星3つはあまりに過大評価、カンテサンス

多店舗展開会社グラナダの下山社長はミシュランのおかげで笑いが止まらないのではないか。この白金の「カンテサンス」に3つ星、日本橋の「サン パウ」に2つ星とかなり優遇されました。ピッツェリアからスタートし、今ではフレンチ、イタリアン、スパニッシュから鉄板焼、中国、蕎麦屋に至るまでその数40店舗に迫る勢いですが、集客に苦しむ店も少なくなかった。中国料理店に加えてオープン3か月で店名からコンセプトまで変えてしまった銀座ベルビア館の蕎麦屋など不振店も結構ありました。
しかしこの店、3つ星という最高レベルの店だとは思えません。皿(料理)だけで判断したとはいえ、サービスに対する評判がかなり悪い。皿だけで判断するならミシュランは立ち食い店でも3つ星を献上するというのか。
受話器が上げっぱなしの通話不通なので直接訪ねたある日のランチ、店内は空席があり無事入店することができました。電話応対が面倒なのか、電話予約の殺到を偽装していたのか。
間口が狭く鰻の寝床のような店内。ミシュランはモダン、エレガント、シックと評していますがサービス陣といいこの内装といい、高額フレンチとしてはマイナスです。
メニューはお任せ1コースのみ。その日に仕入れた食材を有効に使用したいのでしょうが、高額フレンチで単一コースだけなのはいかがなものか。夜のコースは1万5千円で10数皿と多皿。メニュー構成が悪いと感じたのは、そのうち4皿がデザートであったからです。
全体に甘い味付けが多く塩梅というかバランスも良くない。塩の味付けだけの丸ごとの蕪、スッポンのスープ、大根のスープなど意外性のある食材の使用は面白いですが、ウリの山羊乳のババロアはオイル嫌いにはNGか。カリスマ漁師と仕掛け人に煽られた村公一氏の鱸のポワレ。火入れは良かったですが、私には質の違いがわかりません。メインはこれまた同じグループが煽っている西崎ファームのバルバリー鴨のロースト。やはり質の良さはわかりませんでしたが、火入れは良かった。
ワインは品切れや1本しかストックしていないものもあり、値付けも高く一人3万円近くになりましたから、CPも良くありません。ポワレ、ローストと火入れの腕は認められるので、甘く評価して1つ星が妥当です。

確かにCP良いけど星1つは荷が重い、えさき

食後感は悪くない店だとは思っていましたが、まさか2つ星をとるとは想定外だった「青山 えさき」。CP悪過ぎの和食店「菱沼」よりましですがミシュラン調査員の舌は本当に当てになりません。
昨年春に地下鉄外苑前から徒歩10分以上とかなり足の便が悪い場所へ移転、コンクリート打ちっぱなしと一昔前流行ったようなビル地下にこの「えさき」はあります。
カウンター、テーブル、個室で20数名のキャパ。移転前と違って料理はコース1種(デザート入れて7皿)8400円だけ。ただ、2100円の追加でキンキの煮付けが1匹つけられます。(現在は炊き合わせだけを変えキンキを付けて1万500円コースとしている)西麻布の高額閑散定食店「田はら」(何かの間違いか1つ星を獲得したので予約殺到かも)では一本釣りだと称して1匹8千円ほどでしたから、これは安いとオーダー、計1万500円になりました。
巻き海老、ソラマメ、トマトのライスペーパー包み、京菜、百合根の先付けは、高額和食ではないので文句は言えないレベル、可もなく不可もなし。幸先不安のスタートでしたが、鯛の出汁をとって造ったと思われる「かき菜」のスープで持ち直しました。さあこれからだと思った矢先の鯛の造りは、やはりこの価格では上質なものは仕入れ不能かと判断できる代物でイマイチ。しかし次皿からはまともな料理が続きました。大蛤のお椀は出汁もまずまず、移転してからコンセプトを変え野菜に力を入れるようになったという有機野菜料理もグッド、そしてやや小ぶりでしたがキンキの煮付けも味付けのバランスよくこれが2千円ならお買い得と感じたのです。
以前のような創作料理を排し、有機野菜を多用したベーシックな割烹料理。〆のグリーンピースのご飯でお腹も一杯、小豆とカスタードの熱々グラタンなる創作デザートはご愛嬌か。
最後は有機栽培珈琲とやたらと「有機」という文字が目立つのが気になりますが、1万円以上のコースもあった複数コース制を8千円1本に絞って勝負してきた今回の移転。わざわざ行く価値があるかどうか、傑出した料理があったわけではないですが、同席した京都在住の知人が納得した事実と、キンキの煮付けが良かったことを材料に、星なし店としてならおススメできる和食店と考えます。

畑違いの商売人が仕掛ける食材が豊富、ブランドゥ

最近は誰々が獲った鯛や鱸、どこそこの会社が育てた鴨、とやたら個人ブランドの食材を煽る人がいます。鳴門のカリスマ漁師として料理雑誌やTVに取り上げられた村公一氏。彼の魚があたかも日本一のように持ち上げられていますが、都心や京都の高級・高額店の主人の目に叶うものなのか。地元徳島中央市場の仲卸はその存在を知りませんでしたし、都内の高額和食店も鳴門の魚を重用していましたが、村氏の魚は扱っていなかった。調べていくと地元や関西の日本酒関係者が仕掛け人となって売り出しに一役買っていることがわかったのです。また西崎ファームという会社が供給する鴨、これまた同じような人脈の関係店へ供給されていますが、私は都内で評判の高いフレンチでシャラン産の鴨に代わってこの手の鴨を使用している店を知りません。このように身内ウケだけする魚や鴨を売りにしているイタリアンが神楽坂駅近くの「キュイジーヌナチュレル レ・ブランドゥ」であります。
店内はビニール系のクロスに紙ナプキン、紙オシボリと非常に質素。プリフィクスのコースを5000円前後に抑えており、この価格設定で能書きどおり素晴らしい魚や鴨を供する事ができるのかの検証が友里の2回の訪問の目的でありました。
前菜の村さんの鱸のカルパッチョ、肉厚で熟成感出していましたが、この調理なら他の鱸でも変わらないレベル。西崎ファームの鴨も火入れは半生に近かったですが、鴨肉そのものの良さは感じ取れません。だいたい仕掛け人たちの覚えめでたい「居酒屋」でも出している西崎ファームの鴨、世界ブランドのシャラン産と比較すること自体10年早いのではないか。
また村さんの「キビレ」という魚のアクアパッツァはとてもオイルと水だけの調理とは思えない濃厚さでした。魚自体に旨みがあったとしても水と油だけでここまで旨みを抽出できるか。カルパッチョの鱸が普通レベルでしたことからも疑いは残ります。疑問を呈したからか、2回目訪問のアクアパッツァに初回の濃厚さはありませんでした。
オーナーはワインに拘りがあり、レアなワインを1万円前後で揃えるなどその姿勢は評価できます。一部の人が煽る変なブランド食材を前面に出さず、地道な営業と調理で客を満足させていればより良い店になると考えます。