最近は誰々が獲った鯛や鱸、どこそこの会社が育てた鴨、とやたら個人ブランドの食材を煽る人がいます。鳴門のカリスマ漁師として料理雑誌やTVに取り上げられた村公一氏。彼の魚があたかも日本一のように持ち上げられていますが、都心や京都の高級・高額店の主人の目に叶うものなのか。地元徳島中央市場の仲卸はその存在を知りませんでしたし、都内の高額和食店も鳴門の魚を重用していましたが、村氏の魚は扱っていなかった。調べていくと地元や関西の日本酒関係者が仕掛け人となって売り出しに一役買っていることがわかったのです。また西崎ファームという会社が供給する鴨、これまた同じような人脈の関係店へ供給されていますが、私は都内で評判の高いフレンチでシャラン産の鴨に代わってこの手の鴨を使用している店を知りません。このように身内ウケだけする魚や鴨を売りにしているイタリアンが神楽坂駅近くの「キュイジーヌナチュレル レ・ブランドゥ」であります。
店内はビニール系のクロスに紙ナプキン、紙オシボリと非常に質素。プリフィクスのコースを5000円前後に抑えており、この価格設定で能書きどおり素晴らしい魚や鴨を供する事ができるのかの検証が友里の2回の訪問の目的でありました。
前菜の村さんの鱸のカルパッチョ、肉厚で熟成感出していましたが、この調理なら他の鱸でも変わらないレベル。西崎ファームの鴨も火入れは半生に近かったですが、鴨肉そのものの良さは感じ取れません。だいたい仕掛け人たちの覚えめでたい「居酒屋」でも出している西崎ファームの鴨、世界ブランドのシャラン産と比較すること自体10年早いのではないか。
また村さんの「キビレ」という魚のアクアパッツァはとてもオイルと水だけの調理とは思えない濃厚さでした。魚自体に旨みがあったとしても水と油だけでここまで旨みを抽出できるか。カルパッチョの鱸が普通レベルでしたことからも疑いは残ります。疑問を呈したからか、2回目訪問のアクアパッツァに初回の濃厚さはありませんでした。
オーナーはワインに拘りがあり、レアなワインを1万円前後で揃えるなどその姿勢は評価できます。一部の人が煽る変なブランド食材を前面に出さず、地道な営業と調理で客を満足させていればより良い店になると考えます。