ウリの白菜鍋のシーズンをはずせば使い勝手は悪くない、華都飯店

竣工当時は高級マンションと言われたシャトー三田(現在は老朽化で建て直し中)にあった中国料理店。六本木1丁目へ移転して初めて訪問したのは今年2月末。
成り上がりをウリにして負け組女性を相手に稼ぎまくっている林真理子女史がブログで騒ぎまくっていた冬期限定の「酸菜火鍋」(人気で予約困難だとか)に釣られてしまったのです。
昨秋初訪問した台北で食べたこの酸っぱい白菜鍋の味が忘れられなかったのが一番の理由でありましたが・・・

場所はアークヒルズ仙石山森タワー。むやみやたらに再開発ビルを建てまくるだけではなく、アークヒルズや六本木ヒルズを例に出すまでもなく、純粋無垢なテナント(料理店)を誘い込んで、次々に集客不振に貶めているあの森ビルの1つであります。

新しいので未だ賑わっているかとタクシーで乗り付けたのですが、週末の金曜なのにオフィス棟はひと気がなくそこから店までもかなりの距離。まさに陸の孤島の感がありました。
しかも帰りにタクシーが拾えなかった。アメリカ大使館に臨するメイン道路まで出ていかなければならなかったのです。

場所が悪くてしかもシャトー三田時代と違って大箱なのですが、この日はなぜか満席の不思議。しかも客層はオバンの女子会グループが主体でありました。
それではこの時期限定(3月中旬まで)の酸菜火鍋コース(8000円前後)のスタートです。

前菜はわかさぎ、蒸し鶏、 胡瓜などまったくの普通味。この後コースは直ぐに鍋となるのですが大食いの我々は単品でいくつか追加したのであります。

雲白肉はまったくの普通味でしたが、ピータンはとろとろではなく悪くはなかった。
しかし小籠包は皮が厚くイマイチ。 自家製ではないと推測せざるを得なかった。
そして本日のメイン酸菜火鍋となりました。

具は白菜(発酵)、豚肉、高野豆腐、牡蠣、渡り蟹などですが、予想外に量が少ないのではないか。しかも白菜の酸味も薄いというか弱すぎる。十分に発酵していないのは、客数に発酵が追いついていないのかもしれません。

牡蠣は大ぶりで良かったですが、渡り蟹は投入した瞬間に鍋全体が生臭くなってしまってペケ。よほどの蟹好きで無い限り、ここでは投入を避けた方が良いでしょう。
そしてビールや紹興酒を飲んでの支払いが6名で7万円近くと、台北の白菜鍋屋の5倍の支払いに驚いたのであります。

ここは白菜鍋の時期以外も検証しなければと再訪したのはその2ヶ月後。
白菜鍋の神通力がなくなっていたのか、日曜でも飛び込みで入店出来るほど店内は空いておりました。

水餃子、黒酢の酢豚、季節野菜の塩炒め、担々麺(ハーフ)、上湯鶏スープかけご飯(ハーフ)などディープさはないけどまずまずのお味の料理を食べての支払いが2名で1万円台半ば。
入店のし易さ、ハーフポーション対応などを考えると、ご近所限定の条件ではオススメできるのではないか。ただし日曜だけなのか閉店が20時半頃と、遅めの食事の人には向かない中国料理店であります。

前期高齢者専門のフレンス風家庭料理店ではないか、パッション

フランス南西部の郷土料理であるカスレをウリにしているフレンチ。
白インゲンに鴨肉コンフィやソーセージなどを投入する煮込み料理ですから、友里は家庭料理(せいぜいビストロ料理)だと思っていたのですが、この店、雰囲気(内装やメートルの出で立ち)はグランメゾンみたいなんですね。

アベノミクスの影響なのか今春1年ぶりの再訪で店内の盛況さ(昨年は他に1組しか居なかった)と共に驚いたのがその客層でありました。なんとほとんどの客が

老人、もとい、前期高齢者

だったのであります。見た目は70をとうに過ぎた男性が主体だったでしょうか。
個室は6名の男性グループ、ホールの5組も高齢者が主体でして、同伴カップルも年の差は優に50は離れておりました。

フレンチといいますと、一時期流行ったソースなしの軽い創作系もありますが、主体はソースたっぷりで重めの味付けを思い浮かべますから、老齢の方にはちょっと厳しいのではないか。しかしその心配は料理を一口食べて払拭されたのであります。(昨年の訪問では味の記憶が消滅しておりました)

この店の料理、見た目と違って優しいんですね。良く言えば上品、はっきり言えばインパクトなし。働き盛りの中年以下(特に壮年)の客が少ない、いや老人客が多い理由がわかったのであります。「老齢者向けの料理」を目指していると思われる調理だからです。

まずはロワール産の白アスパラ。1本1100円はちと高いと思いますが、ヴィネグレットソースも淡い、もとい、優しい味で悪くはなかった。
エスカルゴと豚足、チョリソーを使ったピペラード(2700円)もバスク地方の家庭料理で内装などにマッチしていないと思うのですが、これまたあっさりで老人に優しいお味。

しかし次の2皿には疑問が残ったのであります。
カナダ産のフレッシュだといわれたオマール(4400円)、冷製なのですが安い冷凍物のような質としか思えず不味い。連れが食べ残したものを味見しましたが、かなりレベルの低い代物でありました。

客単価アップを狙った和牛の暖炉焼き(1万3500円)は、脂(サシ)が多すぎて気持ちが悪く、肝心の肉の味がしない。
ホール内の暖炉での焼き上げをウリにしているのですから、この調理ならフランス産の赤身牛を用意するべきではないか。主要な客層である老人の体にも良いはずであります。

そして本日のメイン、カスレ(4300円)の登場です。
しかしこの家庭料理、食材(鴨コンフィやソーセージ)の原価はかなり安く上がるのではないか。質を気にしないからか肉の味が薄くこの料理も優しい(インパクトのない)味わいでありました。特に鴨コンフィ、味を濃縮する調理でよくここまで薄味に出来ると感心したのであります。

ワインの値付けは高く(ソムリエの抜栓技術も高いとは言えなかった)、見た目と違って薄味の料理。
皿出しも遅いだけに、資産をため込んでいる老齢のフレンチ初心者向けの高額フレンチ(料理自体は家庭料理)であると考えます。

 

 

 

 

添加物を感じなくなったCP良い鮪&和牛の店、尾崎幸隆

尾崎牛の尾崎畜産(2011年に民事再生法申請)と鮪の仲卸・やま幸が関与しているといわれる麻布十番の和食店。
拙著「絶品レストラン」(鉄人社)では、添加物(化学調味料)を感じるけどコース価格(1万円)を考えたら納得できるとオススメ店として取り上げていたのですが、いつの間にか移転のためと称して閉店。そのまま存在を忘れておりまして、昨秋麻十を歩いていて新規オープンを偶然発見。気になっていたのですが、半年かかってやっと今春訪問することが出来ました。

料理は原則お任せコース一本。まずはシンプルな鶏スープでスタートです。
一口飲んで、「あれれ、添加物を感じないぞ」とちょっとビックリ。多少の化学調味料摂取を覚悟していたのですが友里の舌では感じ取ることが出来なかった。

続くはアサリの茶碗蒸し。甘めの出汁でありましたが、アサリもタップリで悪くはない。
そして本マグロの突先(頭の付け根部分)の小丼と尾崎牛の生内モモ肉を食して、当時と違ってMSGの力に頼らない調理に変身していると確信したのであります。

お椀はこの時期定番の若竹(若布と竹の子)。吸い地は濃い目なのは東京和食だから仕方がないか。
造りの鯛は煎り酒を添えられての提供。お江戸風の料理を意識しているとわかった次第であります。

魚は鮪と鯛だけではありません。マナガツオの焼き物は鯛の出汁と椎茸や葉山葵を乗せてありお酒が進みます。味濃いけど不自然な調味料を感じないので後味が悪くない。
居酒屋的な料理がもう1品でてきて(何がでたか失念)コースは終盤、ウリのマグロ握りの登場です。
部位は赤身と中トロ。他の客には大トロのような部位が出ていましたから、もしかしたら脂タップリが苦手な友里と正体がバレていたかも。どちらもまずまず美味しいマグロ握りでありました。

揚げ物はホタテ。居酒屋料理といってしまえばそれまでですが、本マグロと和牛を取り入れてのこのコース価格でありますから、悪く感じるはずがない。そして本日のメイン、尾崎牛の炭火焼きが出て、ご飯もので〆となったのであります。

炭火焼きは牛はロースでありましたが、不自然な脂を感じないもの。添えられた白山葵(ホースラディッシュか?)と塩、ポテサラもイケておりました。
ご飯ものは白飯の他に、お約束の温泉玉子のトリュフ飯。以前ならここでも不自然なトリュフオイルの添加が気になったのですが、今回はそれほど不自然なものを感じず、気分良く食事を終えることが出来たのです。

ビールに8000円のシャンパン、そして牛肉に合わせてグラスの赤ワインを頼んだので支払いは一人当たり1万円台後半となりましたが、初訪問の同伴者も再訪したいと言っていたほど良かった食後感。
メイン食材がマグロと牛ですから季節をそれほど感じるコース構成ではないですが、マグロと和牛を楽しめるCP良い高額居酒屋と考えれば、年に何回かのリピートはありの店だと友里は考えます。