アルトビールが癖になる、IM FUCHSCHEN

昨年の11月に出張で2年ぶりに訪問したデュッセルドルフ。
前回の訪問ではミシュラン星付き店を主体にしたため時間と予算の無駄を実感した友里。今回のディナーはビアレストラン3店に絞っての、連夜アルトビール三昧でありました。

この店は昼のステーキ屋で遭遇した地元在住の日本人マダム達から教えられた赤い狐のマークで有名な人気店であります。

デュッセルドルフにはアルトビール(上面発酵の黒褐色のビール)の醸造所直営のビアレストランがいくつかありまして、このIM FUCHSCHENもその1つ。

アルトビール

 

この手の店ではアルトビールの提供システムが面白い。ホールスタッフはあらかじめ10杯ほどのグラス(200ccほどの小サイズ)をお盆乗せてホールをまわり、手を挙げた客に置いていくのです。その際コースターなどに線を書いて、頼んだ杯数を記録して最後の会計時に料理代に加算します。

印をつけたコースター

 

日本に帰ってきてもまた飲みたいと思うほど美味しかったアルトビールですが、1杯がわずか1.6ユーロと200円以下ですから驚きです。しかしこの黒褐色ビール、白ビールと違って日本で提供するドイツ料理店をみたことがありません。(横浜と札幌にはあるらしい)

客は皆このアルトビールを飲んでツマミや料理を食べています。ワインなんて飲んでいる客はいなかった。それではアルトビールが気に入って2日続けて訪問して食べた料理を挙げてみましょう。

ザワークラフト

ザワークラフトがなんと2.95ユーロ。安いのはビールだけではなかった。量が多く味もまずまず。

 

グーラッシュ

グーラッシュスープは6.1ユーロでしたが、豆含めこれまた量が多かった。

ピクルス

これはピクルス。この太いのが2本でわずか1.5ユーロですから驚きの物価であります。

 

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そして初めて食べた豚の生肉であるMETT(8.25ユーロ)。
ドイツでは管理された豚を生で食べる習慣があるそうです。牛のユッケと違って、かなり粘り感がありましたが、味的には目を瞑って食べたら豚だとわからないかも。

 

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そしてシュヴァイネハクセという、日本では焼きアイスヴァインと言われる豚すね肉。
日本では3000円以上で提供されるアイスヴァインの倍以上のボリュームで14.3ユーロですからこれまた驚きの物価安であります。勿論それなりに美味しかった。

アルトビールも安ければ、他のツマミや料理も激安のデュッセルドルフ。
かなりアルトビールを飲んで料理を食べても、一人当たりの単価は2000円前後で終わってしまったのであります。

日本では客単価4千円前後の「俺のフレンチ」や「俺のイタリアン」など立ち食い屋の鼻息が荒いようですが、デュッセルドルフでは座って食べられる店でもっとCPが良く安い。
来年以降もデュッセルを訪問する予定ですが、また訪問したいビアレストランです。

修業時代の岸田3つ星シェフを覚えていない、シェ・ミッシェル

事の発端は、10/12(金)に起きた「カンテサンス」の友里一行追い返し事件(同行者が予約していたのですが)。
その件でカンテサンスネタをブログで取り上げたところ、読者から「岸田シェフがパリで初めて修行に入った(飛び込みで採用された)大恩あるシェ・ミッシェルのシェフパトロンは岸田氏のこと覚えていない」との香ばしい情報いただいたのです。

シェ・ミッシェル

 

そこで検証精神旺盛な友里は確認のためにシェ・ミッシェルを先日訪問したのであります。
実は10月のパリ滞在時にも訪問していたのですが、酔いすぎて確認せずにホテルへ帰ってしまった。今回は準備万端、拙い英会話が通用しない可能性も考えて質問事項を書面で用意しての再訪です。

まずは店の印象を良くしようと、プリフィクスコースでは追加料金のあるものを選びスープを1皿追加。トドメは高めのブルゴーニュワインのオーダーでありました。

食事を終え、厨房も忙しくなくなった頃を見計らってその質問書(単なるワードの1枚)を取り出した瞬間、 その書面内容をチラッと見た女性スタッフが「シェフに直接聞けばよい」と厨房へ案内してくれたのであります。

残念ながらシェフパトロンのティエリー・ブルトン氏は不在でしたが、2年前から就任の新シェフの他、2年目という日本人スタッフがいたので早速得意の日本語で、岸田シェフを知っているかと質問。
日本人スタッフは「又かいな」いった表情で「誰も知らないけど、パトロンなら知っているかもしれません」と大人の対応をしてきたのです。

それを聞いていた新シェフの次の発言に友里、立っておりましたが椅子から転げ落ちそうになった。(正確には吹き出した)

キシダ、なんだそれは。パティシエか

2年前の就任とはいえ、3つ星シェフを輩出した店のシェフが岸田氏を「パティシエ扱い」。
パトロンが岸田氏を覚えていたら、彼らに一度は話をしたのではないか。7年勤めているという男性スタッフはじめ店のスタッフすべてが「WHO IS KISHIDA?」 であったのです。店辞めてから岸田さん、コンタクト取っていないのか?

厨房スタッフ

 

シェ・ミッシェルのパトロンに断られこの店で修業をスタートしなかったら、岸田氏はアストランス(最終修業先の3つ星転)どころか2店目の1つ星へも入れたかどうか。
いや、今とはまったく違った料理人人生を送っていたかもしれないのです。
友里は岸田3つ星シェフに言いたい。

友里を追い返す前にまずは世話になった恩あるシェ・ミッシェルへ挨拶に行ったらどうか

最後にこの店の料理について一言。カンテサンスの料理と違って、ソースや煮込みも用意された(野ウサギのロワイヤルまである)、引き出しの多い(岸田氏は引き出しが少ないと業界で言われている)店でありました。パリ訪問の際は検証にぜひ訪問をオススメします。

野ウサギのロワイヤル

 

コースにはスペシャリテが入っていない、オーベルジュ ド リル

長くミシュラン三つ星をキープしているアルザス地方はイルハーゼンにあるオーベルジュ。アルザスはかなり広いようで、ストラスブール空港から車を飛ばして1時間近くかかってしまいました。
訪問前は、一般のオーベルジュ(宿泊施設とレストランが同じ建屋)だと思っていたのですが、実際は別棟でありまして、宿泊の建屋は奥の別棟の「オテル デ ベルジュ」となっておりました。

オーベルジュ ドゥ リル

地方の宿泊施設内レストランとはまったく異なる外観に内装。高級感が漂い、客席は4つのホールに区切られキャパは50名以上ある思われる立派な「グランメゾン」であったのです。周囲はまったくの田園地帯なのですが、この建屋だけは別世界であったのです。

かなり辺鄙な地なので最初で最後の訪問と覚悟した友里、有名なスペシャリテを制覇しようとデギュスタシオンコースを見たのですが、肝心のスペシャリテが1つも入っていないのにビックリ。メートルに確認したところ、スペシャリテは重い料理なので何皿も食べられないからとのこと。よって無謀とは思ったのですが、単品注文でスペシャリテ制覇を試みました。

まずはパテ アンクルート。トリュフ風味を感じましたが思ったより重くはなく美味しい。

パテ・アンクルート

 

続いてはグルヌイユのムース。見た目と違ってかなり塩が強く添えられたほうれん草を食べないと厳しいものでありました。最近は時代遅れの感がでてきましたが、ソースなし&低温ローストの料理(カンテサンスが代表格)とは対極をなすオーソドックスな料理であります。

グルヌイユのムース

 

鮭のスフレもパイ包みでソースはブールブランのようにかなり濃厚。ただ肝心の鮭がちょっと生臭く感じてしまった。

サーモンのスフレ

 

そして単なるトリュフの丸揚げだと思ったスペシャリテは、なんと中にフォアグラがたっぷり入っていてソースはペリグーソース。ポルト酒もかなり注入されているようでこれまた濃厚な一皿であったのです。

フォアグラ入り丸ごとトリュフ

 

確かにこのようなスペシャリテ、2皿以上を楽しむのは非常につらい。4人の訪問で数あるスペシャリテを分け合うのが、極東の島国から初めてきたお上りさんにとって最良のオーダーであると考えます。

折角なのでワインはアルザスものが良いと思いますが、ブルゴーニュやボルドーの赤ワインはニーズがないからか古酒含め値付けが異常に安い。
季節感ある料理がスペシャリテにはないですが、ワイン好き含め話のタネにパリから1泊覚悟で訪問してもよい3つ星レストラン。出来れば隣接のホテルに泊まるのが一番です。