いつの間にか店名がシンプルになっていたNARISAWA。今夏、久々に訪問して店名だけではなく料理内容も激変していたことに驚いたのであります。
コースは2万1000円一本。そしてその大仰なコース名にも腰を抜かしてしまった、“森とともに生きる”のスタートです。
まずはテーブルに鎮座まします“森のパン”。
「苔」と題しているようでして、蝋燭の火で発酵中でありました。
続くは“森のエッセンス・黒山の風景”と題するモノ。
いちいち大仰なタイトルをつけるのでメモが大変です。「エッセンス」は森の水、「風景」は豆腐の上に胡麻と葉緑素(緑色の粉)をかけ焼いた(焦がした?)ゴボウの皮を乗せたもの。味的には悪くはなかったけど、盛り付け含めもっとシンプルにならないのか。
“炭”と称するのは玉葱のフリット。炭化させた長ネギを外側にまぶしております。玉葱は甘くこれは見た目と違って美味しい。
“ウニ・トマト”は想定内のお味。ジュレがトマトでして、この料理は珍しいものではありません。
”沖縄”と題するものは、冬瓜、田芋、ヨークシャー豚を入れたウミヘビのスープ。これも悪くはなかったけど、ウミヘビが負けて豚の味が主体でありました。
そしてこの日一番の料理が“賀茂茄子”。寒天状のトマトをかけておりまして、茄子がかな~り美味しかった。塩は強くもなく弱くもなく良い塩梅。創作和食として供した方が据わりが良い。
どこが炭なのかと思っていたら、ホールスタッフはフローズンさせたパプリカの粉を掛け始めたのです。
そしてパプリカが溶けたからでしょうか、あら不思議。黒くなってしまいました。子供だましのパフォーマンスですがお味は甘いけどこれも悪くはありませんでした。
“赤ムツ・松茸・スッポンのエキス”はテーブル上で透明な袋を破ります。
これまた塩味は優しく、“創作和食”と考えると京都の3つ星より完成度が高い。ここまでは予想外に楽しめた料理だったのですが、次の能登の岩ガキにはダメ出しです。
なんと岩ガキをソテーしているんですね。肝心の牡蠣が縮んでしまって岩ガキの特徴であるミルキー&ジューシーさは皆無。これは改善が必要であります。
料理の最後を務めたのは完全放牧の蝦夷豚。これは塩がやや強めの炭火焼きでしてサプライズ性はまったくなし。悪くはなかったけど、成澤料理としてはチト物足りなかったのであります。
ワインの値付けが高すぎるのでワインペアリング(1万5000円)に逃げた結果の支払いが一人当たり4万円台半ば。
結論は京都の3つ星和食(嵐山吉兆や菊乃井など)より薄味で美味しい創作和食と判断。あっという間に撤退(半年でロンドンから逃げ帰ってきた)した村田氏(菊乃井主人)、ジョエル・ロブションでバカ騒ぎする前に、このNARISAWAで食事して己の創作和食の反省をしたらどうなのか。
季節によって料理が異なるという前提なら、たまの訪問は許容範囲かもしれません。