やっぱり支店はクオリティが落ちていた、こなから

今年4月オープンの新丸ビルにお茶の水のオデン屋「こなから」が支店を出すと聞いて私は驚きました。オデン屋は一軒家か雑居ビルが定番というもの。新開発ビルという地代の高い場所で、客単価に制限のあるオデン料理が成り立つものなのか。
最初の訪問は7階のイタリアンでお腹が一杯ならず二次会的に立ち寄った7月。21時近くだというのにカウンターは満席でした。相席のテーブルで、頼みもしないのに出てくる売上稼ぎの「お通し」と牡蠣オデン(1050円)、大根、がんも、半ペン、こんにゃく(各315円)を二人で頼んでビールを飲んで5000円超。その支払額の高さに加えてオデン出汁のしょっぱさに驚きました。昨年行った本店はもう少し品ある味付けだったはず。シイタケ、鰹節、鯖節、塩だけで造った出汁という割に深みもなく表面的なインパクトある味に感じましたが、イタリアンの後だったので、再度検証の為秋口に再訪しました。
この店は予約不可なので、18時に駆けつけたのですが、すでにカウンターは満席でまた相席テーブルになりました。美味くない茶碗蒸し、豆腐などの「お通し」ははなんと1000円。今回はオデン以外も確認と、800円前後の出汁巻き、揚げ浸し、サラダ、山芋なども頼みましたが単なる普通の居酒屋料理。価格の割に小さいオデン、大根は味浸みこんでおらず、昆布や半ペンといった定番も美味しくない。だいたい豆腐がないのはいかがなものか。
本店も2時間の制限がありましたが、30分前にラストオーダーと言われて呆れました。出来合い料理のオデンでラストと言われると、あと30分が持ちません。体の良い「追い出し」です。
カウンター内には何人も職人がいましたが、本店にそんなに男衆がいただろうか。支店オープンで急募集したスタッフと読みました。これだけ回転させてしまって、オデン種の製造はどこでやっているのか。自家製と銘打った創作タネが多いですが、クオリティの劣化をみると、出汁と共に下請に製造させているのではないかと思ってしまいます。靴脱いで狭いところへ押し込まれて一人当たり8000円弱。これなら出汁の傾向はまったく違いますが、「お多幸」の方が安くてお腹一杯楽しめるでしょう。

ヨイショライター達はやはり当てにならなかった、ペルゴラ

レストランジャーナリストと自称している犬養裕美子氏の著書「東京ハッピー・レストラン」で見事四葉のクローバー(4段階評価の最高点)を獲得した「イル・リストランテ・ネッラ・ペルゴラ」。あの自称「美食の王様」実態は「過食のオコチャマ」の来栖けい氏もロンバルディア料理専門と絶賛していました。
ドアはチープ感がありますが、中庭が見えるホールは6卓の割に広く雰囲気はまずまず。料理はプリフィクスで7000円一本。前菜、パスタ、メインと6?7種用意されていますから選択肢もあります。ここまでは好印象。しかしメニューを読みこむと、どこが「ロンバルディア料理」なんだと疑問がわいてきます。確かにミラノ風カツレツやラヴィオリのスープはありましたが、リゾットやオッソブーコなどの煮込みはなし。牛のタリアータ、黒豚のグリルなどどこにでもある肉料理が目立ちます。前菜のタプナード、ここは南仏料理店か、メインの仔羊はなんとカラブリア風でした。カラブリア州はイタリアのつま先部分ですよ。スタッフもロンバルディアに拘っていないと言っていましたから、オコチャマもホントいい加減なものです。
全網羅的な料理からまず私が選んだ前菜はスペシャリテのズッキーニ花とジロール茸のヴァポーレ。
量少なく想定内の調理。パスタはサマートリュフとサマーポルチーニのトレネッテ(手打ち麺)。予想通り香りも薄く傑出さを感じません。マツタケもそうですが夏物に期待してはいけません。メインのカラブリアの仔羊もどこがカラブリア風なのかわかりませんでした。ワインリストは5000円から7万8000円迄と値幅が大きく、赤はなぜかトスカーナワインが4ページ、そしてレアワインと言われる「カーセバッセ」が1ページも占めていたのには驚きました。トスカーナワインを主体にしているだけでこの店がロンバルディア専門でないことは明白です。
1万円以下の安めのワインを頼んで一人1万8000円とこの内容ではCP悪すぎ。親しい店だけでなく訪問したほとんどの店を称賛し続ける犬養さんに来栖オコチャマ。そんなに毎回感心するということは逆に本格料理の経験が薄いという証左と言えるでしょう。ペルゴラは数ある過大評価店の一つです。

ご近所客限定のフレンチ、ガルゴティエ

出版社の編集担当と定期的に行っている食事会で訪れたのが中野のフレンチ「ガルゴティエ・ササキ」です。ネットでの評価も上々なビストロ、中野駅から徒歩で15分と立地の悪さも逆に期待を膨らませてくれました。何か特徴があるのだろうとの勝手な思い込みですが、汗かきながら辿りつき食べ終えた結果は期待外れに終わりました。
地図を見ながらもうっかり通り過ごしてしまったくらい存在感のない店構え。ガラス張りでブティックか喫茶店に見えてしまいます。内装はよく言えばシンプル、はっきり言うとチープ。キャパ10名前後、シェフとホールスタッフ2名の小さな店です。
アラカルトなし、コース2940円ですから多くを期待しませんが、肝心の料理がまったく特徴がありません。
冷前菜、温前菜は決まっていて、メインだけがチョイスできるシステム。しかし、そのメインは仔羊かホロホロ鳥しかありません。どちらも苦手な客はどうすればいいのか。冷前菜のタスマニアンサーモンのマリネは想定内。中野まで来てサーモンなんか食べたくないよ、という客がいないのだろうか。温前菜はフォアグラのコーンスープでしたが、この取り合わせはミスマッチと判断。ホロホロは得意でないので必然的に追い込まれた骨付き仔羊、脂分が多すぎで何の変哲もない調理でありました。廉価店だからかフィンガーボウルもなく、非常に食べにくい。一人調理ですから限界があるでしょうが、もうちょっと客の事を考えてみたらどうなのか。500円値上げて2500円になった高田馬場の「ラミティエ」と比べて、料理の種類、ボリューム、野菜の量、とすべてに劣るものでした。厨房、ホールとスタッフを何人も雇って2500円でやっていけるのですから、ガルゴティエも改善の余地は残っていると考えます。
唯一の救いはワインの値付け。ノンヴィンテージのシャンパーニュが6930円と安めで、白、赤ワインも3150円から用意されています。カオールやマディランといったCPの良いフランス南西地方のワインを用意するのは評価できます。店構えにあった廉価なワインの品ぞろえは良心的と言えるでしょう。
わざわざ電車や車で行くほどではなく、ご近所の方に限定で今回紹介させていただきました。