東京進出はあまりに無謀、寿司 はせ川

以前はグッズショップの出店に興味を持っていたタレントですが、最近は飲食店へシフトしてきたようです。西麻布に、和田アキ子の居酒屋に続いてオープンしてきたのが島田紳助の「寿司 はせ川」であります。
ジョージアンクラブの正面のビル2階。オープンして1ヶ月経つのに階段脇にはタレントから送られた祝花のプレートが貼り付けたままです。彦摩呂、うつみ宮土理、石田純一などなど。このセンスに料理のクオリティを期待する食通がいるとは思えません。
店内はカウンター14席に個室が7室と大箱で、職人たちはイヤホンとマイクをつけていてまるでダイニング。まともな寿司屋に見えません。カウンターに向って右端には鮑やサザエが入った水槽がありましたからますます興ざめです。
寿司会席もありますが寿司コースは1万円と1万3000円に2万円(予約だけ)のお任せもあります。まずは様子見と真ん中のコースをオーダーしました。
突き出し、先付けのタラ白子や白バイガイ、海老芋寿司は廉価な和食屋レベル。青森ヒラメ薄造りはパサパサで旨みなし。メダイの幽庵焼き、鰻の柳川風もわざわざ寿司屋で提供するレベルではない。これらの料理はシェアのため大皿でカウンターに並べられます。奥行きが不自然に広かった意味がわかりました。
肝心の握りも駄目。産地名付きですが、鯛、戻り鰹、ヒラメの質が良くない。境港のズワイと言たったが解禁の11月はまだ先だぞ。穴子は生臭く、馬糞ウニは明礬がきつい。そして握りは茗荷もいれてわずか10個で巻物なしと総量も少な過ぎです。でもこの握りなら追加する気がしません。その後他店でお腹を満たしたのですが、2万円のお任せを頼まなかったのがせめてもの救いでありました。
ビールグラスはブラウンマイスターのロゴ入り、廉価な店ではないのですからメーカー提供品を使うのはいかがなものか。しかも洗い場が一緒なのか、グラスが生臭かった。
紳助は東京のまともな高額鮨屋へ行ったことあるのでしょうか。若い社員から「東京で勝負させてくれ」の願いで進出したそうですが、まったくのリサーチ不足。近辺の鮨屋とまともに勝負できるレベルではなく、タレント好きでミーハーな方にしかおススメできない寿司屋でありました。

ホテルの鉄板焼へ行くよりはこの隠れ家へ、馨

ミシュランガイドで見事2つ星を獲得した西麻布の「臼杵ふぐ山田屋」。皿だけで(フグの質)判断して「味満ん」(1つ星)の上だと思うフグ好きが存在するとは思えません。その山田屋と同じ隠れ家的マンションの地下フロアにあるのがこの「鉄板焼 馨」であります。
キャパ20名前後、カウンター(5名までの個室もある)主体の鉄板焼屋ですが、テーブル席ではシャブシャブも食べられます。アラカルトよりコースが主体で、9450円、1万2600円、1万6800円の3コースはホテルの鉄板焼より安めの設定です。まずはホテルの中間価格に値する最高値1万6800円を試しました。
先付けはモッツァレラの味噌漬け。変わった味で評価不能。前菜盛り合わせは韓国の九節板のように9に仕切った器に一口料理が9種。ヅケ、ホタテ、烏賊などアイテム豊富ですが造り置きで平凡。そしてウニの笹焼きは山椒と海苔、塩の味付けでしょっぱ過ぎ。ここまではイマイチでしたが、その後は持ち直しました。通常は黒鮑か伊勢海老の選択なのですが、4名以上だったので両方でてきました。黒鮑をベルモットソース(肝はガーリック)、伊勢海老はそのミソの味付けで、そこらのホテルの星付き鉄板焼より大きさ、質も良いのではないか。そして山芋サラダの後に和牛ステーキ150グラムが野菜と共に供されます。これまたホテルの店と遜色ない出来。〆のガーリックライスも追加料金がないのが魅力。ステーキの切り落としを使用しており美味しかった。
ワインもノンヴィンのシャンパンが8400円と値付け安く、白、赤ワインも5000円からあり、ブルゴーニュ、ボルドーも8000円前後からと良心的です。
料理人はプリンスホテル出身と聞きましたから鉄板調理もホテルレベル。この1万6800円、ホテルではせいぜい車海老かロブスターで鮑や伊勢海老は出ない価格帯で、ワインの値付けもホテルに比べてかなり安い。肉質や調理技術に差が出にくい鉄板焼では如何に内容が豊富か、ワインの値付けが安いかがCP判断の基準になります。ホテルで同じ内容のコースとワインを頼んだら確実に5割近く支払が増しますから、接待などでどうしても鉄板パフォーマンスが必要な場合は、この隠れ家店をおススメします。

名古屋のバブルを実感、吉兆 名古屋

今回の食材偽装問題で「吉兆」が5つの会社に分かれていると初めて知った方も多かったのではないか。湯木姓を名乗らない京都吉兆の三代目徳岡邦夫氏、TVなどマスコミ露出が激しく強気な店舗展開をしており、今年名古屋ミッドランドスクエアの41階に出したのがこの「吉兆 名古屋店」です。
船場のおかげでキャンセルが多いと嘆く徳岡氏を知り、名古屋に一泊した私は昼の訪問を思いついたのです。今なら飛び込みでも入店できる、京都グランヴィア店は結構空いていた、との思惑でしたが入店してビックリ。店内は個室もホールも喧噪で最後のテーブル席だったのです。
メニューを見て唖然。京都各店では6000円以下で提供される松花堂弁当がありません。最低値はミニ懐石の1万円。他は1万5000円、2万8000円と嵐山本店の次に高額な店でした。
仕方なく頼んだミニ懐石、食後感は最悪。八寸は柿なます、イクラ、黒豆、トンブリ、サーモンなど食材、調理とも期待外れ。和食の生命線のお椀のタネは蕪、シメジ、名古屋コーチンの鶏団子。団子はなんと山椒を利かせてありました。こんなタネでは繊細な出汁は合わないと考えたのか、カツオが強すぎるバランス悪い出汁。その割に余韻がありません。造りの鯛はクラッシュアイスに直に載せられています。創作和食で昔見た手法ですが、これでは溶けてベチャベチャになるではないか。シビ(鮪)の握りも酢飯が甘く醤油のジュレのようなものを乗せてあります。鰆をエリンギでまいた揚げ物もモロミ醤油を付け合わせ、〆の鯛飯も生姜が強すぎるなど、これが京都に本店を置く名門和食の支店なのか。味付けは素人受けを狙った濃い味や変化球の調味料を多用していてまるで創作和食です。京都吉兆への期待はもろくも崩れ去りました。
ビールもドライの中瓶が1000円と仕入れの3倍以上はやり過ぎです。
料理高い、ビール高い、調理は味濃くまるで創作和食、とこの店がなぜ満席なのか。名古屋がバブルであるとは聞いていましたが、新幹線で30分程度と簡単に京都へ行けます。名古屋の方にはこのCP良くない店へ行くより、足を運んで本物の京料理を堪能されることをおススメします。もっとCP良い和食店は京都に沢山あります。