初回の食後感が懐かしい、BISTRO GYORAN 魚藍

レストラン紹介雑誌で知った白金高輪駅近くにあるフレンチ。
骨太の料理を出すと人気だったオザミ系のシェフをしていたというキャッチとその美味しそうに見えた料理写真に釣られて訪問したのは夏の終わり頃。
カウンター(8席)とテーブル1卓のキャパで黒板に書かれたメニューから選ぶアラカルト対応の店であります。

まずは500円が強制的に乗せられるアミューズ。
オクラ、蕪、キャベツ(シュークルート)、トマトなどが盛られており、野菜好きの友里は嬉しかった。

夏トリュフと鮎のサラダ(2000円)も夏物とはいえトリュフもタップリで野菜も多く鮎も大きい。サッパリ味でこれまた満足したのであります。

天然スッポンとジロール、オーストラリア産黒トリュフのスープ(3000円)はスッポンの身もたっぷりで高かったけどまずまず。
夏鹿の炭火焼き(3500円)も添えられた野菜が多くて悪くはなかった。

そして友里が好きなシュークルート(2500円)はソーセージも炭火で焼くあど芸が細かくこれまた○であったのです。
1万円前後のワインを頼んだからか一人当たりの支払いが1万数千円となりましたが、予想が当たって美味しかったと満足して店を後にしたのであります。

食後感に変化があったのは一人で訪問した秋口の2回目。
アミューズは前回と代わり映えがなく、天然岩牡蠣の霜降りと塩水ウニの青柚子ジュレ(2000円)は牡蠣が2ヶしかない強気の価格設定。
しかもこの岩牡蠣、加熱しているのでクリーミーさがないんですね。ウニは余計で柚子も利いていなかったけど、普通に生の岩牡蠣にジュレをかけてくるだけで良いのではないか。

フレッシュポルチーニの炭火焼き(2500円)はこの価格にしてはボリュームが小さく身はスカスカの近かった。
宮城産ノルマン種馬肉ハラミ(3500円)は、ニンジン、シシトウ、ゴーヤ、トマト、茄子、パプリカ、サツマイモ、ズッキーニと野菜の種類は多いながら肝心の馬がイマイチで、ジュも甘過ぎと疑問のお味。
ワインは6千円のハーフボトルに抑えたけど一人で1万5000円を超えてしまったのです。この食後感では高過ぎではないか。

そこで再確認で訪問したのが秋真っ最中のことでありました。
結論から先に言わせていただくと、訪問するたびに客は多くなっているけど(今回は満席)、添え物の野菜の量が減ってくるなど食後感は減少の一途。

アミューズは相変わらず変化がないので他の料理の値付けが高からタダでも良いのではないか。
牡蠣のシャンパン風味(2000円)はシャンパン風味でも甘過ぎ。
エスカルゴのブルゴーニュ風(1500円)はポルチーニと共にオイル焼きの細切れで登場。ニンニクの風味もなくこれがブルギニオンなのか。

ジビエとして頼んだ青首鴨(半羽で3800円)も熟成感が出ているのにソースはジュ主体の軽いもの。
店規模からサルミソースの提供が無理なら、敢えて仕入れなくてもよい食材と考えます。

う~ん、行く度に食後感が落ちたと感じてしまう魚藍。使い勝手は良いだけに、食後感が昔に戻ることを祈るばかりであります。

 

スタートはかろうじて及第点、いつかどこかで食べた味、ロオジエ

婦人画報(11月号)にオープンを1か月後に控えたロオジエ新シェフの料理写真が出ておりました。その写真を見て友里

こりゃガニェールの二の舞になるぞ

と感じたのであります。
というのはこの新シェフのオリヴィエ・シェニョン、総料理長としてデビューした「ピエール・ガニェ―ル・東京」(青山)をわずか数年で閉店へ持っていった立役者の一人。
しかも赤坂で再開となった新生ガニェールではシェフとして再登場出来なかったからであります。

10/25のオープン、果たして料理はどうなったのか、レストランとして内装は本当に素晴らしいのか、読者から

内装は素晴らしいけど料理は普通味

との情報が多かっただけに、大きな期待(ネガティブな意味でも)をもって先日訪問してきたのであります。

料理の前に内装とサービスの問題点を1つずつ。
豪華で洗練された地下ホールでありますが、音響効果が良すぎて席間が広いのに他席の会話が丸聞こえ。というかざわつきすぎでうるさかった。

また自慢のサービスですが、我々についた新人?のメートル(中国人風カット)、態度が偉そうで連れの女性達から大ブーイングでありました。

それではアミューズから。

アミューズ(盛り合わせ)

 

フォアグラ、赤ピーマンのムース、カジキマグロを包んだキャベツ、トリュフクリームなどの一口料理でしたが、トリュフオイルなんてものを使うのはいかがなものか。

続くアミューズは栗のブルーテ カルダモン風味。

アミューズ(栗のブルーテ)

 

これははっきり言って美味しかったのですが、同伴者も皆感じていたのが

いつかどこかで食べたお味

要はオリジナリティなし、パクリとは言いませんが万人ウケする調理でありました。

フレンチで白トリュフ料理なんて出すなと主張している友里ですから、前菜で選んだのはネタのためとはいえ1万4000円もする白トリュフのリゾット。

白トリュフのリゾット

 

アルバ産と自称するだけに香りはなかなかでしたが、ホール全体にこの匂いが充満しますから、白トリュフを好まない客や予算の関係でこの料理を食べられなった客にとってはえらい迷惑ではないか。
しかもシンプルなリゾットではなくタップリのパルミジャーノに小玉葱やホタテ貝柱のムースまで投入していますから旨味が出すぎの掟破りであります。

色々試してみたかったので前菜をもう一皿。

雉のコンソメ

 

フェザン(キジ)のコンソメ(6500円)でありまして、フォアグラと黒トリュフを詰めたシャンピニオン風味のラビオリが入っておりかな~り濃厚な味。
これまたどこかで食べたかなというものでした。

メインはネットで評判のベキャス(ヤマシギ)。

ベキャス

 

しかしいくらジビエの雄だといっても1万6000円もするものなのか。
しかもサルミソースではなくジュ主体の軽いソース。たまたまかまったくクセのないベキャスだったのでこのソースでも良いけれど、クセのないジビエなんてクリープのないコーヒーのようなもの。
この手の食材は料理人の腕の差が出るサルミで食したいと思います。

関係者から伸び代がある(潜在能力のことか)シェフだから今後を見守るべきと漏れ聞くだけに、期待を込めての今回の評価は「喝」であります。

この価格設定では無理がある魚料理専門店、La Table d’Aki

読者からランブロワジーで長く魚部門を担当していた日本人が独立した店がブレイク寸前と聞いたのは今年はじめでありました。
なかなか機会がなかったのですが、この10月にやっと訪問することができました。

ラ ターブル ダキ

 

これが入り口かと迷うほどチープな造り。実際どこから入るのか最初はわからず周りをウロウロしてしまった。
しかも店名が「ダキヒロ」から「ダキ」に変更したというのに、入り口のロゴシールは変更されていませんでした。

店内は2人掛けで8卓だったか、かなり無理して詰め込んだようで席間が狭い。
でもコースがデザート含めて(アミューズも含め)5皿で65ユーロなので仕方がないかと席に着いたのであります。

いつもなら「とりあえずビール」なのですが、残念ながらここにはないとのこと、仕方なくまずはスパークリングウオーターで喉を潤わせました。
ワインリストを兼ねたメニュー(他に52ユーロの皿が1つ少ないコースなどの表記)もプアなところは仕方ないにしても、この店の大きな問題点は

空調がない?

座ってすぐに、入り口とホールがカーテンで仕切られている意味がわかったのであります。
カーテンがないとドアの隙間から冷風がどんどん入ってきてしまうんですね。
寒さに強い白人客でも寒がっておりましたから、これから更に気温が下がる真冬は心配であります。

それでは料理について述べていきましょう。まずはアミューズ。

手長エビとゴボウ

 

手長海老とゴボウなんですが、火入れ後にもかなり塩を打っているようで塩気がかなりきつい。口に含むと塩でザラつきました。お味も濃かったです。

次は鱈と椎茸。

鱈と椎茸

 

燦然と輝く鱈の下には細切れにした椎茸クリーム。よくある調理なので悪くはないのですが、これも塩が強くワインがすすみました。というかワインを飲まざるを得ない塩気の強さなのです。

ホタテのスープ仕立てはカボチャのペーストが中に入っているのですが、この皿からは塩以外に胡椒も強く感じてしまった。個別の料理としては悪くないんですがやはりホタテはポワレでの調理。

ホタテのスープ仕立て

 

続く皿はスズキとアンディーヴのオレンジソース。

スズキとアンディーヴ

 

目先を変えるためオレンジを使用しその甘さをこれまた塩と胡椒でカバーした調理でありました。
これも一皿だけなら良いのですが、すべての料理がポワレ+お手軽ソースの連続。
トーン(塩気と胡椒)も同じなので飽きがきてしまうんですね。
最後はデザートでアミューズ入れての5皿コースは終了となりました。

うーん、山本益博氏などが大絶賛していたので期待していたのですが完璧な期待外れ。
ランブロワジーに20年魚部門を担当というキャッチに、ヨイショたちは惑わされたのでありましょうか。

どんなに腕があったとしても、環境が整っていなければ真価を発揮できないのが世の定め。
なまじ3つ星という経歴が、廉価店では邪魔になっていると分析するのは世界広しといえど友里だけかもしれません。

フランスも日本と同じで肉より魚の方が高いのではないか。安い価格設定で魚だけでのコース設定は無理があると考えます。
このコース価格(ビストロ料理に毛が生えた程度)でデザート入れて5皿構成にするなら、肉を入れないとコース全体の質(食後感)を上げるのは不可能でありましょう。