京味出身の店ではじめてハズれた、小いわ

今の東京和食、人気店だけ見ると「石を投げたら京味出身店に当たる」のではないでしょうか。
「井雪」、「くろぎ」、「笹田」、「星野」、「もりかわ」から短期間しかいなかった「車力門ちゃわんぶ」と、かなりの勢力になっております。いずれも巷の評価が高く、特に「井雪」は1ヶ月先以上、「くろぎ」に関しては半年先まで予約が入らないという盛況さ。
この不景気で集客に四苦八苦している店にとっては羨ましい限りでありますが、知り合いの編集者からもう1店京味出身の店があると聞いたのが、六本木にあるこの「小いわ」でありました。食べログの評価も4点超えと高評価だったので、早速訪問したのであります。

場所は六本木のハズレ、家庭料理屋も入る雑居ビルの2階。主人と女将二人、カウンターだけの小さな店であります。オープン当初は1万円コースが主体でCP良いと評価されていましたが、現在はなんと1万6800円コース1本と、強気の設定になっておりました。

まずは菱蟹とうるいの和え物でスタート。淡い味のジュレ乗せですが、肝心の蟹がイマイチで美味しくない。
フグの白子揚げはこの時期(3月)にしては小さく衣しか味がしません。蛤の裸煮(はだに)と称するもの、トマトみたいな変わった味がする餡と感じて確認したら、ウスターソースに醤油、葛をつかったものだとか。ソース(アミノ酸調味料入りかも)を堂々と和食の隠し味に使用する大胆さに脱帽しました。

コノコはお酒が進み○。造りは本アラの昆布〆でしたが、この食材を昆布で〆る必然性を感じなかった。ただし島唐辛子醤油で供される鯖は悪くはありませんでした。
食べるかどうか聞かれた尾の身、1週間前に「くろぎ」でも生を食べましたから、仕入れ先は同じだったのか。

そして短角牛の焼き物(タタキ風)、甘めの出汁の筍と鯛の子の煮物、丸鍋、そして白飯と香の物で〆となったのであります。
牛、煮物、丸鍋、食べログで絶賛の白飯にも何ら傑出したものを感じ取れなかった友里、最後のお会計でその傑出した値付けの高さに驚いたのであります。
オススメの日本酒を何種も頼んだとはいえ、一人当たりの支払いが3万円弱。この雰囲気(内装がチープなだけではなく焼き物は女将が担当している)でこの支払いはあまりではないか。

食材、調理と何ら傑出さを感じなかった、石投げたら当たる京味出身店。創作和食の範疇なだけにこの支払いではオススメできない店と判断した次第であります。

テツヤのシンガポール店は鉄板焼きだった、Waku Ghin

シドニー、いやオーストラリアに「テツヤ」ありと聞いていた友里。その支店がシンガポールに出来たと聞いて、先月出張の際に予約を入れたのであります。

What  is テツヤ?

と疑問の読者(友里も数年前まで知らなかった)に簡単に説明しますと、シドニーにある日本料理店「TETSUYA‘S」は世界のセレブも絶賛する人気店。
オーナーシェフの和久田哲也氏はオーストラリアで最も有名な日本人だと言われているようです。

地元にはこのシンガポール店が「予約が幾分取りやすくなったが、今度はパスポートが必要となった」とまで紹介されたとのことで、友里はカード会社経由でこの「Waku Ghin」に予約を入れたのであります。しかしこのお店、結構シビアなんですね。カード番号やサインを書いた予約確認書の提出が予約確定の条件でありました。

場所は屋上の船型プールで有名なホテル「マリーナ ベイ サンズ」の付随商業地域。なんとカジノスペースにありました。厳密だった予約システムやテツヤのネームバリューから店内は超満席を予想していたのですが、ダイニング調の店内は閑古鳥とまでは言いませんが結構寂しい状況が意外でありました。

個室に通された友里たち、目の前に広がる鉄板カウンターを確認して驚いたのであります。座るや否や、料理人が箱に入れた色々な使用食材を見せるプレゼンを見て、「ただの鉄板焼き屋」であることがわかったのであります。

コース1種(400S$ 3万円弱)しかなく、スタートの米酢とジンジャー風味の牡蠣は甘過ぎでがっくり。
さよりのマリネには「あまおう」が和えられております。甘すぎてマリネに合うはずがないミスマッチ。
スペシャリテという牡丹海老、ウニ、キャビアもどこにでもある代物。的鯛のコンフィはまずまずでしたが、タラバガニ、鮑、オマール、オージービーフ、和牛と続く鉄板料理は日本の有名ホテルの鉄板焼きに劣るとも勝らない質と調理のレベルと判断したのであります。

ワインの値付けも高く、単に質を問わない高級食材を使っただけの甘すぎる鉄板料理店。
シドニーの本店とは違う料理法だとのことでしたが、この料理を平然と客に出せるセンスを考えると本店の食後感も推して知るべしではないか。
日本人観光客がわざわざ訪問する必要がない、いや地元の富裕層も、こんな高いなんちゃって和食に行くくらいなら、飛行機乗ってでも日本へ行ってまともな和食を食べることをオススメします。

シンガポールのラッフルズに出店、shinji by kanesaka

相変わらず不動産バブルが続いて景気が良いシンガポール。そんなシンガポールマネーを狙ったのか、日本の有名店の進出が止まりません。
景気が良いと聞いて簡単に日本から進出してくる企業も多いのですが、大抵はマーケティング調査を怠り、高い家賃にも足引っ張られて消えるパターンがほとんどと在住の方からも聞きました。

あの京都の3つ星和食「吉兆」の店主名を冠した高額和食店「kunio tokuoka」も鳴り物入りで一昨年オープンしましたが、もう1年近く休業したままであることを友里は自分の目で確認しております。そんな厳しいシンガポールにありまして友里が勝ち組と感じたのがこの「鮨かねさか」のシンガポール支店であります。

この5月にグランドオープンするパレスホテルにも進出が決まっている「かねさか」。修業先の「久兵衛」を凌駕する勢い(出店ラッシュ)でありますが、膨張しすぎて銀行管理下から身売りとなった「久兵衛」の二の舞にならないことを祈るばかりであります。

さてこの店、立地が最高。シンガポールには大型、リゾートと沢山のホテルが出来ておりますが、老舗中の老舗、最高級ホテルである「ラッフルズ」の敷地内に出店していることに友里は驚いたのであります。バックにかなりの実力者がいると読みました。

ランチでの訪問でしたが、15席ほどのカウンターは満席。ほとんどが外資系証券会社勤務みたいなスノッブさを醸し出す地元客であることから、経営が順調であると判断したのであります。

75S$からあるランチですが、我々は最高値のお任せ(250S$)を選択。
毎日築地から引いているとの触れ込みでしたが、タネ質はかなり東京のグループ店とは異なるのではないか。
ヒラメは緩く、アオヤギは色薄く見た目通りイマイチ。アン肝は味付けが甘過ぎで、蛤はなんとトマト入りの包み焼きにタレ付きでこれまた友里の嗜好にあいません。勿論ツマミの〆となったメジマグロも緩いものでありました。

握りに移ってからも挽回するものはなかった。トロ系は脂でごまかせるためかまずまずと思いましたが、コハダはしょっぱすぎる割に生臭い。海老もイマイチで、赤貝、煮ハマ、玉子などいずれも印象に残る寿司に出会えなかったのであります。

かねさかグループの一員が「もうどうにも止まらない」と笑っていた「かねさかグループ」膨張戦略。現在のところ順調に見えますが、いずれは修業先の「久兵衛」のように壁にぶち当たる可能性大と友里は考えます。

帰国直後に最近たまに行くこのグループの1店を訪問し、シンガポール店とは違うまともなツマミと握りを確認したことを最後に報告させていただきます。