クレア(文藝春秋社)に釣られて損した、グルメ デ テルヌ

白トリュフが目的のアルバ詣でも今年で4回目。中継地として毎回パリに宿泊している友里、今年もネタ探しのため本場フレンチを訪問してきました。
まず選んだのが「泣く子もだまる老舗の肉料理」とクレア(文藝春秋社)の「絶品ビストロ最新事情」という特集記事で大々的に紹介されていた「レ・グルメ・デ・テルヌ」であります。

グルメ デ テルヌ

 

フランスのディナー時ではまだ早い20時だというのに店内はかなりの熱気。
クレアにでていた店主だけではなく他のスタッフも忙しいのか、友里の訪問をわかっていながら入口に放置されたまま席へ案内してくれません。嫌な予感がした瞬間であります。

しばらくして入口から2番目というイマイチな席に案内された友里、隣席にいた日本人カップルに声をかけられたのであります。「メニューと同時にクレアを持ってきますよ」

メニューと共にクレアが

 

でもこの店主、クレアで大きく取り上げていた牛リブロースのグリル(赤ワインソース骨随添え)ではなく、牛ヒレ肉の胡椒ソースの料理写真(雑誌では小さい扱い)を指して「これを頼め」みたいなことをいうのです。
この時点で「性格に難がある」とのファーストインプレッションが確信へとかわり始めたのであります。

エスカルゴ

前菜にエスカルゴを頼んでから、メインはこの牛リブロースのグリルを指さしたのですが、店主は首を振って「牛ヒレ胡椒ソース」を頼めと譲りません。
この不自然な対応に、ヒレ肉が余りすぎているのかと察知した友里、頑として店主のオファーを受け付けず、粘りに粘って何とかオーダーを納得させたのであります。

どこにでもあるレベルのエスカルゴ6ケを食べ終えいよいよメインの牛ロースが登場となりました。

牛リブロースのグリル

 

肉自体300gはあろうかと思われるビッグポーション。早速ナイフをいれソースをたっぷりつけて口に含んだのですが味がしないではないか。
ソースの色は濃いんですけどツメが緩すぎるのかソース自体の存在感なし。

取材の撮影時は「味をつけない」料理を造りますがそんな調理ではないかと思うほどソースもそして肝心の肉の旨みも期待外れに終わったのであります。
骨随もなんか脂カスみたいでありました。

また牛リブロースに添えられたフライドポテト、クレアは「止まらないおいしさ」と絶賛していましたが、塩が足りなくこれならマックの方が美味しいかも。

フライドポテト

 

店の性格を表していたのは店主だけではありません。
ワインリストを持ってきた男性スタッフ、リストの一番高いペトリュスを指さして「これはどうか」みたいな態度をとってくるんです。3800ユーロのワインでして、こんな雰囲気の店でなんともイヤミな対応と感じたのです。

「店主悪けりゃスタッフも悪い」このお店、クレアに釣られての訪問はお勧めできません。

和食出身の雇われ店長の店とは知らなかった、天麩羅しみず

流れ職人の集合体・寿司「ありた」に続いて訪問したリッツ・カールトン東京のダイニング。
この店の調理責任者も職人としての経歴は謎。しかも出身店は天麩羅屋ではないと聞いて友里、椅子から転げ落ちそうになったのです。

京都の和食店だそうですが、伝統的な京料理の店なのか、ミシュランで星を獲得している有名店なのか、はたまた単なる観光客専門の店だったのか。
ところが高級外資系ホテルの45階という立地に気後れして評価が甘くなったのか、食べログのド素人レビュアーの評価は非常に高く、東京の天麩羅屋としてはランキング1位の4.27点(訪問時点)。
これを知って友里、早速突撃を試みたのですが、わずか6席カウンターの小さな店だからかなかなか予約が入らず、やっと訪問できたのは数週間後の8月下旬でありました。

この店のウリは食べログによると和牛の天麩羅。コース制が基本の「しみず」、友里は迷わずこの和牛が提供される最高値コース(葵 1万5000円)を頼んだのは言うまでもありません。

まずは生ビールをとメニューを見たら、80CCで500円、200CCは1100円、350CCで1400円と破格の高値付けに驚嘆。

早速出てきた前菜、南京素麺は貝柱入りの淡い味付けでまずまずながら、鰹の酒盗は生臭く、鴨ロースや穴子寿司、明太玉子もダメ出し。
修業した和食系の料理がこれですから、天麩羅への期待はもともとなかったのですが更に萎んでいったのであります。

そして肝心の天麩羅、揚げる前の責任者のパフォーマンスに愕然。
なんと、野菜だけではなく海老、キスなど魚系まですべての食材を先に準備して(海老なら殻も剥いて)客前に晒続けるのであります。

これじゃタネが揚げる前に乾いてしまうではないか

乾いてしまったからか海老は揚げすぎで身はパサパサ。キスも小さすぎて火が入りすぎ。
そして目的の牛ヒレ紫蘇巻きは1つ目がレア、2つ目はミディアムの提供でした。でも自称和牛の旨みがなく、牛らしきものを食べているとしか感じなかった。

天麩羅屋で初めての経験だった太刀魚、臭みがあって残念な結果。
トウモロコシ、白オクラ、椎茸、芋などの野菜類も揚げすぎで、砂糖や味醂を入れ過ぎの天つゆもイマイチと、最後は貧弱なかき揚げで最高値コースは終了したのであります。

最高値コースだというのに海老と共に天麩羅の華である穴子がなく確認のため追加したのですが、小さいもので臭みが抜けていなかった。

接待だったので鮑の天麩羅も追加して高いビールにシャンパンをボトルで頼んでの支払いが2名でなんと5万円半ば。
紅花1番絞りオンリーと胡麻油なしの関西風天麩羅「しみず」、友里の再訪はあり得ません。

 

 

流れ職人の寄せ集め寿司屋なのか、ありた

長引く不景気で集客に苦戦する大阪外資系ホテルと違って、東京の外資系ホテル(都心に限る)は今のところ意味深なカップルに支えられた集客は順調のようであります。

このリッツ・カールトン東京、大阪の同名ホテルと違って値付けはかなり強気。 宿泊費はネットで見る限り大阪の倍くらいで安売り一休でも4万円を下りません。そんな東京店ですが、レストランではバカ高い値付けは不可能なのか、この寿司屋「ありた」は銀座の高額寿司店並でありました。

実は友里、リッツで食べログ高評価の店を訪問するつもりだったのに、早とちりでジャンルを間違えこの寿司屋へ突入してしまったのであります。狙った高評価店は、天麩羅屋「しみず」でありました。

さて1万3000円からあるコースを無視し、銀座鮨と比べるためにツマミから「お任せ」でスタート。 先付けの生湯葉(蟹身入り)は普通ながら、この時期(8月)旬のフッコ(鱸の小さいもの)が刺身ではなく「あらい」のような食感でがっくり。脂分が抜けきっているかのように旨みがなかった。

水ダコの提供にも疑問。江戸でこんなタネを扱うのは北海道から進出してきた海鮮寿司くらいではないか。 大きいだけのツブ貝もイマイチで鯖の炙りもガス臭さが際だっていてバツ。穴子はツメが甘過ぎで穴子の味が薄い。銀ダラ西京焼きも友里には甘過ぎでしたが、それでもこの日一番まともなツマミでありました。

では握りで挽回できるかというとそれも無理。まず酢飯が緩くて何の主張もありません。 コハダ、鰺、鰯と好きな光りものはいずれも不満。赤身は時期的に厳しいこともありこれまたイマイチ。玉子は当然江戸風ではなく、その後頼んだキスの昆布〆も挽回するものではありませんでした。

最後に頼んだのはどこで食べても無難に感じるネギトロ巻き。でも葱を叩きすぎたからかニンニク臭のようなものが強くなり、違和感をもって店を後にしたのであります。

HPでは職人・朝妻吉郎氏を全面に出しておりますが、この店責任者(朝妻氏)は果たしてどこで修業してきたのか。 数人いるカウンター内の職人は、オープンに際してそれぞれ違った寿司屋から流れてきたと聞きましたから、HPの宣伝文句

朝妻が握る究極の寿司

を額面通りに期待した友里、まだまだ未熟だったとしか言いようがありません。

ビールやシャンパンを頼んでの支払いが2名で5万円台半ば。 銀座の有名店と比べて高いとは思いませんが、食後感はかなり劣ります。同じホテル鮨なら以前取り上げたパレスの「かねさか」の方がマシと考えます。