野菜ブームに便乗しただけの期待はずれ店、八彩懐石 長峰

築地で長年野菜の「卸」を営んできた会社が出した料理店。週刊文春で高評価されており、男2名を連れての期待を持った訪問でした。
でも入り口付近の「本日は満席」という張り紙に嫌な予感。まともな繁盛店では見られない「満席自慢」だからであります。戸を開けると入り口にレジがあるではないですか。客単価1万円前後の店が、ファミレスかデパートの食堂のようで驚いたのです。しかもレジにいた女性、慇懃無礼で態度も良くなかった。
ダイニング調ではありますが、内装の普請は高く感じません。そして個室へ通されて安普請を確信したのです。掘り炬燵式とはいえ室内は狭すぎ。加えて隣部屋の会話がモロに聞こえてきます。見上げれば、壁が天井部分で抜けているではありませんか。消防法を遵守すると完全セパレートは費用がかかるからだと推測します。隣部屋の会話が丸聞こえの構造で「個室対応」はいかがなものか。「個室偽装」と言われても仕方ないと考えます。1万2600円のコースのスタートは評判のトマトジュース。甘すぎる感はありますが、その晩の料理では少ない当たりでありました。先付けは絞り生姜が利いていないイマイチなスッポン柳川寄せや紫芋、蒟蒻など。ヘルシーですが、食材の旨みがなく美味しくない。
お椀はホワイトアスパラガスのすり流しに椀タネはトウモロコシのかき揚げです。まともな和食では「口直し」程度に出てくる代物。向付はなんと鱧の昆布〆にブラウンマッシュルーム。昆布〆で質を隠したいようですが、それなら東京でわざわざ鱧を使うなと言いたい。煮物は丸茄子のオランダ煮。揚げてから煮る調理と言われましたが、あまりに味濃すぎです。口替わりが唯一の動物性タンパクの和牛ヒレ肉の野田焼。ポーションが小さすぎて、美味いのか不味いのかもかもわからず終いでありました。ジュンサイの酢の物を挟んで食事は握り寿司。ネギ、椎茸の他、ホタテ、白身、トロと本物鮨ではないですが、トマトジュースに続いてまだマシな料理でありました。素人調理に毛が生えたレベルの料理の連続、野菜ブームといえど長く客を釣り続けられるとは思えない食後感でありました。酒類を含んでの支払いは一人2万円弱とかなりの高額。私の再訪はあり得ません。