質、支払額ともはや東京最高の店ではなくなった、味満ん

以前は東京一高額なフグ店として有名だった六本木の「味満ん」。
シーズンオフの約半年間をクローズしますから、家賃や人件費など固定費の他に、経営側の儲けも残りの半年間で一年分稼がなければなりません。誰が考えても、通年営業の店よりCPがかなり落ちるのは当たり前なのですが、以前はこの店への訪問が一種のステイタスとなっておりました。

煮凝り、フグ刺し、白子焼、唐揚げ、ちり鍋、雑炊とフグ料理を一通り頼んでヒレ酒など酒類を適度の飲んでの支払いが一人5万円前後。しかもクレジットカードは不可で、いつもニコニコ現金払いオンリーですから、店は儲かって仕方かがなかったはず。
ネットでは年々刺身をはじめフグの質が低下しているとの評価も目立ち、友里もご無沙汰だったのですが、過大評価人気店の「めうが」に、今冬肝提供でお騒がせした「福治」を連チャンした最後の〆として、この「味満ん」を再訪したのであります。
フグの旬については色々な説がありますが、白子が大きくなりすぎない時期(身の味も落ちない)である1月半ばの久々の訪問であります。

2つの個室は埋まっておりましたが、カウンターは満席ではなかった。お品書きに鯖味噌煮の健在(毛蟹もあった)を確認しそれも頼んでフグコースがスタートしました。
煮凝りは固くて噛みきるのに一苦労。初っ端からダメ出しです。ポン酢とは別に、注文時に追加するか聞いてきたアン肝を裏ごしし、更にすりこぎで延ばしてモミジを入れたものにフグ刺しをつけたら、肝心のフグの味が消し飛んでしまいました。刺身だけ単独で食べても味がかなり薄かったので、アン肝やたっぷりのポン酢はフグ質を隠す必須アイテムなのでしょうか。

白子焼は小さめのものが2ヶ。以前より小さく皮も固かった。逆に唐揚げは大きく味濃いけどまずまずか。変わりタネの鯖味噌煮は甘過ぎで、ここで頼むべきものではないことがわかりました。

チリは厨房で煮込んで取り分けてきます。しゃぶしゃぶ2枚の他、アラ、葱、豆腐に春菊ですが量が少なく最後の雑炊も緩すぎで友里には物足りなかった。
「めうが」よりはマシでしたが、「福治」よりすべて劣ると感じたフグコースの支払いが一人当たり5万円チョイ。「福治」より安く上がりますが、食後感はかなり劣ると考えます。

質を塩とアン肝で隠す高額フグ店、めうが

赤坂にあった前店への訪問では、添加物を振りかけたかのような不自然に味濃いフグだと評した友里。白金高輪へ移転後の初訪問は今年はじめでありました。
ビル地下で居酒屋然としていた前店と違い、一軒家風と立派な店構え。カウンター6席、テーブル2卓に半個室らしきものもありましたが、厨房横にリフトを発見。なんと2階まである大箱店になっているではありませんか。常備された灰皿に唖然としながら、2種あるコースから高い2万9800円を選んだのです。

煮こごりは色濃くゼラチン質ばかりで皮など身が少ない。
刺身はこの店のスペシャリテというハーフ&ハーフ。何かというと、塩とポン酢それぞれに対応する刺身であります。刺身の半分には個々にモミジと葱が盛られております。芸が細かい仕事ですが、それ1つ1つに特製の塩とアン肝を乗せて食べろといわれます。塩も大量にかけて大丈夫だとか。
でもモミジ、アン肝、葱、塩の味ばかりでフグを食べている気がしません。ポン酢はたっぷり入った葱をフグ刺しですくって食べろと言われます。ポン酢にたっぷり浸されて、フグの味が消し飛んでしまいました。試しにフグ刺しを何もつけず食べましたが、まったく旨みを感じなかった。天然とのお題目ですが、静岡産の限界でしょうか。フグがアン肝負け、塩負け、ポン酢負けしておりました。

次に出ためうが揚げとは南蛮漬けのようなもの。これまた味が濃すぎでフグの味がわからない。白子焼きは小さいものが2つ。柚塩によって完全に調味料負けしておりました。
フグの手まり寿司には白い粉がかかっており、焼きフグには赤い添加物。何気に厨房奥を見ると、昔懐かしい赤いキャップの調味料瓶があるではないですか。量の少ないちり鍋を食べ終えた後、鍋に残った出汁を味見したのですが、昆布の味しかしなかった。雑炊は当然のごとく厨房へ引き上げられ、主人は何やら2種の白い粉を投入していたような・・・

香の物も当然ながら味が濃く、〆はコンデンスミルクがかかったイチゴ。昭和の古き時代じゃないのですから、コンデンスはないでしょう。
温いヒレ酒などを飲んでの支払いが一人3万円台後半。かまやつひろしが2階へ上がっていったのを確認し、濃い味好きの業界人専門の店とあらためて認識したのであります。

 

 

 

 

 

 

天麩羅の原価率の低さを証明している、坊野

最初に訪問したのはオープン記念という200円引きの天丼(850円→650円)に釣られた昨夏。西麻布に珍しい廉価な天麩羅屋に興味を抱いたからであります。身内が天丼、私が1260円のランチ天麩羅定食を頼んだのですが、いずれもこの価格なら充分と感じる量と内容でありました。

持ち前の検証精神で今度は夜に訪問。単品もありますが松竹梅のコース(4500円、3500円、2500円)から最高値を選択。お酒を飲む前のケアでしょうか、まずはお粥の登場です。そしてほうれん草のお浸しの後、造りとして鯛と烏賊がでてきました。添えられた山葵が混ぜ物なのはこの価格では仕方ないか。刺身も養殖でしょうがCPとしてはまずまず。
そして藻塩、焼き塩、天つゆが用意されて天麩羅が供されます。昼と違って揚げたてが都度出てくるのは高額店と変わりがない。巻き海老から始まり海老3尾、魚3種、野菜5種に掻き揚げと質はともかく内容は高額天麩羅屋と大差がありません。質も高額店の半値以下を考えると、サラダ付きですから充分ではないでしょうか。頼む人がいるかどうかわかりませんが、NVシャンパンが7820円、ビールが500円、日本酒が580円からと値付けの安い酒類を入れても予算は7000円以下で終わってしまいました。

しかし検証精神旺盛な友里はこの2回の訪問だけでは満足しない。やはり一番安い梅コース(2500円)を試すべきと年末に再び訪問したのであります。
海老は巻き海老ではなかったが、先付け、サラダ、魚3種、野菜3種に掻き揚げ(刺身はなし)に追加を数品頼んでお腹一杯となったのであります。
最安値コースでは量が足りず追加をしてしまいましたが、コースに出てこないタネも頼めるのでこの方が使い勝手が良いかもしれません。特に広島の牡蠣(400円)は大きくてなかなか美味しくオススメであります。

油がちょっと重い、天つゆが甘い、衣の姿が綺麗でないなど、欠点を挙げたらキリがないのですが、何しろそこらの高額天麩羅の半額以下。一口サイズの野菜に大きな価格差があるはずがなく、魚もキスや穴子と高級魚ではない。世の高額天麩羅の原価率が如何に低すぎるかを証明する廉価天麩羅屋「坊野」。見栄張らず支払額に充分見合った天麩羅で満足する方にはオススメの店であります。