立地を考慮に入れてもCPが良い鮨屋、福元

下北沢で天然モノに拘っていると評判の「鮨 福元」。HPでは、その日のタネを産地と共に公開しています。かなり拘りのある店主だと以前から気になっておりまして、今年に入ってやっと訪問することが出来ました。
下北沢駅から徒歩10分以上、商店街を抜け住宅街のビル1階にあります。入り口がガラス戸なのが気になりますが、普請は別にして内装は清潔感よくまとまっています。8席のカウンターに小上がりが一つ、つけ場には主人の他、混めば2番手も立つようです。
HPでは、握り1人前3000円?、オツマミ6?7品と握り10?11個のお任せが1万4000円?、と価格を公開しています。普段着に近い客が多いことから近隣の常連が多いようで、ツマミからお任せの人、握りだけを頼む一人客と客ごとのオーダーに対応してくれるのは有難い。
主人は見た目と違ってかなり饒舌。閖上(ゆりあげ)の赤貝は駄目、白身は〆なければ駄目、熟成させすぎは駄目、と「次郎」など有名店の主人の主張を否定する大胆発言に驚きました。確かにツマミにでた白身は最近の熟成タネのようにパサパサしておらず食感もいい。定番の煮蛸、つくね芋とウニの和え物も悪くありません。そしてツマミには焼き物も1品つきます。
赤酢の酢飯を使った握りは、鮪、やや強めに〆たコハダ、〆た白身とまずまずバランスよくまとまっています。ヅケはその場でつけただけ、夏に小烏賊(スミイカの子)を使うが冬はヤリイカを使うなどクラシックな江戸前に拘っていない点は賛否が分かれるか。煮ハマや煮穴子に引かれたツメがやや緩く、反面干瓢がかなり味濃い点が気になりましたが、ツマミ、握り共、そこらの銀座の高級店と遜色ない出来栄えであります。最上のタネ質ではありませんが上の部類。仕事もまずまず。お任せではやや量が足りずいくつか追加してビールにぬる燗を3本ほどの支払いが1万8000円前後。城東地区にお住まいの方がわざわざ訪問する必要はないと思いますが、近隣や沿線にお住まいの方には、銀座や赤坂で2万円以上払うことなく同レベルの鮨が食べられるのでおススメです。ただし主人と2番手では握りに差がありますので、主人が一人で仕切る時、つまり月曜など空いている曜日に訪問したほうが無難でしょう。

店名からは想像できない高級店、英ちゃん冨久鮓

関西在住の食通の方から、高質な天然フグを食することが出来ると教えられましたが、私はこの店名に思わずのけ反ってしまいました。なんだこりゃ、街場の寿司屋でもあり得ないネーミング、東京の高額店でこの店名ではまず客は入らないでしょう。「ぐるなび」にはビールのクーポンがついており、拘りがあるとは思えなかったのですが、HPやネットの掲示板では「天然」に拘った高級食材を出す店で、懐石や寿司のコースは1万円以上の高額店と知り、まずは特別仕入れのフグ料理会に参加しました。
大阪はミナミの居酒屋などが乱立する地域。渋い店構えの扉を開けたら、数十年前にタイムスリップしたかとおもうレトロな寿司屋のカウンターが目の前に広がります。2階の座敷では懐石など和食が食べられるようです。
大阪でトップレベルの食材を仕入れていると自負する主人が用意したその日のフグは7キロ以上。関西は大きいフグを珍重するようで、それほど熟成させていないと思われる厚めに引かれた刺身は食感、旨みも充分。2キロ近かったという白子焼きは塩と醤油の2種がでましたが、個人的には塩だけでいただきたかった。関西は焼きフグに力を入れているのでしょうか、遠江(とうとうみ)、中骨含め次から次へと出てくる炭火焼の量は半端ではありません。しかもここまで甲殻類の香りがするものを経験したのも初めてでした。鍋、雑炊にたどり着く前に天然フグを堪能しきった次第であります。予算は3万円前後。大阪ではかなり高額ですが、東京では高額フグ屋の平均ですから交通費を考えなければお得です。
特別コースだけでは店評価できないと今度は昼にお好みで1階の寿司にチャレンジしました。ツマミで頼んだ鯛はさすが関西、美味しい。天然のハマチも脂が上品、支払い覚悟で頼んだサエズリも良かった。では握りはというと、江戸前というより海鮮系の寿司。煮切りはなく、ガリも酢飯も甘めでありました。普段食べないものをと頼んだ牛トロは甘い酢飯にあって面白く、鯖棒鮨も良かったですが、ツメを引いていない照り焼きみたいな穴子、深みのない赤身、〆の緩い小鯛など東京の有名店並みのレベルを期待するのは酷というものでしょうか。ぬる燗含めて支払い1万6000円はこの食材では仕方ないと考えます。

アクセスが不便なのが難点、恵比寿ダル・マット

深夜営業、お任せコース4500円、白・赤ハウスワイン1500円飲み放題という営業で注目された西麻布のイタリアン「ダル・マット」の2号店。正式名称は「恵比寿DAL-MATTO」です。昼営業をせず、その分深夜に営業時間を延長した戦略は、今では和食や鮨屋でも取り入れてきて珍しくなくなりました。その結果、定食屋以外の昼営業をする店が減ってしまい、ちょっと凝った料理は昼に食べられなくなってしまったのが残念であります。同じ営業時間ならば、客単価が低い昼時の時間を深夜に振り替えれば、確かにその分酒代の追加が見込め、自店を締めた後の同業者や深夜族の来店も見込めます。時間的に効率化するのですが、ランチの目的の一つである余った食材の有効利用をどう転嫁したか。答えは「お任せコース」にあります。深夜では単品も出しますが、基本的には店に完全お任せ。つまり、同じ日でもパスタなど料理内容に違いを出して食材を有効利用していると考えます。
地番は恵比寿といえども駅からはかなり遠い住宅街の、1階がラウンジ、地下にカウンター8席にテーブル席と個室があるキャパ20名ほどのお店。日曜の22時頃の訪問でしたがほぼ満席で、しかも若い飲食関係者らしき人も多かった。ドルチェやエスプレッソをつけてお任せコースは5000円前後になりましたが、例のハウスワイン「飲み放題」は1500円で健在でした。
先付けに刺身系を含めた前菜が数皿、軽めのパスタの後肉料理が出て最後は再びパスタで〆るという、かなりの大食漢でも満足できるコース設定です。仕入れ食材を有効利用するコース料理は、総じて無難でわかりやすい味付けです。魚は昆布〆、パスタにフルーツを使うなど創作イタリアンでありますが、ビール2杯に白・赤ワインをたらふく飲んでの支払いが8000円。この量、価格では、食材と調理に文句をいう人はいないでしょう。ワインも1500円を考えると文句は言えません。ただし、場所が不便なので往復にタクシーを使ってしまう、飲み放題以外のグラスワインや高額なレアワインを頼んでしまうと食後感は変わりますから気をつけてください。また、ワインをほとんど飲まないお客には、それほどの価値を見出せない店でもあると考えます。