この食後感で満席なのが不思議、マサズ キッチン

客層が悪いから味がイマイチなのか、味が悪いから客層がイマイチなのか。ミシュランの星の影響もあるでしょうが、盛況さと料理がこれほど反比例している店は珍しい。何回転もさせているようで、我々が指示された20時半に訪問したのは初夏でありました。

ドアを開け店内の雰囲気を見て、友里は覚悟を決めたのであります。カップルや女性客グループの他、如何にも味がわからないといった業界人が彼方此方に。
オープンキッチンで鍋振っているスタッフは如何にもバイト然とした人たちばかりで、鯰江シェフの姿は確認できなかった。フカヒレステーキ以外は何を出されるかわからないコース(7850円?)を頼む客が多い中、我々はアラカルトに挑戦しました。

まずは本日のオススメとあった庄内天然山菜の炒め(2000円)。日本最高峰の過大評価店「アルケッチャーノ」の訪問直後だったので「庄内」に思わず脊髄反射してしまいました。
果たして出てきた庄内山菜は量も少なく味わいにまったく深みなし。
ピータン盛り合わせ(1000円)は変な臭みを消したいのかパクチーがてんこ盛りで美味しくない。よだれ鶏(1800円)も肝心の鶏の味がしなかった。

ではエビチリ成都風(2800円)はどうかというと、スープ仕立だけでも疑問でしたが、単純に辛いだけでツメの緩い調理。トマトと玉子の炒め物(1400円)も量が少ないだけが特徴か。茄子の山椒炒め(1200円)は醤油味だけで肝心の山椒が効いていなかった。

そして本日のメイン、土鍋の麻婆豆腐(2000円)は豆板醤を入れていないのか味が緩すぎで友里の好みとは真反対。なぜか汁らしきものがあった汁なし担々麺(1400円)も、麺が直ぐ固まって食べにくかった。
どんなものかと最後にとった黒酢サンラー麺(1200円)だけは量が多かったですが辛いだけで酸っぱくない。豚肉は臭いだけとこれまた散々。

この日食べたすべての料理にダメ出しでしたが、特に麺ものは粉っぽいというか本当に不味い。間違ってこの店に入店したとしても決してオーダーしてはいけません。
月刊誌の特集で昨年訪問して食べた麻婆や担々麺はこれほどひどくなかっただけに、ミシュラン掲載でかえってクオリティが低下してしまったのではないかと考えます。

料理とワインの値付けが高過ぎる、ベカッチャ

店名はイタリア語で山鴫というこの店に食べ仲間と訪問したのは10月半ばでありました。
六本木ミッドタウン沿いのバブリーなビル地下。看板はなく隠れ家的な雰囲気であります。
カウンターもありますが店内は一見リストランテ風な豪華な内装。でも肝心の客がほとんど見当たらないのです。
40人以上収容できるキャパながら、この日は我々を入れてわずか3組でありました。メニューを目にしてその客入りに悪さの理由がわかったのであります。高い、あまりに値付けが高過ぎるのです。

コースもあるようですが種類が多いアラカルトの値付けは超高額店並み。前菜は1800円?4500円で12種。4500円は鹿のタルターラです。
パスタ類も1800円からありましたが、最高値はトリュフのパスタ4800円。メインは5400円以上で、他にグリルとして赤身肉(短角牛)が100g3000円、和牛が100g3500円。火入れを考えたらそこそこのポーションが必要ですから5000円分は頼まなければならないでしょう。

まずは前菜として野菜のヴァポーレ。わずか7種の野菜が1片ずつしかありません。CP悪すぎ。リコッタチーズとバターの味付けですが、イタリアンとしてはかなりバターが強過ぎです。
なぜかあるモンサンミッシェル(フランス)のムール貝はどうってことなく、その日のオススメの1つ、ポルチーニのタリアテッレは可もなく不可もないけど量が少ない。後日食べた西麻布のトルナヴェントの方が遙かに上でありました。
肉はグリルで鹿と赤身。2名分ずつ頼みましたがやはり量が少ない。塩は強いけど質や焼きはこれまた可もなくなく不可もなしです。

高いのは料理だけではありません。ワインも高すぎです。
一番安いワイン(白・赤)でも9000円前後、たとえばシチリアのタンクレディは小売りで4000円前後ですがこの店ではなんと1万800円。店売りとしても2割は値付けが高いのではないか。白・赤とも最安値のワインを頼んでも一人当たり2万5000円と破格の支払額に驚きました。
お腹が満たされず帰宅途中でラーメン屋に惹かれそうになったのを我慢して自宅でレトルトカレーを食べてしまった友里。この空腹感と強烈な支払額のダブル攻撃を考えると再訪はあり得ません。

来年もまだ3つ星を張るつもりか、かんだ

ある和食店主から、「ミシュラン日本版は、うちと『かんだ』を選んで最初から躓いた」との自虐的ジョークを最近聞きました。今年久々に訪問してあまりの食後感に呆然として取り上げる気力をなくしていた友里、この一言でやる気をでたのです。

どうせ無理だろうと当日電話したところ2回転目の8時半なら大丈夫と言われて急遽駆けつけたのが初夏。コースは3択で1万5000円から5000円刻みで2万5000円まで。
おいおいオープン当初は1万円コースのみ(すき焼きを追加すると5000円アップ)だったのに、3つ星になって価格だけは成長し続けているのに驚きました。
3コースでどう違うかとの問いかけに、1万5000円と2万円の違いは主に量、2万5000円は食材が異なるとの回答で我々は迷わず最高値を選んだのです。

結論から先に言わせていただくと、味が目茶苦茶濃いだけの居酒屋料理のオンパレードでありました。
まずはズイキ、蓴菜、冬瓜の餡かけ。ゴマが余計でしょっぱいだけの味。その夜の食後感を諦めた瞬間です。
長良川の稚鮎もイマイチ。数日前に食べた鮨屋(宮葉)の方が遙かにマシでありました。クラッシュアイスに直乗せの造りはなんと「常磐」のコチと言うではありませんか。正直な点は評価しますが、汚染水を海中放棄したニュースがまだ忘れられていないこの時期、高額店ならせめて産地を変えて欲しかった。

お椀は毛蟹とグリーンピースの真丈。出汁は濃くなかったですが、3星レベルではありません。穴子寿司も味濃いだけのイマイチで、天然鰻はあまりに小片で味わからず。
宮崎牛のヒレカツは1時間かけて揚げたそうですが、やはり小片が3切れだけ。しかも脂っぽくて温すぎでまったく美味しくない。
スッポンの煮物もドロドロしていて俗に言う丸鍋とはまったく別物。

そして最後でまた驚かせて貰ったのが〆の「桜エビのかき揚げ小丼」であります。コース価格2万5000円の3つ星和食の〆に出すご飯物なのか。ここは天麩羅屋なのか。
いやヒレカツまで出すなんて単なる「和風のうまいもの屋」ではないか。いや実際は美味くないからその範疇からも逸脱しているミシュランを転けさせた3つ星和食であります。

果たして2012年版でも3つ星を張って更にミシュランを転けさせるのでしょうか。