この支店も集客が芳しくない、ピンキオーリ 名古屋店

イタリアの本店はミシュラン3つ星ながら、何を嫌われたか2年連続で星をつけてもらえない銀座の高額イタリアン「エノテーカ・ピンキオーリ」。場所柄無理だと思っていたアクアシティお台場(シネコンが隣接しトイザらスが入る雑居ビル)の支店は、案の定撤退。その反省からか名古屋駅前のトヨタビル(ミッドランド スクエア)の高層階(42階)に出店したのがこの「エノテーカ・ピンキオーリ 名古屋」であります。飛ぶ鳥落とす勢いだったトヨタのビル、しかも「福臨門」や「吉兆」など高額店が入る高層階へ出店すればお台場の失敗は避けられると考えたのでしょうが、100年に一度の大不況は想定外だったようです。
ゴーストタウンを思わせる寂しいフロアを通って入店した我々は、予想通り客の少なさを確認したのです。その日は我々入れてわずか2組。慇懃無礼なだけで温かみを感じないソムリエールの接客態度も後押しして、それは暗く寂しい一晩となりました。
客入りが悪いのは不況の影響だけではないのではないか。まずワイン(特にグラス)が高過ぎです。
グラススプマンテがなんと2500円以上、シャンパーニュだと7500円に跳ね上がっております。ボトルでなくグラス価格ですよ。ドン・ルイナールという銘柄ですが、まともな経営感覚ではあり得ない値付けセンスであります。バカらしくて単品毎のリストを見るのをやめました。この店でワインを飲むなら、「デギュスタシオン」しかありません。3?4本の有名ワインをチョイスできるコースみたいなものでして、価格は一人2万円くらいから10万円以上と破格の価格ながら、CPだけを考えるとワイン好きにはお得感があります。ただし、ワインに数万円も払う太っ腹な客がそんなにいるどうか疑問。
3種のコースから最高値の2万円を選びましたが、アミューズやチーズ、ドルチェ入れて8皿の多皿コースはどれもポーション小さく調理、質といずれも凡庸。特に臭みを感じた鶏レバーのラビオリ、カレー風味の牛フィレ肉は最悪。赤ピーマンのリゾットだけがマシでありました。
21時過ぎにはホールスタッフが何人か帰ってしまって更に寂しさを増しました。金に糸目をつけないワイン好きにしか向いていないイタリアン。私の再訪はありえません。

この店も軽井沢の名に隠れた過大評価、ノーワンズ・レシピ

夏の軽井沢、ここ数年口コミサイトを信じて「エルミタージュ・タムラ」、「プリマヴェーラ」と過大評価店を訪問して肩すかしを食った友里。今年も懲りずに「食べログ」ランキング上位店を訪問してしまいました。リゾート再生で有名な「星野リゾート」が展開するホテル・ブレストンコートのメインダイニング。一応フレンチの範疇です。
宿泊客なのでしょうか、ベビーカーも持ち込み可。勿論乳児も入店オッケーです。宿泊する家族連れは入り口に近い隔離したスペースに押し込まれるようで、カップルや大人は窓際の落ち着いたホールに通されます。
料理は単品がなくコース2種のみと選択肢なし。リゾート地のフレンチに多くを求めるのは酷なのでしょうか。8400円と1万2600円の違いは前菜とデザートの皿数でした。
アミューズ4種はスプーンに乗った一口料理。ビーツのジュレやフォアグラなど、今更感のある演出でポーション小さすぎて味もわからず仕舞い。信濃雪鱒と信州サーモンのタルタルも鱒やサーモンの地域の特徴を感じず凡庸。ゴールデンキャビア(鱒の卵)もどうってことなし。フォアグラのポワレも普通で、鱒のコンフィのリゾットはなんと玄米を使用しておりました。まったく美味しくない。トウモロコシのフランはただ甘いだけで、ズッキーニに包まれたオナガダイのヴァプールは皿どころか肝心の料理も温くこりゃ駄目だ。トマトのシャーベットを挟んで〆のメインは「みゆきポーク」のロースト。「エルブジ」ばりのパフォーマンスかスポイトに入った唐辛子のオイルをかけさせます。皿は熱かったがポーク自体は冷めていて、しかし火が入りすぎてジューシーさがないと三重苦。連れが頼んだ薫香をかけた信州和牛のポワレも、不自然に薫香が強すぎ不自然に柔らかすぎで、これまた満足できるものではなかった。
ワインの値付けはそう高くないものの、ボルドー1級などこの地、この料理に合うとは思えない高級品が目立ち選択肢がありません。仕方なく2万円弱の2級ボルドーを頼んでの支払いが2名で5万円を突破してしまいました。
カトラリーを最初から全部並べる宴会スタイルのリゾートフレンチ。来年の軽井沢はまた他の店を探さなければならないようです。

野菜ブームに便乗しただけの期待はずれ店、八彩懐石 長峰

築地で長年野菜の「卸」を営んできた会社が出した料理店。週刊文春で高評価されており、男2名を連れての期待を持った訪問でした。
でも入り口付近の「本日は満席」という張り紙に嫌な予感。まともな繁盛店では見られない「満席自慢」だからであります。戸を開けると入り口にレジがあるではないですか。客単価1万円前後の店が、ファミレスかデパートの食堂のようで驚いたのです。しかもレジにいた女性、慇懃無礼で態度も良くなかった。
ダイニング調ではありますが、内装の普請は高く感じません。そして個室へ通されて安普請を確信したのです。掘り炬燵式とはいえ室内は狭すぎ。加えて隣部屋の会話がモロに聞こえてきます。見上げれば、壁が天井部分で抜けているではありませんか。消防法を遵守すると完全セパレートは費用がかかるからだと推測します。隣部屋の会話が丸聞こえの構造で「個室対応」はいかがなものか。「個室偽装」と言われても仕方ないと考えます。1万2600円のコースのスタートは評判のトマトジュース。甘すぎる感はありますが、その晩の料理では少ない当たりでありました。先付けは絞り生姜が利いていないイマイチなスッポン柳川寄せや紫芋、蒟蒻など。ヘルシーですが、食材の旨みがなく美味しくない。
お椀はホワイトアスパラガスのすり流しに椀タネはトウモロコシのかき揚げです。まともな和食では「口直し」程度に出てくる代物。向付はなんと鱧の昆布〆にブラウンマッシュルーム。昆布〆で質を隠したいようですが、それなら東京でわざわざ鱧を使うなと言いたい。煮物は丸茄子のオランダ煮。揚げてから煮る調理と言われましたが、あまりに味濃すぎです。口替わりが唯一の動物性タンパクの和牛ヒレ肉の野田焼。ポーションが小さすぎて、美味いのか不味いのかもかもわからず終いでありました。ジュンサイの酢の物を挟んで食事は握り寿司。ネギ、椎茸の他、ホタテ、白身、トロと本物鮨ではないですが、トマトジュースに続いてまだマシな料理でありました。素人調理に毛が生えたレベルの料理の連続、野菜ブームといえど長く客を釣り続けられるとは思えない食後感でありました。酒類を含んでの支払いは一人2万円弱とかなりの高額。私の再訪はあり得ません。