行くたびに美味しくなってきているか、新ばし 星野

名店といわれる新橋の「京味」で立板をやっていた若者(この店は煮方の方がベテランで地位が高い)が2年前に開いた新橋の和食店。
狭い寿司屋跡をほぼ居抜きではじめた京味先輩格の笹田(彼は立板になっていなかった)跡をまたまた居抜きで引き継いでの独立でありました。

「京味」を円満退社するからか、京味のカウンターで本人だけではなく主人の西さんからもオープン情報を聞いた友里、独立してからすかさず訪問したのは言うまでもありません。
その最初の訪問での感想は、

椀ものにスッポンを使っていることから出汁に自信がないようだが、コース1万5000円を考えるとギリギリセーフか

これは再訪してから評価しなければならないと思ったのですが、師匠の助言(器用でないから当面は1日2組4名だけにしろ)を忠実に守っていたので今のようにブレイク(食べログではなんと現時点で4.36と高得点)する前から次の予約を入れるのが非常に困難であったのです。最初は単に嫌われているからかと思ったのですが・・・

2回目の訪問は1年半ほど空いてしまったでしょうか今年の正月。若い衆を雇ったようで1日3組と、客を増やしておりました。
コース価格は1万8900円と値上がったような気がするのですが、コッペ(メスのズワイ蟹)、フグの白子茶碗蒸し、鯛の造り、雑煮、甘鯛の焼き物、鴨饅頭などまずまずの食後感。
ただし時節柄澄ましのお椀がなかったので出汁を含めた実力がわからず又々最終評価を延期。
この6月に三度目の訪問を遂げて、今回ようやくこのコラムで取り上げられることになったのであります。

結論から先に言いますと、税・サを入れると2万円台半ばに突入する支払額ではありますが、料理は行くたびにまとも(美味しく)なってきているのではないか。
特に今回は時節柄スッポンや白味噌に逃げることは出来ず出てきたお椀は鱧の澄まし。

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吸い地はカツオがやや強めに感じましたが東京の高額和食としては悪くないのではないか。そして賀茂茄子の炊き合わせも満足と、「京味」では煮方を任されていなかったにもかかわらずそれなりのレベルの調理であると感心したのであります。(上から目線ですみません)

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小さな店なので酒類のストックは乏しい。
特にシャンパンなどはないようなので自分で用意して(持ち込み料は3000円と良心的)、頑張って予約を取って、訪問してみてください。
これ以上の値上げがなくクオリティを落とさないならオススメなのですが、「京味ブランド」のおかげか予約困難が難点。

やたらと次回以降の予約を入れたがるからか6月の段階で年内は予約一杯と聞きまして友里は椅子から転げ落ちたのであります。
本家の「京味」でもそれほど予約困難ではないだけに、ある種の客層(本家に行かない、行けない)が疑似京味体験で押し寄せているもかと推測してしまいます。

 

 

鉄板調理主体のなんちゃってフレンチ、ジャン・ジョルジュ

3月はじめ、けやき坂を歩いていたら、あるはずのチョコレート屋(ショコラ ド アッシュ)が消滅していてオシャレっぽいビストロのような店構えになっているではありませんか。
そこで店名を確認してあのNYの有名シェフのジャン・ジョルジュだとわかったのであります。
日本初進出なのですが本店と違ってカウンター形式であることに友里は興味を抱いたのであります。

あれは2007年頃でしたか。銀座としては立地が悪い三越裏に建設中だった化粧品会社のピアスビル。日刊ゲンダイの関係で実はこのビルへのレストラン誘致の相談を友里はピアスから持ちかけられていたのです。
その時、確か小山薫堂の絡みでテナントとして候補に挙がったのがこのジャン・ジョルジュでありました。最終的には大阪人のピアスが地代値下げ交渉に応じずご破算となり、タテルヨシノが入ることになったのですが・・・

ネットではカウンターなのにコースのみで2万4000円でワインペアリングが1万2000円と強気の値付けに賛否両論。そこで4月末に1週間前の予約で友里は検証してきたのであります。

客層は人のこと言えませんが年配客ばかり。そのためかカトラリーの他に箸まで用意されておりました。
コースは10皿の料理にデザートが3皿と友里が嫌う少量多皿攻撃でありました。

 

まずは味噌味のマスタードソースがかかった山菜からスタート。

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でも味噌味にバターとミントがミスマッチ。玉子の殻に入ったスクランブルエッグは自称キャビアが乗せられていましたが塩気が少ない。そのかわり玉子がかなりソルティでありました。

 

一口アミューズの桜鱒、ウニ、ホタテは味が濃すぎ。

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アボカドと本マグロの皿はなんとアボカドはフレッシュではなくペースト状態。しかも味付けは生姜とポン酢のようなもので肝心の鮪の味がしなかった。

 

この店の火入れは鉄板焼きが主体でして、続くフォアグラは、添えられたライチのペーストが余計で、塩を振りすぎているのか完璧に塩負けしておりました。

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何の変哲もない3種の人参のロースト(サラダ仕立て)に続いて出てきたのはグリーンアスパラ。でもサヴォアのワインを使ったモリーユソースがイマイチでありました。
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鉄板焼きのハタはナッツをまぶしておりましたが前皿のアスパラと味付けが被っていたのが残念。

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オマールブルーは時代遅れとなったレモングラスなどの泡仕立てで登場。

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バターの甘さと塩のしょっぱさが反発して肝心のオマールブルーの旨みも感じないほどの不出来な皿。

 

〆の肉は飛騨のA5牛でありましたが、この鉄板焼きも自称ハバネロソースがバター風味で甘いだけ。

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この日の皿ではデザートの1皿目となったグラニテが一番の出来と感じたのであります。
ワインペアリングもたいしたワインが出ずに支払いは2名で9万円近く。CP悪いどころか肝心の料理も鉄板焼き含め時代遅れの甘しょっぱいだけ。

NY本店には何回か訪問しましたがこんなにひどい食後感だったか。六本木だけではなくNYの店にも行く気がなくなった友里でありました。

コースがオススメのローストビーフ、ハーフダイム

読者から教えて貰った麻布十番にあるローストビーフ店。ネットで調べましたところ、あの廉価ハンバーグチェーン店「びっくりドンキー」の系列と判明。HPを見てみるとローストビーフ自体は単品で3000円前後とそれほど高くはなかった。
恵比寿に移転してきた「ロウリーズ」と食べ比べも一興かとすぐさま訪問(直前予約)したのであります。

内装はファミレスの雰囲気。高級感はありません。我々はいつものようにアラカルトで注文。

まずはツマミ的なものをと頼んだのがブロッコリーのペペロンチーノ(540円)。この価格ではブロッコリーの量は十分でしたが、どこがペペロンチーノ(唐辛子)なのか、単なるソテーのようなもので辛みをほとんど感じなかった。

紫キャベツのザワークラウト(432円)は酸っぱさ(発酵)が物足りない。これならデパ地下の惣菜の方が本格的かも。
シーザーサラダ(1080円)も量はあったけど突出したものを感じ取れませんでした。
スモークサーモン(1296円)は逆に量が少なく期待ハズレ。そしてメインのローストビーフの登場です。

160gが2808円、240gで3888円でありましたが、240gでもポーションは小さく見えるのではないか。白ワインバターソースをかけ過ぎているからかとろみと甘味が気になって、ホースラディッシュの助けを借りなければ食べきれなかった。
お通しの位置付けなのかバケット代として324円が追加されて6000円弱の赤ワインなどを頼んだら2名で2万円弱とかなりの支払額になってしまいました。

うーん、これなら「ロウリーズ」と大差ない食後感で満足できないとふと隣のテーブルを見たら、シーザーサラダやローストビーフをテーブル席前で調理し切り分けているんですね。
スタッフに確認したところ、前日までの予約限定でのコースだとか。
しかも価格が今なら3790円ポッキリというではありませんか。身内をつれて3名で時を置かず訪問したのはいうまでもありません。
それではその「パフォーマンスコース」を述べてみましょう。

前菜は燻製の鴨に野菜のテリーヌ、そして鰯のマリネ。量はほどほどですがこのコース価格なら十分か。
ミネストローネが出た後に、男性スタッフが軽口を叩きながら目の前でシーザーサラダを仕上げてくれます。これまた量もあって目の前パフォーマンスの影響か味も濃く感じなかった。

そして調理人がやってきてのローストビーフ切り分けパフォーマンスとなりました。
前回の失敗から、白ワインソースや和風ソースは別皿にしてつゆだくローストビーフを回避。
オーストラリアの赤身だという肉、今回はベチャベチャ感もなくそれなりに楽しめたのであります。

この日は酒なしで通したからか、パンのお替わりも含めての支払いが一人当たり4000円台後半。
コース限定、つゆだく回避を条件に再訪可能な店だと考えをあらたにして店を後にしたのであります。