グリル

あれはバブル崩壊前後のことでありましたか。
ここへ誘い込みさえすれば、飲み直しと称して予約した階下の部屋に女性をエスコートできるとの都市伝説を信じて予約に精を出した男性群。この店はいわゆる「ゲット用レストラン」の最高峰に位置するダイニングであったのです。

最盛期は、特等席と言われた窓際2名テーブルの予約が数ヶ月先まで入らなかったとか。
こう言っては上から目線で申し訳ないのですが、彼ら男性陣と違ってこの手の「ゲット用レストラン」の助けを借りずに目的を達成できた友里にとって、今回の取材は生まれて2回目のパークハイアット訪問となりました。

訪問したのは4月のはじめ。前世紀と違って窓際の特等席、週はじめではありましたが数日前であっさり予約が取れてしまった。まさに隔世の感の一言であります。

最新の外資系ホテルが乱立しているからか、場所が悪い(新宿にお勤めの方、ご免なさい)からか、ホテルフロントは寂しい限り。でもこの「ニューヨークグリル」だけは外人客中心に盛況でありました。

まずは同伴者とグラスシャンパンで乾杯。
しかしノンヴィンのロデレールが1杯2900円は余りに高すぎではないか。アサヒの生ビールも1100円とボッタクリレベル。

料理は魚系もありますがこの店は牛主体の店。前菜もメインも選択肢が少ないアメリカンであります。
値付けと雰囲気は高額店ありますが、きょうび、ニューヨークでこんなステーキ屋みたいなチープなメニューの高額店なんて存在していないのではないか。追い込まれた友里達は当たり外れがなさそうな料理を選んだのであります。

ミックスリーフのサラダ(2100円)は丼のような深い皿での提供。量だけは多かったけど甘塩味で全くのイマイチ。連れが頼んだサーモンも予想通りどうってことなかった。

ミックスリーフのサラダ

 
黒服は和牛を勧めてきましたが、店名にニューヨークを冠するのですから友里が選んだのはUSリブアイ300g(6900円)。

USリブアイのステーキ

オーダー前にUSDA(アメリカ合衆国農務省)プライムビーフではない普通肉と確認しておりましたが、これまた予想以上に落胆。
肉質や調理(火入れ)のレベルを言う前にまず問題なのが皿の温度。あらかじめ温めていないのでステーキがすぐ冷めてしまうのです。肉がもともと美味しくないだけにこれは致命的。
ソースは4種から選べるのですがどれも甘過ぎ。甘く濃いカリフォルニアワイン(しかも値付けが高い)との相乗効果で更に食欲が落ちてしまいました。

 

同伴者のミックスグリル

これは同伴者が頼んだものですが、見ただけでイケていないのがわかりますね。

気を取り直して頼んだデザート(1800円一律)やエスプレッソ(1400円)も何かの間違いかと思うほどの高い値付け。
そしてトドメは、テーブルウオッチングも満足にしないくせにサービス料として「13%」の請求でありました。

費用対効果(こんな料理じゃゲットできない)を考えると訪問は避けるべき店。
勿論友里も階下の部屋へ寄らずに直ぐに帰宅したことを最後に付け加えさせていただきます。