居酒屋以上でも以下でもない過大評価店、神保町 傳

ミシュラン2つ星和食、食べログ第一位(当時)と巷の評価は最高の和食店。
特に食べログでは、評価数三千を軽く超えるヘビーレビュアーはじめ5点満点評価の連発。
さぞかし料理が美味しいだろうと期待して訪問した友里、これほどの期待はずれは人生ではじめてかと思うほどの食後感で店を後にしたのであります。

この店は常連重視、いや正確にはあの「壬生」と同じく自店しか知らない井の中の蛙客を常連として取り込んでいるパフォーマンスだけの創作和食店。客単価1万円台半ばの自称和食店であります。

カウンターは10席ほど。蛙の常連が多いからか一見客は1日1組しか入れないのではないか。予約時に一見か否かを先に確認され、訪問まで1ヶ月以上を要してしまった。9500円と1万2000円の2コースから当然ながら我々は高いコースを選択しました。

まずはイチジクの餡を乗せた茶碗蒸しでスタートです。連れがすぐ塩味に青カビチーズを使用していると気付くほど変わったお味。しかもアラレ入りで更に味濃くしており、最初の皿で濃い味好き専門店と気付きました。

本ししゃもと説明された唐揚げ、似非ししゃもと同じような大きさで、こんな大きな本物が存在すると知らなかったけど、当然ながら味は大味でイマイチ。
鰤のしゃぶしゃぶは味濃すぎ&甘過ぎのポン酢が鰤の質を隠していました。

えぼ鯛の焼き物にはやはり味濃すぎの野菜の餡かけ。この店では銀杏に人の顔(目鼻口など)の模様をつけるのがウリなのですが、気付かないフリをしていたら主人から先に「あれ、人の顔みたい」と訴えてきまして失笑。
こんな事で喜ぶ客と思われたのが心外だった。

 

サラダの量は多かったけど甘酢のような濃い味ドレッシングには閉口。しかも昆布味までつけて味音痴ウケを狙っているとしか思えなかった。
添えられた芋チップには人の顔に見えるくりぬき細工がしてあるのですが、

そんな暇があるならまともな出汁と味付けの修業をしろ

と友里は訴えたい。

 

蕪、芝エビ、鴨のスープ煮も味の濃さは天下一品。和食の炊き合わせとは別次元でありました。

そして鮭とイクラの親子丼の後、出されたデザートを見て友里は椅子から転げ落ちそうになったのです。
折敷を下げて出してきたのは新聞紙。よく見ると活字に丸がつけてあり、それを順に読むと「またきてね」「ありが十」。何とも子供だましの演出でその上に置かれたのが、スコップを器に見立てたデザート。ご丁寧にも「錆」を模倣した粉まで貼り付けてありました。

 

友里と連れ以外の客はすべて店主と顔なじみで、しかもこれらの料理を食べて「美味しい」と絶賛連発。
まともな和食を経験していない「傳」の常連のような客が多数いるから、関西人に東京和食をバカにされるのだとあらためて思った次第であります。

 

 

料理長交替で過大評価店の仲間入りか?龍天門

最寄りの恵比寿駅から距離があり、訪問客は近辺の住民が主体でオープン時の盛況感がまったくなくなった恵比寿ガーデンプレイス。

そんな苦戦を続けるこの地にあって、披露宴などのバンケットでなんとか堅調なのがウエスティンホテル。そのレストランの中で「食べログ」はじめ世間の評価が高いのが中国料理店「龍天門」であります。

昔何回か訪問しましたがほとんど記憶に残っていなかった友里、コラムを書いている経済月刊誌「ザイテン」の編集担当からのリクエスト(お気に入りの店らしい)に重い腰を上げたのは昨年11月半ばでありました。

結果から先に申し上げると、編集担当者には酷な食後感。巷の絶賛が完璧な過大評価であると判断するのに時間(皿数も)は必要ではなかったのであります。

まずこの店、広東料理を謳っておりますが、華である「鮮魚の蒸し物」の肝心な鮮魚の用意がない。当日に品切れていたのではなく、事前にリクエストしての「本日は入手できませんでした」ですから日頃オーダーする客がいない、つまり仕入れる機会がほとんどないのではないか。
友里が評価しないペニンシュラの「ヘイフンテラス」でも当日オーダーで対応しましたから、そのレベルがわかるというものです。

まずは前菜盛合せ。

前菜盛りあわせ

焼豚は煮物のようで蒸し鶏、車エビ、クラゲとすべてがイマイチ。

 

フカヒレ 醤油

フカヒレ すまし

フカヒレ姿煮(2種を頼む)は価格の割に本体が小さすぎで貧弱。醤油味は凡庸、すまし(衣笠茸入り)は鶏出汁が効き過ぎて味が濃いだけ。添えられたモヤシの処理も悪かった。

 

オリジナル地鶏(レモン風味)

ウリの1つであるオリジナル地鶏(レモン風味)、汁が多かったのは旨みのない鶏を隠すためなのか。地鶏の良さを感じないどころか、マックのナゲットと大差ないと言い切っても過言ではない食後感。

 

牛肉の黒胡椒炒め

牛肉の黒胡椒炒めは肝心の黒胡椒を感じずピンぼけ味。

 

麻婆豆腐

最初から期待しなかった麻婆豆腐、辣油と山椒(普通は中国の花椒ですがここではなぜか高知産山椒)を追加で頼んで甘い醤油煮込みのような味を補おうとしたのですが無駄な抵抗でありました。

 

冷やし担々麺

そしてネットで大評判の裏メニュー、冷やし担々麺の登場です。これまた甘く味濃いだけ。冷たくてその変な味の濃さが目立たないのには助かりましたが、この料理の何処が絶賛に値するのか。

5000円でビール、白・赤ワイン、そして25年もの紹興酒が飲み放題というプランは有り難かったけど、4万円突破(2名)でこの料理じゃ再訪はあり得ないと店を後にしたのであります。

最後に編集担当者の弁護として、昨年10月20日で料理長が交替していたとの情報を記して〆といたします。

 

通うたびに病みつきになってきた、ガネー舎

新橋駅から烏森を経てマッカーサー通りを越えたビル地下にあるスープカレー店。
近くの保険代理店に寄った際見つけて何の気なしに訪問した時はまったく印象に残らなかったのですが、昨夏に再訪してこの店のスープカレー(正確にはスープの薬膳味と追加トッピングのスパイス)に嵌まってしまったのであります。

あれは7月の暑い昼だったでしょうか。今回も海外旅行保険のため付近まで行った友里、店外に漏れるスパイスの香りにまた釣られてしまいました。

前訪で辛さが緩いスープカレーと記憶していたので、ダメ元でスペシャルマサラ(スパイスを炒めたもの100円)を追加した野菜カリィ(1100円)をオーダー。でも一口食べて以前の印象が吹っ飛んでしまったのです。

前回は30種のスパイスと15種の漢方をじっくり煮込んでいるとのキャッチを実感できなかったのですが、追加スパイスで激変したのか薬膳の余韻も強く感じたのであります。
野菜の種類と量も豊富であることも再確認。こうなると色々と検証してみたくなる友里、半年かけて昼のメニューをほとんど制覇してしまいました。

とりやさいカリィ(1300円)の黒マサラ(スペシャルよりコクがある150円)はブロイラーだけど鶏が結構美味しく感じてしまいます。黒マサラはそれほど辛くないので無償のテーブルマサラを更に添加した方が良いかもしれません。

続いてはスペシャルオイル(スペシャルマサラの一番搾り100円)にチャレンジ。
オイルはマサラより辛くないことを確認してまたタダのテーブルマサラを添加したけど、この薬膳味に嵌まってきてしまったからか食後感は満足。
続いてのスパイス挑戦は大辛オイル(島唐辛子を加えたスペシャルオイル150円)。それほど辛さ強くないけど、島唐辛子の風味が面白かった。

次にスープのベースを変えようと頼んだのは「とまとカリィ」(1200円)。
トマト2片が野菜カリィに追加されているイメージです。トマトの酸味は出ているけど、スペシャルマサラを添加しても逆にスープの薬膳風味やスパイス感が消えてしまっていると感じました。

そして最後がヨーグルト入りというカシミールカリィ(1200円)にガネーの心臓(島唐辛子主体 100円)であります。
ヨーグルト入りなので甘いだろうと期待しなかったのですが、結構辛くてしかも酸味、そして旨みも感じるなかなかの優れ味で癖になるスープカレーでありました。ガネーの心臓も風味があってマル。

スープカレーとしてはちょっと高いけど、全品制覇後もまだ通っている友里、スパイスピエロ、京橋屋カレーに次いでのオススメカレー店であります。

自称スパイスカレーで満足している大阪人の方々、上京の折はぜひ試してみてください。
目から鱗、いやスパイスと辛さで目から涙が止まらないことでしょう。