ピエモンテ専門店としては物足りない、グラディスカ

日本人としてイタリアで初めてミシュランの星をとった堀江純一郎氏が「ラ・グラディスカ」をオープンしてきました。ピエモンテのリストランテ「ピステルナ」を1年半足らずで1つ星にしたシェフが西麻布に店を出したと知った友里は直ちに予約を入れたのです。
場所は真面目に一店舗主義を通すフレンチ「ブルギニオン」の隣のビル地下。チャチな門扉をくぐり、狭い階段を降りると入口はなんとガラス戸。テーブル、クロス、カトラリーもまったく高級感なく救いは天井の高さだけ。期待は一瞬落胆に変わったのです。
6800円、8200円のコースは、前菜、パスタがアラカルトから選択できるもののその選択肢は2種のみ。メインも6800円が牛すね肉の煮込みか豚ロースト、8200円が魚か羊と選び甲斐がありません。よって必然的にアラカルトに追い込まれます。
前菜は2000円前後、パスタは2200円以上とやや高めながら、メインが3000円台とトータルでは8000円前後でおさまる価格設定。ただし、ピエモンテ専門店としては前菜にバーニャカウダがなく(アンチョビ・ニンニクソースの温野菜はあった)、パスタでもそれらしき料理は「タヤリン」、「アニョロッティ ダル プリン」(水餃子のようなもの)、「ニョッキ」と3種だけ。メインも牛のバルベーラ煮込みくらいしか見当たりません。
温野菜は想定内ながらまずまず、ホエー馬ラグーのタヤリンはかなりイケます。近辺のピエモンテ料理店の脅威となるでしょう。アニョロッティ ダル プリンも2600円と高いですが悪くはなかった。メインはポーションもあり、特にバルベーラの煮込みは濃厚でその酸味は印象的でした。
しかし問題点はピエモンテの地方色少ないメニューだけではありません。ワインの品ぞろえがプアで値付けも安くありません。オープン直後でオペレーションが不安定なのは仕方ないが、初夏なのにエアコンが緩いのはいかがなものか。ピエモンテの星付きシェフの凱旋店を期待する客には料理やワインの品揃えに不満が残ることでしょう。
イタリアンが増殖続ける東京で生き抜くには、他店との違いをより強調する、つまり地方色濃くしてワインも差別化する必要があると考えます。

修業元の次郎より使い勝手やCPが段違い、青空

昼は30分で3万円弱、夜も1時間粘れず4万円近く請求される銀座の「すきやばし 次郎」。主人の小野二郎さんとベッタリの山本益博氏以外、こんな法外な時間単価の鮨屋へリピートする客は経費族かマゾな人しかいないと思うのですが、その3番手が銀座8丁目に「銀座 青空(はるたか)」を出しました。
近辺は「久兵衛」、「小笹寿し」、「くわ野」、「奈可久」、「ほしな」など新旧の人気店がひしめく激戦地。
いずれの店もツマミを充実させているだけに、酒飲みを軽んじる店で修業した高橋青空氏がどのような営業をするか非常に興味がありました。結論から言わせていただくと、修業店の悪い所を修正し、数少ない良い所を維持した食後感の良い鮨屋。
カウンター8席と小上がり1つのキャパに女将、若い衆、そして女性とスタッフ数は充分。雑居ビルの3階ですが思ったより内装も豪華です。
緊張感ない中、ツマミとしてのヒラメ、タコ、〆鯖はまずまずの質。「次郎」ならこれで終わりですが、その後アン肝など酒肴がでてきたのには驚きました。修行店ではありえない。練馬の他店批判で有名な「鮨処 すゞ木」の主人が「次郎の弟子がツマミを習いに通ってきた」という自慢話をしていたのを思い出しました。
ビールとぬる燗でゆっくりツマミを楽しんだ後握りへ移行。ちょっと硬めの煮ハマの他は、赤身、中トロ、トロの3連発にコハダ、大きな茹でエビ、子柱軍艦巻きなど「次郎」とほとんど変わりません。特に仕事をしたタネは同じ。ついこの間まで「次郎」で仕込みをやっており、仕入れルートも同じだから当然か。
握りがやや硬めで好みがわかれるところですが、ツマミ、握り、お酒を楽しんだ2時間超で支払は2万数千円。「次郎」でこれだけ粘ったら軽く倍以上の請求ですから、銀座の他の高額店と比べても決して高くないこの値付けは評価に値します。
主人は傲慢さなく客への態度まずまず、せかさずゆっくり楽しませ支払額も妥当、と「次郎」の悪いところを修正し、タネ、仕事とほとんど違いのない鮨を提供する「青空」。23時半までの営業で何回転かさせていますが、「しみづ」や「あら輝」のような時間制限がないので友里としては銀座の中では再訪したい鮨屋の一つとなりました。今後も、清水氏や荒木氏のような「勘違い」をしないことを切に望みます。

安いコースならおススメの創作料理店、ハル ヤマシタ

オープン前、東京ミッドタウンの入店リストでこの店のキャッチを見て私は驚きました。「神戸の異端児シェフが六本木へ」とありましたが、この山下春幸氏、異端児と言われるほど有名なシェフなのか。東京の私の仲間だけでなく関西在住の知人もその存在を知りませんでしたので、早速ネットで調べたところ、ナダバングループとして創作和食のほか居酒屋なども展開している(有)ウォーターマークの代表取締役だったのです。
まずはランチでお試し入店。2500円から6500円までのコースは前菜、スープ、パン、〆のカレー(肉質がコースで異なる)は共通で、メインがオーシャントラウト、イベリコ豚、神戸牛などの違いによるもの。奮発して6500円(神戸牛)を頼みました。
淡路産の玉葱を使ったドレッシングのサラダ、玉葱の甘味がこれほど強いとは驚きです。小芋のスープもかなり濃厚。チリパウダーを入れたマヨネーズ風味のブレッドソースは食通には疑問でしょうが結構パンに塗るとイケます。温めた皿に供された炭火焼の神戸牛もまずまずで、〆のカレーは玉葱たっぷりで美味しい。関西の創作料理というと同じくカレーを出す交詢ビルの「ヨネムラ」を思い浮かべますが、食後感はこちらの完勝、早速その場で夜の予約を入れました。
当時あったオープン記念の5800円コースはお買い得そのもの。(現在は6800円)〆のカレーまで10皿でスープやサラダはランチとかぶりましたが、神戸牛ロール炭火焼、鶏レバー、ボタン海老、イワシ、水茄子、オーシャントラウトの低温ロースト、フォアグラ茶碗蒸し、定番カレーとこの価格なら文句をつけられません。現在は6800円から1万2000円迄の4コースになっていますが、ランチと同じくメインの肉の違いだけです。純血神戸牛、特選神戸牛、イベリコ豚、神戸牛と肉の違いでコース価格が変わりますが、ここでは最低値コースで充分。いや高額なコースにするとせっかくのCPが悪化すると考えます。
創作和食でなぜかオーストラリアワインしかないこと、5000円前後のワインもあり値付けは高くありませんが、グラス
にかなり割高感がある点が問題点であります。
まずは、ランチで安めのコースを試してみてください。