銀座、新橋界隈は居酒屋や焼鳥屋、寿司屋が多いですがオデンの店も目立ちます。有名店としては「やす幸」、「お多幸」、「おぐ羅」、「一平」、「力」などなど。お茶の水から新丸ビルに進出しただけでは飽き足らなかったのか「こなから」も銀座に出てきてしまいました。庶民の味方と思えるオデンでありますが、結構高い店が存続しているんですね。今は1店だけですが、ソニービル近くの並木通りにあった「やす幸 本店」。バブル前後は外に行列が出来ていて、刺身などツマミを食べると軽く1万円を突破していました。現在の7丁目店で行列を見たことがないですから、当時とは隔世の感があります。この「やす幸」の悪いところ(ツマミをとらせて高い請求をする)を見習ったのが独立した「おぐ羅」でありました。「やす幸」は高い店ばかり排出しているのかと思っていたのですが、今はB級グルメライターに鞍替えしたJ.C.オカザワが修業店である「やす幸」の半額近くで美味しいと絶賛していたのがこの「おでん 田中」であります。
場所は銀座3丁目、昭和通りから1本入ったところにあります。カウンターは18席、テーブルも3卓ほどあり思ったより大箱です。居心地の悪い椅子に座ってツマミからスタートしました。
烏賊の沖漬け(650円)の後、刺身はメジ(1800円)とブリ(1700円)をオーダー。価格どおりで可もなく不可もなし。居酒屋よりちょっとましな程度です。肝心のオデンは本家より薄い色同様、出汁に奥深い味わいを感じません。「やす幸」ではオデンを食べ終わったその残った出汁を飲み干す客が多い。ところが「田中」では残りの出汁に口をつけている客を確認できませんでした。
スジ、ツミレ、はんぺん、フクロ、わかめ、海老芋、里芋、ガンモ、ねぎま、大根、コンニャク、タコなどを食べましたが、どれも凡庸。というかこれらのオデン種、自家製なのでしょうか。少々疑問であります。
本家と同じく主人が燗付けする日本酒とビールを飲んでの支払いが9000円前後。確かに本家の半額でしたが、味わいもそれなりのもの。これが5?6000円なら納得しますが、あまりに中途半端な価格とお味。色は濃いですが「お多幸」の方が庶民オデンとしてはCPなど総合点が高いと私は考えます。
中途半端な味と価格、おでん 田中
これが京料理の王道だ、御料理 はやし
海外在住の知人が一時帰国時、タクシーの運転手さんからの情報で訪問して感激したという京都の和食店。ネットで検索すればいくつかヒットしますが、雑誌や京都飲食店宣伝ウーマンの関谷江里氏(自称フリーエディター&ライター)は取り上げていない店であります。特に出汁が素晴らしいとの情報に友里は居ても立っても居られず昼時に即訪問しました。
場所は北村美術館前で京都駅からタクシーで20分前後とかなり遠い。立地の妙での過大評価かと危惧しましたが、一口食べてその心配は杞憂に終わったのです。
昼は5000円から1万円まで3コース。8000円を頼みましたが、最初の先付けの蕪の煮物の出汁を味わって、本物志向の店であると確認。とにかく出汁が旨い。お椀はこの時期京都のお約束の白味噌仕立て。東京ではあまり出会いませんが、タネの海老芋も含めて満足の一品でした。
造りのメジなど鮪系は東京より上とは思えませんが鯛はさすが関西、悪くはありません。そしてグジの蕪蒸しの登場です。冬の京料理の定番ですが、これを出す店を最近あまり見かけません。創作系の料理に力を入れすぎの店が多いからなのですが、出汁が良いからか餡も含めて○。昨年末に食べた「たん熊北店」より印象的でありました。その後の穴子茶巾寿司と煮麺で昼時としてはお腹一杯。ビールと日本酒飲んで一人1万2000円前後、満足の昼食でした。
再度昼に訪問後、やっと夜の1万5000円コースにチャレンジ。突き出しから〆のご飯まで13皿くらいでしょうか、ほとんどハズレがありません。出汁を使ったお浸しのほか、前菜のタコや白魚、蕗味噌は丁寧な調理で旨い。造りも鯛の他にもう一皿(赤貝など)出ます。蓮根餅も餡含めて良く、蒸寿司や大きな鮑やトリガイを使った酢の物にも満足しました。ビールに冷酒を結構飲んでの支払いが2万数千円は〆が餡かけご飯でありましたがCP的にも充分。造りがクラッシュアイスに直接乗せられていたこと、目の前の七輪で焼いたモロコが自分的には焼きが甘く感じた点など若干の疑問はありましたが、味、食材の質、CPとこの価格帯ではトップレベルではないか。奇を衒わない王道の京料理、創作系と違って通い続けても飽きが来ることはないでしょう。
スッポン料理は高くないことがわかる、義津根
天然物に出会う機会は珍しいですが、高級スッポン料理店で採用している養殖スッポン、仕入れはいかほどかご存じでしょうか。高い店だと鍋と雑炊だけで2万、3万とるこのスッポン料理、高級料亭の関係者から「高くても4千円程度の代物」と漏れ聞きました。スッポン=高級食材と思いがちですが実はそうでもないようです。
東京の「さくま」は料亭形式で客単価3万円以上、京都の「大市」は鍋と雑炊だけで2万円後半、原価を知ると複雑な思いとなります。1匹で2名分は充分とれるこの食材、スッポンは高級品という都市伝説に胡座をかいた殿様商売ができるということは、料理店としては打ち出の小槌なのかもしれません。さて読者の方から推薦されたこのスッポン料理店は蒲田。近辺にはラブホもあるちょっとディープな立地であります。外観はまったくの居酒屋、いや内装もカウンターと宴会用の小上がりで居酒屋そのものでありました。
鰻や刺身など居酒屋料理もありますが、この店のウリはスッポン。3人前とあるスッポンコース(1匹使用)のお値段は1万8000円でフルコースですから、他店よりかなり安い設定です。
まずはお酒で薄めた血。精がつくと言われていますが医学的根拠があるのかどうか。かなりの量のお酒で薄めているようで生臭くない。ワインで割るより良いでしょう。続いて緑色の胆汁がでてきます。心臓が入っているのが1つありますから、取り合いになるかもしれません。造りは胸の身とレバー、メスだったら玉子も添えられてくるでしょう。玉子を有り難がる客が多いそうですが、主人いわくオスの方が身は旨いとのこと。いずれも見た目とは違い癖のない味わいでありました。
肝焼きが出た後はこの店オリジナルという脂身の唐揚げ。何とも変な食感で話のタネに一度で充分か。身の唐揚げも出てから次に鍋が登場します。
仕事が丁寧なのでしょうか、濁りのないスープは
旨味も充分。ミシュラン1つ星の「四つ葉」では濃すぎる味の身の割にスープに力強さを感じませんでしたが、その後の雑炊にも満足した次第です。
カウンターでは主人のスッポン解体を至近距離で見ることが出来ます。飲んで食べて1人当たりの支払いが1万円前後。これが真っ当なスッポン料理の価格であります。