日本式イタリアンと店も認めた、キャンティ 西麻布店

自社の刊行物だけではなくTV含めてのマスコミ露出で木に登ってしまったのか幻冬舎の見城徹社長。恥ずかしげもなく自社発行「月刊ゲーテ」の「生涯のレストラン」で「賢人」と称されて絶賛していたのがこの店でありました。

37年前、本店に位置する飯倉の店を初めて訪問して以来両店合わせて1000回近く通い続けていると豪語する見城さん。
友里も芸能人に遭遇する機会が多いとの噂に釣られて初訪問したのが大学時代でありましたから、初訪問は見城さんと同時期でありましょうか。
女性を口説くためのツールとしての利用でしたが、その後は見城さんと異なりまして訪問数は10回に満たない。この西麻布は初訪問でありました。

その理由は、イタリア本場で食した経験から「ちょっと違うんではないか」と感じて足が遠のいたのですが、本場を知らない人には1000回訪問と「なくてはならないイタリアン」であり続けたと理解した次第であります。

この店の特徴は多種の前菜群でありましょう。冷菜、温菜含め何10種類も何台ものワゴンに乗せてテーブル近くで説明するスタイル。

前菜群 1

 

前菜群 2

 

 

ミーハーや芸能人、業界人など俄グルメにはウケるシステムでありますが、世界の高額店でこんなパフォーマンスをしている店が他にあるのか。
イタリアだけではなく欧米まで少しは経験のある友里、こんなことで客を釣る高額店を見たことがありません。(客単価の安いピッツェリアやトラットリアでは見かけますけど)

では肝心の料理について。

冷たい前菜 盛り合わせ

 

 

 

前菜は6種も取ってしまいましたが、ヒラメのカルパッチョは〆過ぎたように真っ白で勿論イマイチ。和洋含めて高額店では珍しいポテトサラダも塩強いだけで普通味。ラタトゥーユは緩く牛カルパッチョは胡椒だけで肉の味がしなかった。

牛カルパッチョ

 

 
逆に鰯の香草焼きは生臭さが目立ちました。

鰯の香草焼き

 

 
前菜で驚いたのは、小料理屋のおばんざいみたいなのがあったこと。蓮根など根菜の煮付けは見た目も味も筑前煮のようでありました。

それではパスタはどうかいうと、アーリオ オリオ ペペロンチーノ、まったく辛みがなく使用オイル自体がイマイチ。もう少しハイクオリティのオイルを用意していただきたい。

アーリオ オリオ ペペロンチーノ

 

 

メインは同じく賢人を自称する小山薫堂氏が「都会人に仲間入りを実感した胸キュン」と絶賛していたOssobuco。髄入りの骨ごと煮込んだ仔牛の煮込み(キャンティはトマト味)でしたが、これまた緩い味付けで友里の胸はまったく反応しませんでした。

オッソ ブコ

 

 

年配のホールスタッフは「うちは日本式のイタリアン」と盛んにエクスキューズしていたので顔バレしていた可能性もありますが、前菜6種で4000円前後、パスタが2500円前後、メインに至っては5000円超えと世界最高レベルの料理値付け。
赤ワインを1万円弱に抑えても2名での支払いが5万円を突破と前菜パフォーマンスの店では世界一高い店だとあらためて確信した次第であります。

秋元康氏がまともな店を紹介していた、ツバイ       ヘルツェン

賢人と紹介されて恥ずかしげもなく堂々と振る舞っているのが月刊ゲーテ(幻冬舎)の三賢人。
自分の会社の月刊誌に堂々登場してしまう見城徹社長に、最近は京都の老舗料亭まで手に入れてしまったのか儲け話には何でも首を突っ込んでくる小山薫堂氏。
そしてもう一人、サシ入れすぎのA欠和牛のような風貌の秋元康氏が「生涯レストラン」の1つとして紹介していたのが、この初台にある洋食店「ツバイ ヘルツェン」であります。

ほとんどお酒を飲まない下戸の割に濃い味好き、脂好きな秋元氏。
彼のオススメ紹介でまともな店に当たったことがなかったので期待せずに訪問したのは3月のこと。ところが結論から先に述べさせていただくと、予想外にまともと言いますか、MSGなど添加物を含んでいない料理は体に優しい料理であったのです。
大味好き、勿論MSG大好き(彼は入っているかどうかもわからないでしょう)と思える秋元氏にしては、彼の嗜好とまったく異なる料理を出してきたのですから友里は椅子から(実際は掘りごたつ式だった)転げ落ちそうになったのです。

狭い玄関で靴脱いでの掘りごたつ式のカウンター&テーブル席(狭すぎです)。
原則お任せコース(常連になればお好みを要求できる)のスタートは前菜盛り合わせでありました。

前菜の盛合わせ

合鴨、スモークタン、ザワークラフト、干し肉とこの自家製前菜は毎回定番だとか。量もそこそこあって味はすっきり。この時点で友里は負の先入観をリセットしたのであります。

カニクリームコロッケは添え物のポテトサラダと共にこれまた優しい味付け。おそらく添加物は不含ではないか。

蟹クリームコロッケ

ヒラメのピカタ、シェリー酒でソテーされた茄子が添えられたこの店のスペシャリテの1つでありますが、これは甘めの味付けで友里にとっては可もなく不可もなし。

ヒラメのピカタ

 

 

予約時に頼んでいなかたけど無理言って出してもらったハンバーグ。粗挽きではないのでワイルドな肉感には乏しかったけど、ウスターソース(これも自家製か)も上品で美味しかった。

ハンバーグ

 

 

そしてこれまたスペシャリテと言われるネギピザの登場です。

ネギピザ

ミートソースのようなネギが乗せられた薄いピザ生地なのですが、添加物なしでも記憶に残るお味。

 

 

同じく自家製のケチャップをかけたオムライス(中はケチャップライスではなくガーリックライスのようなもの)と共に、訪問時にはぜひ試していただきたい一品であります。

オムライス

 

驚くべきは支払額。ビールに白のグラスワイン、そして赤ワインをボトル(高級ではないですがそこそこ美味しい)を頼んでの支払いが2名で2万円チョイ。
店内は生活感出過ぎの雰囲気ですが、それを差し引いてもCPが良すぎるのではないか。

試しに再訪した先日も、ボトルワインを頼んで2万円前後で終わってしまいました。
秋元康氏の行きつけの店としては珍しくまともな店。機会がありましたら訪問をオススメします。

 

アイアンシェフ撃沈でも相変わらず盛況、くろぎ

あれは昨年の9月頃だったでしょうか。
数ヶ月に一度通っている「くろぎ」のカウンターで主人から打ち明けられたのが10月から再登場するフジTV「アイアンシェフ」での鉄人就任の話。
道場六三郎さん、坂井宏行さん、中村孝明さん、森本正治さん、陳健一さんなど、まともな外食好きが敬遠する店の料理人が集客維持のために露出する番組だと思っていただけに、数ヶ月先まで予約が入らない盛況な「くろぎ」の店主のアイアンシェフ就任話に、友里は椅子から転げ落ちそうになったのであります。

黙っていても客が押し寄せるのですから、わざわざTVに露出するメリットがあるのか。
リスクだけしかないと思うのですが、断り切れない常連からの要請なのか、はたまた単なる自己顕示欲を満たすためだけの引き受けだったのか。
いずれにしても更に予約が困難になると考えて、できる限りの今後の予約を入れまくって店を後にしたのであります。

フジTVの社運を賭けたといっても過言ではないアイアンシェフでありましたが、結果は敢えなくわずか半年で打ち切り。
5%未満という、ゴールデンの枠ながら深夜番組並みの視聴率しかとれなかったのですから仕方ないか。
しかし黒木店主にとってマイナスになってもプラスになることはなかったのではないでしょうか。
店のカウンター内と違ってTV画面ではオーラの発散どころかどこか自信なさげな雰囲気。

審議委員の結城摂子女史(服部幸應先生と公私ともに仲良い方)からイジメにちかい不自然な批判を受け続けたのもイメージダウンではないでしょうか。
「日本料理界の牛若丸」(でも既に30才代半ばのはず)との別名もついたようですが、半年間での戦績が3勝3敗(道場さんとの大晦日対決含む)ということからも、「くろぎ」にとってはあまり意味がなかったTV露出であったと考えます。

さて数ヶ月ぶりに訪問した4月の献立の主役はこの時期が旬の筍。焼き物や炊き込みご飯で十分堪能することが出来ました。

この店が人気の原因は高額和食を志向している中ではCPが良いと思わせているところ。
オープン当初は9000円弱だったコース価格が店名の変更(以前は「湯島一二一」と共に1万数千円に値上がり、現在は更に高くなったように感じるのですが、客毎に用意されたお品書きに書かれている料理以外の皿が供されるところがお得感演出で客心理を考えた見事な戦略。
主人と2番手(パートナー)の接客も特に女性ウケが良いようで、最近は半年先でないと予約が入らなくなったとの噂も漏れ聞きます。

料理のクオリティを追求し出したら更なる高額化が避けられないのが和食の問題点。
修業元の「京味」の客単価(4万円前後)に迫ることは出来ないでしょうから、常連の高質化要求とどこまで折り合いがつけられるかが、今後の課題と考えます。