タイアップ広告でいい加減なことを言うな、ル・プティ・トノー

友里がたまに購読している料理雑誌「ダンチュウ」。店や料理人、食材業者の宣伝ばかりなのですが、巻頭の浄水器メーカーのタイアップ宣伝に釣られて訪問したのが、フィリップ・バットン氏がオーナーシェフだというこの虎ノ門店であります。

野菜好きの友里が引っかかったのは、バットン氏が「食材と水だけで造った」と語ったポトフ。写真では鍋に沢山の野菜が投入され、それは美味しそうに見えたのです。
そしてバットン氏の「ポトフは夏の定番です」との言葉を信じ7月初めに予約の電話をいれました。念のために「ポトフをお願いします」と言って返ってきたスタッフの言葉に友里、椅子から転げ落ちそうになったのです。

ポトフはこの時期ありません

おいおい、自称オーナーシェフの話は嘘なのか。ダンチュウという具体名を挙げて説得し、やっと用意するとの言質を取ったのであります。
今にして思えば、このやりとりから提供されるポトフに期待できるはずがないのですが、楽しみに出かけた我々が席についてまず驚いたのが喫煙可という営業姿勢でありました。テラス席ではなく店内でも各テーブルに灰皿が常設されている時代錯誤に呆れたのです。

予約したポトフ以外のビストロ料理も食べようとまず頼んだのがエスカルゴ(6ヶ1400円)。
可もなく不可もなしを確認し、シャルキュトリー(2000円)へ。ニンニク風味のソーセージや生ハムはまったくの普通味でリエットは緩すぎ。サラミは添加物が入っているかのような食後感でありました。おばあちゃんのテリーヌ(1600円)も味濃いだけ。

そして〆に登場したポトフ(2人前5600円)、キャベツ、人参、ジャガイモ、バラ肉と食材は一応揃っておりましたが、業務用ストックを使用しているかと思うほどの化粧の濃いスープに唖然。とても水と食材だけで煮込んだ物とは思えない代物だったのです。
ダンチュウで自慢した「地味深い」ものをまったく感じ取れなかった

7月に用意されていない夏の定番のポトフ

如何に料理雑誌の編集者達がいい加減で食べもしないで宣伝に明け暮れているかを現す証左となった今回の訪問でありました。こんな鍋に6000円支払うなら、浅草橋の「ブラッスリージョンティ」のベッコフ鍋を2回食べた方がはるかに満足するというものです。

世界一予約が取りにくい寿司屋、鮨 三谷

四谷に予約がまったく入らない寿司屋があると聞いたのが昨秋。予約困難と聞くと何としても行きたくなるのが人情というもの。検証精神旺盛な友里は、店主の出身先を調べて更に訪問したくなったのであります。

街場寿司(客単価1万円代半ば)の範疇である伊勢丹新宿本店の「鮨魯山」は、内容の割に集客が順調。数千円お決まりを出すホールだけではなく、お好み・お任せ専門の奥のカウンターは、友里が知る限り平日でも昼時は満席であります。
銀座の高額江戸前鮨に比べるとかなりランクが落ちるタネ質と江戸前仕事ですが、都心の有名高額店を知らない伊勢丹セレブに支えられているのでしょう。その店長だった人の独立店がこの「鮨三谷」。数ヶ月待って昼に訪問できたのは今年はじめでありました。

ツマミと握りをオススメワイン(グラス対応)で食するのがこの店のスタイル。
まずは白魚のカワハギ肝合え。実際は肝で〆ているようですが、確かに肝は美味しいけど味強すぎて白魚の味わからず。
シャンパンで〆てから更に昆布で〆たという鮃も昆布が強かった。水だけで蒸したという鮑や越前蟹とバチコなど、出身店の店名ゆかりの大味好きな魯山人が涙を流して喜ぶ味濃いツマミの連続。
氷見のトロ鯖には唐墨とキャビア、真鱈の白子(小柱のスープ仕立て)にはトリュフ塩、アン肝は穴子で撒く、と江戸前とは異質の一仕事がしてあるツマミで、ワインや日本酒が進んだのです。

握りは主人から手渡しで供されます。古米使用という酢飯は特徴なし。コハダや穴子、赤貝とツマミに比べて驚くものはなかったのですが、最後の巻物にビックリ。干瓢巻きの中身半分が揚げ稲荷でありました。
昼でも結構飲んでの支払いが一人2万5000円前後に連れが気をよくして帰り際に夜の予約をしようとして私は椅子から転げ落ちそうになりました。なんと次回は8ヶ月先しか入らないというのです。

かくしてこの9月に再訪した友里、赤ウニにベルーガ、赤ムツにコノコ、筋子や穴子に唐墨など更にパワーアップ(珍味の大味)したツマミを確認し、握りでは半生バチコまで食してしまったのであります。
前回より更に飲んで味濃いツマミタネを食べての支払いが3万円。帰り際次回の予約を入れたら何と11ヶ月先の来年8月。世界一予約が取りにくく味濃いツマミを出す寿司屋であります。

即席パティシエのなんちゃって寿司、ポタジェ

朝のTV情報番組で紹介されていた六本木ヒルズの「野菜寿しポタジェ」。
野菜スイーツを生み出した若き女性パティシの店と聞いて胡散臭さを感じ取った友里、その日の昼にすぐさま飛び込んだのです。

このパティシエ、学習院大学卒業という学歴のウリに加えて、岸谷五朗も所属するマネジメント会社「アミューズ」所属のアーティスト・柿沢安耶とのこと。アーティスト一覧ではコックコート姿ですが、どうみても職人といったイメージではありません。
この方、職人としての腕よりビジュアルを一番の武器にしているのではないか。

更に調べてみると非常に面白い経歴なんですね。
パリへ料理の勉強で「短期留学」という形だけの箔をつけて帰国。レストランとパティスリーで研鑽を積んだとありますが、具体的な店名が明記されていないのは、まともな店ではなかったからか、あまりに研鑽の期間が短かったからなのか。
元電通勤務の男性との結婚を転機に、野菜を主役にしたレストランをなぜか「栃木県」にオープンし、世界初と自称する野菜スイーツ専門店で東京へデビューしてきたのです。現在は最初の店や麻布十番店を閉店したようですが、満を持しての一勝負がこの六本木ヒルズの野菜寿司店であります。

野菜のちらしや握り、天丼もありましたが友里が頼んだのは握りとちらしの両方が味わえるコース(3990円)。
まずはインカの目覚めの蒸し物にインカの目覚めのピュレと前菜2皿がジャガイモ攻め。ジャガイモが売れ残ったのか大量に発注しすぎたのでしょうか。

カウンター内にいるバイト然とした男性スタッフ2名が造る野菜の握りはとても寿司とは言えない代物。
酢飯?を先に握り、その上に野菜を置いていくだけなのです。運搬途中で野菜タネがはがれ落ちる場面も目撃してしまった。6ヶの握りは鮪やウニに見たてたトマトやカボチャのムースなど。中にはカレー風味のスパイスを使用しているものもありました。

ちらしは奥の厨房から直接運ばれてきます。何のことはない、カボチャ、茄子、ニンジン、レンコン、アスパラなどをスティック状に切ってご飯の上に並べただけの物。
野菜が摂取できると言ってもこんな細切れ野菜だけで4000円はあまりに暴利ではないか。CPあまりに悪過ぎで、野菜好きでも近づいてはいけない店であります。