読者からランブロワジーで長く魚部門を担当していた日本人が独立した店がブレイク寸前と聞いたのは今年はじめでありました。
なかなか機会がなかったのですが、この10月にやっと訪問することができました。
これが入り口かと迷うほどチープな造り。実際どこから入るのか最初はわからず周りをウロウロしてしまった。
しかも店名が「ダキヒロ」から「ダキ」に変更したというのに、入り口のロゴシールは変更されていませんでした。
店内は2人掛けで8卓だったか、かなり無理して詰め込んだようで席間が狭い。
でもコースがデザート含めて(アミューズも含め)5皿で65ユーロなので仕方がないかと席に着いたのであります。
いつもなら「とりあえずビール」なのですが、残念ながらここにはないとのこと、仕方なくまずはスパークリングウオーターで喉を潤わせました。
ワインリストを兼ねたメニュー(他に52ユーロの皿が1つ少ないコースなどの表記)もプアなところは仕方ないにしても、この店の大きな問題点は
空調がない?
座ってすぐに、入り口とホールがカーテンで仕切られている意味がわかったのであります。
カーテンがないとドアの隙間から冷風がどんどん入ってきてしまうんですね。
寒さに強い白人客でも寒がっておりましたから、これから更に気温が下がる真冬は心配であります。
それでは料理について述べていきましょう。まずはアミューズ。
手長海老とゴボウなんですが、火入れ後にもかなり塩を打っているようで塩気がかなりきつい。口に含むと塩でザラつきました。お味も濃かったです。
次は鱈と椎茸。
燦然と輝く鱈の下には細切れにした椎茸クリーム。よくある調理なので悪くはないのですが、これも塩が強くワインがすすみました。というかワインを飲まざるを得ない塩気の強さなのです。
ホタテのスープ仕立てはカボチャのペーストが中に入っているのですが、この皿からは塩以外に胡椒も強く感じてしまった。個別の料理としては悪くないんですがやはりホタテはポワレでの調理。
続く皿はスズキとアンディーヴのオレンジソース。
目先を変えるためオレンジを使用しその甘さをこれまた塩と胡椒でカバーした調理でありました。
これも一皿だけなら良いのですが、すべての料理がポワレ+お手軽ソースの連続。
トーン(塩気と胡椒)も同じなので飽きがきてしまうんですね。
最後はデザートでアミューズ入れての5皿コースは終了となりました。
うーん、山本益博氏などが大絶賛していたので期待していたのですが完璧な期待外れ。
ランブロワジーに20年魚部門を担当というキャッチに、ヨイショたちは惑わされたのでありましょうか。
どんなに腕があったとしても、環境が整っていなければ真価を発揮できないのが世の定め。
なまじ3つ星という経歴が、廉価店では邪魔になっていると分析するのは世界広しといえど友里だけかもしれません。
フランスも日本と同じで肉より魚の方が高いのではないか。安い価格設定で魚だけでのコース設定は無理があると考えます。
このコース価格(ビストロ料理に毛が生えた程度)でデザート入れて5皿構成にするなら、肉を入れないとコース全体の質(食後感)を上げるのは不可能でありましょう。