ミシュランガイドシカゴ版では3つ星に輝いていた創作料理店。
2010年に一人で突入して以来の久々の訪問。でもこの4年間で予約システムなどが大きく変化しておりました。
まずは入店出来る人数。一人客どころか3人という奇数もダメ。2名か4名でしか予約を受け付けなくなっていたのであります。
推測するに連日満席を誇っているから自信満々。最大限に売り上げ(利益)を上げるにはテーブル席を満席にする必要がありますから、席が無駄になる奇数客を排除しているのでありましょう。
予約が殺到する店だけにのみ許される傲慢さであります。
もう一つの変化は訪問する曜日によって料理価格(コース1本のみ)を変えているんですね。当然ながら土日という週末が高くなるのですが、予約の問合せの時でないとその料理価格がわかりません。
しかも予約時にカードから料理代金を引き落とされますからキャンセルが利かない。
強気を通り越して、客の都合を一切考えない高慢ちきな店に変化していたのであります。
最初の訪問で感じたのは、食器と料理でサプライズを演出する創作料理だということ。
病気で味覚を失ったと聞くシェフと食器デザイナーのコラボの店なので、仕掛けある食器の意外性と、テーブルにゴムマットを敷いて直にデザートを盛り付けるなどのパフォーマンスに驚いたのであります。
ところが今回の訪問で感じた結論、先に申し上げますと
単なる奇抜さだけを追求する料理
に成り下がってしまったかなと。
例えば2皿目に出てきたのは木の枝を組み上げた籠のような塊。
この籠に何か料理が盛り付けられるのかと待っていたら、スタッフは「この中に柔らかいのが1本あるのでそれを見つけて食べろ」と言うではないですか。
手であれこれ触って、1本だけ干瓢みたいなものを取り出して口に含んだのであります。
味的には何だかわかりませんでしたが、子供の宝探しのような演出でありました。
お次の奇抜は目の前での炭おこし。
この炭の上で何か焼くのかと思ったのですが、スタッフはその中から炭を1片取りだしてゲリドンでカットしだしたではありませんか。何と焦げ焦げの鹿児島産の牛肉であったのです。
更に奇抜さはパワーアップ。煙まみれで器がよく見えない物体の正体は花瓶のような壺。
煙が消えてからこの壺の香りを嗅ぎ、別皿に盛った鴨やフォアグラを食するように指示されたのであります。
デザートの前に出てきたのはヘリウムガスの入った風船。これを口に含ませるのですが、青リンゴの味がするガムみたいな食感のものでありました。
ただし最後のテーブル直盛りデザートは健在。最後でやっと安心したのであります。
まともな料理の提供ではなく、如何に客を驚かせるかを目的としたワンダーランド料理店。
晩年の「エルブジ」にも見られたことですが、客の目先を変え飽きさせないための「更なる奇抜さの追求」。
エルブジのシェフ、フェラン・アドリアのように、創作に疲れ果てて(ネタ切れで)店仕舞いとならないことを祈るばかりであります。