これで3つ星の有力候補とは、Hajime

昨年5月のオープン時、大阪で初めてのグランメゾン誕生かと食通の間で話題になったと聞きました。確かにウエーティングやレセプションもあり、個室も完備していて見てくれはグランメゾンでありますが、料理はコース1本(1万5000円)と貧弱。ヨイショライターは年末に発売される「ミシュラン京都・大阪版」で3つ星間違いなしと騒いでいますが、こんな店に安易に星を与えて良いのでしょうか。経験不足のミシュラン調査員の評価に注目です。
金曜の夜だというのに店内は悲惨。10卓ほどのホールに客は我々を入れてわずか3組。初っ端から嫌な予感がしたのです。
洞爺湖のブラスの店から独立したというシェフの料理、簡単に言えば同じ皿で食材に温度差をつけて奇を衒い、甘い味付けでオコチャマ舌を満足させ、低温ローストで食材の質を隠しただけのものであります。
その日の料理はメインまで5皿。その前にアミューズが3皿出ます。イチジク、桃、リンゴなど果物を使った甘い味付けは食欲を減退させるだけでシェフの狙いがわかりません。ブラスの「ガルグイユ」を期待したサラダ仕立ては、温めた野菜に添えられたトウモロコシのソルベのミスマッチに私の胃袋は拒否反応を示しました。サワラの低温調理も見た目は生っぽくて気持ち良いものではありません。肉なら未だしも魚にこの調理をしたら直ぐ冷めてしまうというデメリットを知らないのでしょうか。コンマ1度単位で温度管理をしていると能書きが凄いフォアグラでしたが、単なる冷製テリーヌではないか。しかも塩が緩すぎです。これまた低温調理なのですが、味付けと食材の質に拘れと私は言いたい。次の栗のスープは最悪でした。なんとトリュフのアイスを落としてしまうのです。言葉を失って評価する気もおこりません。そして最後はやはりお約束の仔羊の低温ローストでした。甘い、温度差、低温調理と何とかの一つ覚えのオンパレードで飽きてしまうコース構成。しかし一番の問題は皿毎に添えられるパンです。料理に合わせて仕入れるそうですが、主張しすぎる味わいでまったく余計。これでお腹を一杯にしたい戦略と読みましたが、まったくの邪道。ワインも値付けは高く、リストも充実していません。
オバサマ族のランチ限定店と私は考えます。

この店もただの過大評価か、喜寿司

口コミグルメサイトや寿司好きブロガーが高評価している人形町の老舗寿司屋。店構えがいかにも江戸前といった雰囲気で期待していたのですが、昼夜数回訪問しての結論は、「高いだけの寿司屋」でありました。
100年に一度の不況と言いながら、店内は盛況です。地元客、常連客が多いのが特徴でしょうか。主人とそっくりの息子さん、そして雇われ職人の3人が付け場で対応しています。
ツマミは原則寿司タネが主体。あまり趣向を凝らしたものはありません。刺身の盛り合わせを食してこの店のタネ質レベルが直ぐわかりました。悪くはないけど銀座の高額人気店に並ぶものではありません。その日のオススメと言われたカジキマ
グロ、江戸前を名乗る高額鮨屋で食べた経験がありませんが、わざわざ食べるタネではなかった。赤貝、鯛、昆布〆の甘鯛も当然並レベル。炙られた穴子、タイラガイの磯辺巻きなどあまり好きではないツマミが出たこともありますが、全然印象に残らないのです。
握りは期待出来るのかと言いますとそれも難しい。生姜は辛すぎて好みに合わず、ジャーに入れている酢飯もまったく特徴がないのです。タネ質が普通で酢飯も仕事も普通、だいたい本日のオススメのカジキマグロを握りにも出すのはいかがなものか。オススメとは「余りすぎ」という意味なのかと勘ぐってしまいます。
この店では他店にない握りが評判です。烏賊の印籠詰めなんですが、単に烏賊の中に酢飯(握りのものとは違います)を入れているだけで、何の旨みも感じません。鮪は赤身、中トロともたいしたことなく、白身の鯛やヒラメ、〆もののコハダもまったく印象に残らなかった。茹で海老も冷たくて旨みなし。〆の干瓢巻きだけはまずまずでありました。
前回の訪問で唯一美味いと思ったアン肝がこの日売り切れだったこともあり、2万数千円の支払いはあまりに食後感が悪すぎです。この店をそのまま銀座へ持ってきて客が入るかどうか。とても通用するとは思えません。
前回の訪問(昨年末)では、ツマミにコッペ(ズワイの雌)がでて太巻きのオミヤを頼んだからか一人で簡単に3万円を突破。普通のタネに普通の酢飯と仕事、その割に高すぎる支払額。店構えと立地の妙で生き残るただの高額寿司屋と考えます。

一度食べたら癖になる、天香回味

台湾系の会社がなぜ「モンゴル鍋」を出すのかわかりませんが、集客が順調なのか店舗数が激増している薬膳火鍋チェーンであります。
私が最初にその存在を知ったのが銀座店。銀座ベルビア館がオープンした時、下調べの為に7階へ上がってフロア全体に広がる何とも言えない癖ある匂いに驚いたのです。匂いの発信元は「天香回味 銀座店」の薬膳鍋のスープでありました。何だこりゃ、ラーメン屋やモツ料理だけではなく、和食や蕎麦もこのフロアにありますから、他店にはえらい迷惑でありましょう。蕎麦の香りなんて吹っ飛んでしまいます。
怖いもの見たさでまずはランチで「薬膳火鍋」にチャレンジ。数多くのエキスが入った白と赤の2種のスープに、豚肉、キノコ、野菜を入れてつけタレなしで食べるのですが、化学調味料を添加せず天然素材だけで長時間煮込んだスープにニンニクが溶け込んで、香り以上に味わいが独特なのです。ランチの割に多めの具もあっという間に食べきりました。その後も数ヶ月に1度の割合で通っていたのですが、元々少なかった客がますます減り続ける他店に比べ、この店はどんどん客が増えてくるではありませんか。先日など満席で入店を断られたくらいです。癖になるこの火鍋、ぜひ夜のコースを試したいと考えて8名で予約したのが今春でありました。1週間以上余裕があったのに銀座店は8名では無理ということで、大箱な「銀座中央通り店」へ予約先を変更しました。
あのH&Mが入っている「G-Cube Building」の9階なのですが、中央通りから入店できず裏の入り口に回らなければなりません。面倒くさい。中央通りから直接入れないなら「中央通り店」を変名しろと私は言いたい。店内はシャンデリアを吊るなど一見豪華に見えますが実は普請は安そう。でも超満席でありました。
頼んだコースは、ラムチョップ、アワビスライス、フカヒレ、馬のコラーゲン、サメのコラーゲンなどてんこ盛りの8000円コース。すべてを鍋にぶち込んで食べるのですが、キノコ類の多さと総量は半端ではありません。
豚肉もたっぷりありましたが、ヘルシー食材を満腹になるまで堪能しての支払いが1万円突破は安くはないですが、この原稿を書いているとまた再訪したくなるほど癖になる鍋料理であります。