昼のビストロ料理には失望した、トゥールモンド

口コミサイト「食べログ」で高評価な連日満席の大阪フレンチ。以前は昼夜ともビストロ料理でしたが、関西ヨイショライターの重鎮、門上武司氏達と行ったフランスで刺激を受けたとかで、夜は多皿のお任せコース1本という業態に変更しております。昨年11月、まずは夜(8925円)にチャレンジしました。

普請は高くないが小綺麗にまとめた内装。クロスがないのはビストロ時代の名残なのか。まずはワインの値付けの安さに驚きました。ノンヴィンシャンパーニュが6800円、ブルゴーニュも村名は6800円からあり良心的なリストです。
アミューズは森鳩とフォアグラのムースにリンゴのエスプーマ。フルーツ系のピュレやジュレを多用した流行料理の始まりです。ビストロ上がりだからか見た目よりはしっかりした味付けで悪くはありません。前菜3皿は以下の通り。足赤海老とコンソメのジュレにはブロッコリーのムース、玉葱の低温ローストには塩キャラメルとトリュフのピュレ、そして鱈の白子のムニエルに厚岸の牡蠣のスープ仕立てと、スプーンを使用する料理が多いのが特徴です。
魚料理は白烏賊のリゾットに加えて的鯛やトランペット茸、肉料理は蝦夷鹿の背肉とフィレ、とポーション小さいけど不満はなかった。流行の食材てんこ盛り、どの食材がその皿の主役かわからず、フルーツや甘物、そして海藻のような旨み成分を多用する調理は友里の嗜好に合わない事が多いのですが、悪い印象は持たなかった。かなり飲んだので2万円超の支払い額だけが印象的でした。

ここはビストロ料理も試さなければと昼に再訪したのが今年になってから。鴨生ハムのサラダ(1575円)にはサワークリームがかっておりイマイチ。好きなシュークルート(2625円)はキャベツが少なく発酵が足りないのか酸味も弱すぎ。甘めの出汁味でディープさなく期待はずれでありました。
牛肉の赤ワイン煮込み(2940円)は、肉だけ別に煮詰めているのではないか。シュークルートも赤ワイン煮も味のトーンが同じで、まるで業務用ストックを使用しているような食後感。高田馬場の「ラミティエ」ではもっと手の混んだ料理が昼のメイン並みの支払いで前菜メイン二皿食べられるだけに、昼夜を食べた結論は、地方の「過大評価店」になりました。

銀座もビックリ!名古屋の高額寿司屋、浜源

名古屋駅からタクシー往復で5000円かかるだけではなく、一人当たりの支払い額も優に2万円を突破する名古屋屈指の高額寿司店。この値付けで客が押し寄せていますから、主人は笑いが止まらないのではないか。店内や入り口を和風に細工していますが、よく見るとかなり大きな三階建ての一軒家。自宅と店舗兼用の豪邸と読みました。
内のL字型カウンターには、向かって左に主人、右側に上野毛時代の「あら輝」で修業したという息子さんが位置しております。高額寿司屋だと言うのに意外に二人とも謙虚。特に主人は若い衆から奥で調理された料理を手渡しされる度に「ありがとう」と言っていました。弟子を怒鳴りつけている東京の鮨職人を見慣れている友里は、驚きそして感心したのです。

さて主人の性格ではなく肝心のツマミと握り。初訪問での支払いが2万5000円前後と予想外に高かったのは飲み過ぎが原因かと、間を置かず再訪して下がるどころか3今度は3万円弱の支払い。はっきり言わせていただくと高過ぎで富裕層限定の寿司屋と判断。とは言っても、博多の「河庄」ほど無茶苦茶なCPの悪さはなく、寿司自体は東京でも中の上か上の下レベルと判断します。
中トロは普通でしたが、ヒラメはまずまずでタコの桜煮もしっかりした味でお酒がすすみます。半生のバチコ、厚みもありこれは美味しい。あの濃い味好きな魯山人(大のナマコ好)もビックリではないか。ツマミはワタリガニや白魚など寿司タネ以外の物も揃えていて、生姜や山葵漬けも私の好みでお酒のピッチは上がったのでした。

握りでは酢飯が意外。赤酢を使用していませんが、粒が固く特徴があります。ここまで固いのは地方の寿司屋では珍しいのではないでしょうか。
ヒラメの昆布〆はちょっと昆布が強すぎで、コハダも〆が強いと感じましたが、白身の星鰈やサヨリは美味しい。ヅケ、鰺、穴子、赤貝、トリガイ、干瓢など江戸前に似たタネを揃えているのも地方の寿司屋としては珍しく、そこがこの強気の値付けで客がやって来る理由なのかもしれません。
銀座でもこの請求額は、「青空」や「小笹寿し」、「あら輝」そして「かねさか」と名だたる有名店に負けません。あらためて名古屋経済を支える富裕層の底力を思い知らされた友里でありました。

ワインをウリにする一軒家オデン、びのむ

西麻布にある炭火焼がウリのワインバー「レ ビノム」の姉妹店。同じく4丁目の路地にオデンをウリにした一軒家ワインバーを一昨年にオープンしました。当初は雑誌の露出が多くて予約が入らなかったのですが、落ち着いたのか当日の予約がやっと入って訪問できたのが昨年前半。8400円のコース料理は、小料理5皿の後に鴨出汁を使ったオデンが続き、炊き込みご飯で〆となりました。ボトル売りもありましたが、料理に合わせるというオススメのグラスワインを次から次へと飲んだのがいけなかったのか、支払いがなんと3万円弱(一人分です)。ブルゴーニュの1級畑が提供されたとはいえオデンでこの支払いは驚愕の一言。なにかの間違いかと思って今年になって再訪しても2万円台後半だったので本日取り上げました。

当日の夕方に予約が入ったのは今回も同じ。しかしこの不景気でも1階のカウンター(6席)だけではなく2階の個室にも客が入っていましたから驚きました。
小料理が5皿も前回同様。フカヒレ茶碗蒸しは万人受けする味でまずまず。サヨリと赤貝の刺身に添えられた苺ソースには驚きました。友里の嗜好ではあり得ない取り合わせであります。白子のクリームソースは甘すぎると感じましたが、煮穴子湯葉巻きやホロホロ鳥の粕漬け炭火焼きは意外に美味しく感じました。

ここからオデンにチェンジ。黒七味、辛子、カンズリが用意されていますが、鴨以外の出汁を使ったオボロ昆布を乗せた大根(カツオ風味)も登場しました。出汁が良くしみ込んでいたので、オボロ昆布など必要ないのではないか。鴨出汁のオデンも1年前より上品になっていると感じました。ゴボウ、ガンモ、タコ、つみれとオーソドックスなタネをワインで食べるため(客にワインを飲ませる)、鴨出汁を使う必然性に疑問を持ちながらもついワインを飲み続けてしまった友里。店側の術中に今回も嵌ってしまいました。「ぎんざ 力」より良かったトマト、牛頬肉の煮込みを載せた豆腐、ロールキャベツなど創作オデンに更にワインがすすんでしまったのです。

本店(炭火焼)よりグレードの高いワインを揃えているのが理解できないオデン屋でありますが、支払額を気にしない方には、話のタネでの訪問も良いかもしれない隠れ家レストランであります。